2017年6月25日日曜日

結腸・直腸生検のやっつけかた【1. はじめに】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 誰を対象にしているのか  
・この文章は病理医を始めて 1 - 2 年目の先生,病理診断に興味のある消化器内科の先生
・必要な背景知識は医学部の学生の下から数えて何番目程度の人に設定
・臨床検査の学生さんや興味のある看護師さんでも読める,と思いたいが書いていて無理な気がしてきた

○ 結腸直腸生検の難しさ  
・結腸直腸生検も難しいと言われることもあるが,それを言い出すと全部難しい
・どの臓器でもそうだけど,ちゃんと手順を追って標本を見ていけばそんなに難しくない

○ 結腸直腸生検では病変を大きく 5 種類に分ける  
・結腸直腸生検では Group 分類を用いるが,施設によっては使用しないところもある
・基本的には胃生検のそれと同じような扱いなのだが,どこで悩むのかを含めて若干の違いがある
・結腸直腸の Group 分類
 Group 1:癌じゃない!明らかに良性!(含むポリープ)  
 Group 2:よくわからん.SSA/P は便宜上ここに入れる
 Group 3:腺腫(低異型度から高度異型度まで含む)
 Group 4:少なくとも腺腫以上の病変だけど癌というには微妙
 Group 5:癌
・結腸・直腸生検の悩みどころは胃生検と少しずれている

○ 若い先生の悩み  
・A 先生は癌といったのに,B 先生は腺腫と言われる
・Adenoma - carcinoma sequence (遺伝子異常が積み重なって腺腫から腺癌へ進展という理論)があることになっている
・腺腫と癌の境界は本来不明瞭でいいはずなんだけど,指導医も臨床医もなぜか癌か腺腫かを区別したがる
・そうすると「私はこう思う」的な哲学の世界に入ってしまいどうでも良くなる
・ここに書いてあることはどどんぱせんせが日常業務で実践していることで多少意見の相違があるかも
・もし違うことを指摘された場合は,あまり議論をしても意味が無いことが多く,素直に上司に従った方が無難  

○ わかりやすくするための配慮  
・必ずしも適切ではない表現を使用している部分がある
・この文章を読んだあとにきちんとした教科書を読んで,知識を固めていくこと  

○ 内視鏡所見との対比について  
・本来は内視鏡所見との対比をすべきだが,この文章ではあえてしていない
・どどんぱせんせがそこまでの知識を持ち合わせていないのと,検査センターでの診断についてはそこまで細かい情報が得られないことが多いから
・もっとも細かく丁寧な診断を行うためには重要であることにはいうまでもない

結腸・直腸生検のやっつけかた【8. 腫瘍性病変と紛らわしい病変のみかた・レポートの記載の仕方】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 反応性変化 vs 低異型度管状腺腫
・胃生検では再生異型と癌の鑑別は永遠のテーマであったが、結腸・直腸生検ではあまり問題にならない
・むしろこれを腫瘍とすべきか悩むようなどーでもよいがどーでもよくない病変に遭遇することが多い
・正直程度の強い反応性変化と異型のとても弱い管状腺腫の区別は難しいが,弱拡大で見たときに領域性に腺管が増えていれば管状腺腫というふうに便宜上持っていっている

○ リンパ腫(特に diffuse large B cell lymphoma)vs 低分化な腺癌
・迷ったら免疫染色をすればよろしい.そのためには迷えるだけの経験が必要
・頻度からすると腺癌のほうがよっぽど多いので,たまにみるリンパ腫に気づけることが重要
・リンパ腫の増殖パターンは独特で,個在性,核の多形性が強い,あと necrotic debris が多い印象

○ 女性の場合は内膜症には特段の注意が必要
・結腸直腸の内膜症を腺癌と間違えるなというのは有名だけど,結構みんなスルーしてしまう
・よーーーーーーーくみると,結腸の腺管と内膜腺は異なる見え方をするが,三流病理医には無理
・あとヒントになるのは間質の変化(単調な紡錘形の間質細胞,分泌期後期であれば間質が decidual change を起こす)でそこに気づけば,ER, PgR, CD10 出して決着が出る
・腺癌っぽい増殖の仕方(形が乱れ場所が不規則なところにある)けど,異型が弱い場合には内膜症を疑う
   
○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと~なにはともあれ deep cut 5 枚
・難しい要素として病変が小さい場合は deep cut をするだけで診断がつくことがおおい(深切りにまさる特染なし!)
・deep cut をつける際に,p53, Ki67 を追加で出すとよい(deep cut 前・後かは検体の性状による → 要はどっちでもよい).
・p53, Ki67 の評価は難しいが,いずれも表層まで陽性になっていれば,より癌として強いニュアンスを持つ.あとは自分が非腫瘍部と思っているところと,腫瘍部とおもっているところに解離が見られること

○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと~Group 2 の付け方
・Group 2 は基本的に sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P) に対して用いる(過形成性ポリープにはつけない)
・変性が強くてそもそも腫瘍性かどうか判定しにくい場合にも Group 2 をつける

○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと~Group 4 の付け方
・Group 4 を付ける場合には,基本的に「腺腫」vs 「腺癌」の鑑別が難しい場合が多い
・どこまでを腺腫とするか,どこからを癌とするかは指導医と要相談(病理診断というのはある種の記号で,極論どちらでも良く,臨床医と連携が取れていれば実際はどういう診断をしていても)
・生検であれば鑑別が難しい,という記載は許容される.
・手術検体,ESD 検体については多少味をつけて腺癌としても良いと個人的には思っている
 
○ レポートの記載の仕方
・Colitis (Proctitis) vs inflamed colonic mucosa
・非腫瘍性病変の場合,炎症の見られる結腸粘膜組織に対して colitis と書くか,inflamed colonic mucosa と書くかは流派による
・結腸直腸粘膜組織は通常でも炎症細胞浸潤が見られており,いわゆる腸炎と正常腸粘膜の差は実は明確ではない
・どちらを使ってもよいが,つく指導医によって突っ込まれる可能性があり,こればかりは仕方ないとあきらめる

結腸・直腸生検のやっつけかた【7. 明らかな悪性・腫瘍性病変のみかた】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 管状腺腫(低異型度・高異型度) とは
・典型的には核腫大(紡錘状,あるいは棍棒状と称されることが多い)し,極性の乱れを有する腺管が密に増殖すること(背景の腺管の分布よりも密度が高い)
・異型が強くなると腺管構造の不整も出現してくる
・昔は細胞異型・構造異型を合わせて判定し,異型の程度を 3 段階:軽度異型 (mild atypia),中等度異型 (moderate atypia),高度異型に分類していたが,現在では低異型度 (low grade) = 軽度・中等度異型,高異型度 (high grade) = 高度異型 の 2 分類だが,3 分類が好きな先生は未だに多い

○ 管状腺腫(低異型度・高異型度) の異型度の判断は人によって違いが大きすぎる
・軽度,中等度,高度異型の判断は人によって実に様々
・本当は取扱い規約に明示してほしいところだが,そういう肝心なところが抜けている...どどんぱ先生はこう考えている,という参考例を提示する(もちろん人によって程度の差はとても異なっている)
・軽度異型 細胞異型:核が軽度腫大,均一 構造異型:なし
・中等度異型 細胞異型:核が腫大,やや不均一,極性の乱れあり 構造異型:腺管の大小不同が見られ始める
・高度異型 細胞異型:核の腫大が強い(腫大が強くなると丸く見える),極性の乱れが強く核が表層まで及ぶ 構造異型:腺管構造の不整が強いが癌とするほどの異型はない

○ 管状腺腫 (tubualr adenoma) → 管状絨毛腺腫 (tubulovillous adenoma) → 絨毛腺腫 (villous adenoma)
・絨毛状=乳頭状で,なぜか腺腫の文脈では絨毛状という用語を用いる(これが癌になると突然乳頭状という言い方になる)
・管状腺腫+絨毛腺腫の両方の成分が見られる場合は管状絨毛腺腫とする
・絨毛構造を取っている事自体が悪性度が強いという考えの人は tubulovillous/villous adenoma というだけで high grade にしている

○ 腺癌 adenocarcinoma
・細胞異型,構造異型から診断
 細胞異型は核が腫大し,大小不同,クロマチン濃染,極性の乱れが強い(± 核小体明瞭,核分裂像)があり,
 腺管構造の不整については,胃生検においける乳頭状構造は癌が示唆されやすく,また少なくとも切れ方による変化ではない「癒合腺管」については腺癌(中分化)としてよい
・腺腫との区別は時として難しい(次項を参照)
・細かい組織型については本をよむこと.大体は読めば分かる

○ 低分化腺癌は意外と少ない
・結腸で signet ring cell carcinoma はないわけではないが少ない.
・por1, por2 もほとんどが腺癌が崩れてできたものの結果
・もし signet ring cell carcinoma がメインで出てきた場合は,他の腫瘍の転移の可能性も一応念頭に置く

○ 腺腫と腺癌の違いについて  
・腺腫 adenoma とされている病変は実は少ない.結腸直腸癌では adenoma-carcinoma sequence があることになっているので基本的に腺腫と癌が混在しても良い
・ココらへんが解釈が難しくて,特に高異型度管状腺腫と腺癌 (tub1) でどっちにふるかで悩むことが多い(というかそんなことで悩むくらいなら今晩のご飯を何にするかで悩むほうがよっぽど建設的である)
・悩むような場合は,はっきり言ってどっちもで良いが,保険診療上は腺癌にすると好まれやすい(これもどーでもいい話)
・どどんぱせんせい的には「核が(紡錘形ではなく)丸く腫大し,大小不同が強い」「腺管構造の不整が強い(癒合腺管が出現あるいは出現しそう)」なときに腺癌と解釈している
・ただ,腺腫 vs 腺癌は施設間の差もあるため,上記を念頭において上司に従うのが無難

○ Carcinoma in adenoma vs carcinoma with adenoma component
・腺腫<腺癌の場合 carcinoma with adenoma component
・腺腫>腺癌の場合 carcinoma in adenoma
・とする.ただそれだけの話.

○ 潰瘍性大腸炎関連の異形成の評価はほんとつらい
→ 潰瘍性大腸炎のところで続けて話してしまった.あーもう潰瘍性大腸炎の標本見たくない!

○ GIST vs 平滑筋腫 (vs 神経鞘腫)
・消化管の筋層内にできる紡錘形細胞腫瘍の筆頭格が GIST
・食道は平滑筋腫,胃は GIST が圧倒的に多い.結腸直腸は GIST が多いけど,平滑筋腫や神経鞘腫も起こりうる
・EUS-FNA みたいな小さい組織で採取されていることも多い.HE 染色で分かるという人もいるけどやっぱり免疫染色は必須(提出するもの→ AE1/AE3, CD34, S100, αSMA, Desmin, c-kit, Ki67)
・GIST をより疑う免疫染色の結果:c-kit 陽性,CD34 はたまに陽性,ほかは基本陰性
・平滑筋腫の免疫染色の結果:αSMA, Desmin 陽性(2 種類以上の筋系マーカーが陽性となることが大切!)
・神経鞘腫の免疫染色の結果:S100 陽性
・c-kit 陰性の場合は DOG1 (DOG: discovered on GIST という再帰的な名称) や PDGFRα があれば試してみる

○ リンパ腫にも注意せよ
・結腸直腸のリンパ腫自体は結構頻度は少ない
・やっぱり diffuse large B cell lymphoma, MALT lymphoma (MALT lymphoma は意外と少ない...)が有名だが, Burkitt lymphoma も結構多い(あとこまかいことをいうと,CLL/SLL の結腸浸潤とか,腸管リンパ節で言うと follicular lymphoma とか)
・ちなみに小腸腫瘍自体が少ないが,その中でも lymphoma は比較的多い印象
・診断は通常のリンパ腫に準じるけど,もし迅速診断とかでリンパ腫と分かれば flowcytometry はいかがですかー?と声を掛けてあげると親切

○ 他の癌の結腸への転移は頻度が少ないが,直接浸潤については注意が必要
・普通の腺癌じゃないなと思ったら必ず既往を確認
・膀胱癌や男性ならば前立腺癌の直接浸潤というのもありうる(広範に進展しており,さ〜原発はどれでしょクイズみたいなとき)

結腸・直腸生検のやっつけかた【6. よくあるけど,まぁどうでもよい細かい病変】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 粘膜脱症候群 mucosal prolapse syndrome: MPS はみなかったことにしよう
・臨床的に直腸(〜S状結腸)あたりで腫瘤として認識される病変
・生検されると,fibromusculosis が目立つ
・生検だけだと,特異的な所見とはいえなくて臨床的に MPS と言われれば,そーですねと返す程度で十分
・癌と診断するなよ,というもの

○ 虚血性腸炎 ischemic colitis
・虚血の原因は色々あるが,生検だけで原因を特定するのは難しい
・典型的には腺管の所見と間質の所見に分けて見ると良いが,腺管の所見(立ち枯れ像)がある程度出てくれば,ischemic colitis と診断しやすいが,なければ臨床所見の確診度に応じて,compatible with あるいは所見診断に留める
 腺管の丈が短くなって,核が丸く腫大する(再生性変化)
  →さらに虚血の程度が進むと腺管の枠だけが残って腺管がなくなる(立ち枯れ像)
 間質には血漿滲出物(ピンク色の滲出物)及び出血,好中球等の炎症
・手術検体だと粘膜下層の浮腫状変化も見られる

○ 静脈硬化症は CT を見て考える
・静脈が硬くなって虚血(うっ血と言ったほうが適切か?)になる病変.CT でみるときれいに腸間膜に沿ってつぶつぶの石灰沈着が見られる
・間質内に高度の線維化が見られるのが特徴で,知らなければなんか変だなーと思うくらい(一応 DFS / Congo red でアミロイドを除外せよ)
・臨床医も知らないことがあるので,疑ったら腹部 Xray か CT を見る癖をつけると幸せなことがあるかも

○ Pseudolipomatosis
・粘膜固有層内に脂肪細胞が散見される状態に対する名前
・腫瘍性というよりも artefact では?という意見もある(そこが pseudo と言われる所以)
・脂肪腫との鑑別を.脂肪腫であれば腫瘤形成性の病変となるが,pseudolipomatosis は既存の構造物に沁み入るように入り込んでくる

○ Melanosis coli
・内視鏡的に結腸が黒くなる病態で,便秘やセンナ内服と関連すると言われている,病的意義はない
・沈着する組織はメラニン様(に見えなくもない)であるが,メラニンではなく,リポフスチンに近いと言われている
・内視鏡的に認識しうるほどの高度のものから,軽微なものまであるが,臨床的に指摘されなくても,ある程度認識できたら所見として記載したほうが良い
・病的意義はないけど,手術検体で見るとびっくりする

○ Microscopic colitits – Lymphocytic colitis, Collagenous colitis
・いずれも内視鏡上は所見に乏しい(nearly normal)とされる,結腸炎だが,人によっては「いや,所見はある」と言われている
・こんなところで言うのも何だけど,消化管をやっている人はアクがとても強い.だからこそ日本の消化管病理のレベルは非常に高いとも言えるし,世界基準として採用されにくいとも言える

・Lymphocytic colitis
 どどんぱ先生は自分で lymphocytic colitis をつけたことがない
 一応基準はあるみたい(上皮間リンパ球の著明な増加;上皮100個中リンパ球が20個以上)
 ただ実際はこういう症例ではリンパ腫を疑って免疫染色をしてリンパ腫ではないと結論づけて終わりな気がする

・Collagenous colitis
 Lymphocytic colitis はほとんど見ない一方で,collagenous colitis は比較的よく見る
 手術検体の背景の結腸粘膜所見に見られることもあるが,やっぱり肉眼的にはわからない
 表層の上皮下の膠原線維のバンド状沈着が特徴で,厚さが 10 μm 以上とかいうこともある
 それよりも膠原線維の沈着及び上皮下に対して,しみいるような細い線維の伸び出しをしていることが多い

結腸・直腸生検のやっつけかた【5. よく見るポリープ】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 過形成性ポリープ vs 鋸歯状病変(Traditional serrated adenoma, sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P) )
・鋸歯状病変の扱いはなかなか難しくて,背景の遺伝子異常や癌化のリスクなどを考慮すると,適当に扱うのは難しい
・歴史的な背景などは一切無視して,とりあえず診断するにはどうしたら良いかについて述べる

・SSA/P (sessile serrated adenoma/polyp)
 粘膜固有層内を全層に渡って拡張した腺管が増殖していることが重要
 腺管が蛇行していること(例:深部側で腺管が横に広がるような走行をするのは異常だといえる)
 腺管が鋸歯状構造を呈していること(SSA/P は腫瘍性と考えられているので,SSA/P を診断しようとする際には「過形成」というキーワードは用いないほうがよい)
 核異型や極性の乱れが軽いこと(強い場合は腺腫に分類すべき)
 右半結腸に多いが,多分どこに出来ても良い(異論あり)
 まとめ:異型の弱い,拡張した鋸歯状腺管が粘膜内を蛇行して増殖するとき,SSA/P と診断(生検の場合は慣習的に Group 2 に分類している)

・過形成性ポリープ
 粘膜固有層の表層側を中心に鋸歯状に過形成性変化を示す腺管が増生している
 異型はない,蛇行はしない,拡張もしない
 まとめ:SSA/P の特徴を有さない鋸歯状腺管が表層寄りを中心に増殖するとき,過形成性ポリープと診断

・TSA (traditional serrated adenoma)
 細胞質が好酸性で均一の鋸歯状腺管が増殖する
 SSA/P や過形成性ポリープのようにもこもこせず,どちらかというと,きれいな鋸歯状構造
 核は軽度以上腫大し,極性の乱れがあっても良い
 まとめ:管状腺腫相当の異型腺管で,細胞質が好酸性で鋸歯状構造を呈するとき TSA と診断

○ Peutz-Jeghers polyp
・間質の平滑筋が過誤腫性に増生し,腺管が樹枝状に増生する,特徴的なポリープ
・組織像自体はわかりやすいので一度見たら(忘れない限り)迷うことは少ない印象
・生検で小さい検体しか採取されないこともあるので平滑筋の走行には注意
・(腺管が樹枝状構造を作ること自体が異常で,さらに介在する間質に平滑筋があることも異常)

○ Juvenile polyp
・子供に多いが大人に起きることもある.Polyposis の一部だが,孤立性のこともある(Juvenile "type" polyp)
・粘膜固有層の過誤腫性病変と言われているが,簡単に言うと拡張した過形成性腺管の増生+肉芽組織
・なんとなく胃の hyperplastic polyp, foveolar type に類似している(と言ってしまうと誰かに怒られそう)
・有茎性または亜有茎性ポリープを作るのが特徴で,ほかに目立った特徴があるようであまりない.油断していると hyperplastic colonic mucosa with edematous change and... などと所見記載にしてしまいがち
 
○ Inflammatory (myoglandular) polyp
・正直この診断をする頻度はかなり少ない,というか結構除外的につけることが多い
・一応炎症細胞浸潤+拡張した腺管+平滑筋の増生
・Peutz-Jegher's polyp との鑑別になるが,Peutz-Jegher's polyp は樹枝状で,Inflammatory myoglanduar polyp は全体的として結節を作る

・キサントーマ xanthoma
 内視鏡では黄色い SMT に見える(黄色い SMT に見える病変は他にはカルチノイド,脂肪腫あたり)
 キサントーマとして生検され,間質内に泡沫状組織球が見られれば,xanthoma, compatible with で返せばよい
 泡沫状細胞浸潤があるだけであれば,所見診断 colonic mucosa with infiltration of foamy macrophages が無難
 よく lymphangioma と肉眼的に間違えやすい(別に間違えてもいいけど)

結腸・直腸生検のやっつけかた【4. 潰瘍性大腸炎・クローン・アメーバ・サイトメガロウイルス】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated.  

○ 潰瘍性大腸炎の評価のポイント
・潰瘍性大腸炎の生検診断はとてつもなく面倒くさい.どどんぱ先生は潰瘍性大腸炎の生検が回ってくるたびにうんざり
・しかもラボの標本だと時間がかかってコスパが悪いのであんまり好きではない...愚痴はそれくらいにしておいて..
・潰瘍性大腸炎であることの担保は何はともあれ慢性炎症 chronicity があること
 腺管の配列の異常や杯細胞の減少は慢性的な炎症による腺管の変化・改築を示唆している
 あれば,腺底部の慢性炎症細胞浸潤は basal plasmacytosis と言って潰瘍性大腸炎に比較的特徴的である
 あれば,左半の結腸における Paneth 細胞化生は慢性炎症を示唆する(右半結腸では正常でも見られる)

・潰瘍性大腸炎に特異的な所見はないとされるが,上記を念頭に慢性炎症及びその痕跡を記述して,かつ急性期の変化の有無について言及,さらに dysplasia を含めた悪性所見の有無を記載し終わる
・活動期の所見
 粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤:小さい生検で語るのは難しいが「びまん性」であることがポイント.小さい生検の中においてすら場所により粗密がみられるようであればびまん性とは判定し難い
 陰窩膿瘍:腺管の中に好中球浸潤があれば言う.腺上皮内への浸潤であれば陰窩炎となる
 高度な杯細胞減少:何を持って高度とするのか不明だが,正常の腺管に比して明らかに減少している場合はありと判定
・寛解期の所見:別に寛解期のみの所見ではなく,急性期に見られても良い.寛解期はこれくらいしか見られませんよ,という意味
 腺の配列異常(蛇行・分岐),萎縮:強拡大では評価しにくく,弱拡大で評価を.そもそも正常では腺管は底部が密度が高く表層に行くにしたがって腺管密度が低くなる.そして腺管構造は基本的に丸あるいは楕円形である.その正常構造から外れているのかどうかを判定する

・Matts grade を記載(http://immuno2.med.kobe-u.ac.jp/20060605-3485/ より)
 Grade 1: 正常
 Grade 2: 円形細胞,多核白血球の粘膜・粘膜固有への浸潤
 Grade 3: より多くの細胞浸潤,一部粘膜下層
 Grade 4: 陰窩膿瘍,粘膜全層の著明な細胞浸潤
 Grade 5: びらん・潰瘍・粘膜壊死,著明な細胞浸潤
 ここでいう円形細胞は恐らくリンパ球,形質細胞を指し,細胞浸潤というのは広く白血球を指すと思われる.ちょっとでも炎症があれば Grade 2 になるし,陰窩膿瘍がなくても炎症細胞浸潤が高度のときは Grade 3-4 にせざるを得ないなど使い勝手が悪い

・潰瘍性大腸炎を起源とした異形成,癌の判定は難しい
 腫瘍性変化を示す場合,通常の管状腺腫とは振る舞いが違うことが多い
 比較的フォローアップされる頻度が多いので臨床的にもなるべく早期で見つけたほうがよい(何度も生検されているにも関わらずスルーされ続けて進行癌になったというケースも少なからずある....)
 わかりにくい理由はすでに腺管の改築が起こっており,腺管の密な増殖,腺管構造の不整といった構造異型が乏しいケースが多く,サーっと見てしまうと腫瘍性変化に気づきにくい
 よってぱっとみ悪くなさそうでも,核異型(核クロマチンの増加,極性の乱れ)に着目し,他の部位の検体と比べて明らかにおかしいと判定すれば積極的に Ki67, p53 染色を行う.それで有意な陽性所見があれば最低でも dysplasia として,次回の生検に注意してもらう(内視鏡的に dysplasia を判定するのは多分無理)
 → 厚生省分類を記載.古いし写真もわかりにくいし,誰か新しい分類を作るべきだと思うが,仕方ない.UC-I(明らかな炎症性変化), IIa(鑑別難しい:炎症より), IIb(鑑別難しい:腫瘍より), III (明らかに腫瘍:腺腫以上),IV(癌)で分類 
 → 潰瘍性大腸炎の際は規約上 Group 分類は基本用いない(が!検査センターでは要求されることが多いので注意!)

○ クローン病の評価のポイント
・クローン病は潰瘍性大腸炎と違って肉芽腫があるかないかがポイントなので比較的簡単
・潰瘍性大腸炎との鑑別が難しい(中間型?)みたいな臨床診断のときはとても残念だが,潰瘍性大腸炎に準じて記載をして,肉芽腫の有無について判定する
・クローン病でみられる肉芽腫は結構小型で不明瞭で,サーッとみてしまうと見逃してしまうのでその目で見る
・こういうと元も子もないけど,肉芽腫の存在自体がクローン病の確定診断の根拠ではない(なくてもよい)し,潰瘍性大腸炎に肉芽腫があってもよい.あくまで内視鏡診断が元になる
・クローン病由来の癌はないわけではないが,かなりまれなので,異型があって迷う場合以外は基本ないものとして進める

○ よくある感染症は見つける努力を(Spirochete, Amoeba, CMV)それ以外は培養に丸投げを
・腸管の感染症はよくあるが,実際に同定するのは難しい
・スピロヘータ spirochete とアメーバ amoeba は見つける努力を.特にアメーバは重要
・CMV は疑ったら必ず免疫染色をすること

○ スピロヘータは見逃しやすいがダメージも少ない
・スピロヘータ感染症は結構頻度としては多い(腺腫の背景にくっついてきたりする)
・臨床的にはあってもなくても特に問題ない(原因不明の下痢でスピロヘータ感染症があればメトロニダゾール内服を考慮,する程度)
・表層の腺上皮につく,紫色のケバケバ.線毛と紛らわしいが,スピロヘータが全体的に付着することは少なくて,どこか正常の部分があることが多いからそこと比較する
・特殊染色はワルチンスターリー染色,ギムザ染色あたりが有名だけど,ワルチンスターリー染色を出すと技師さんにとても嫌がられる.免疫染色だと Treponema(梅毒)の抗体が交叉反応をして陽性になる

Point: スピロヘータ疑いの症例に対してワルチンスターリー染色をオーダーしてみると,臨床検査技師から自分がどの程度信頼されているか,好かれているかが分かる

○ アメーバは常に頭に入れておく
・アメーバにかかるは特殊な事情の大人だけではない.一般人も海外旅行に行くなどで普通にかかる
・びらん状の炎症の強い粘膜に表層よりに丸くて小型の核を有する細胞がぱらぱらあって,細胞内には赤血球を含む
・PAS 染色で陽性になる

○ CMV (cytomegalovirus) は免疫染色を是非とも行う
 ・潰瘍性大腸炎などの文脈で「臨床的に CMV 感染を疑います」という一文があれば必ず免疫染色を行う
 ・典型的には核内に紫色の塊の封入体が見られるのが特徴だが,早期の感染では証明されないこともしばしばある
 ・免疫抑制をかけるべきなのか,抗ウイルス薬を投与すべきなのか,大きな分かれ道になるので重要

結腸・直腸生検のやっつけかた【3. 明らかな良性・反応性病変のみかた】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ ポリープとして採取された検体で特異的な所見がない場合には所見診断を
・消化管生検は恐らく誰もやるので,内視鏡の質のばらつきが結構無視できないくらい大きいことがある
・ポリープとして切除あるいは生検されてくることが多い
・ポリープとして内視鏡的に見えても組織学的には特異的なポリープの像が見られないことがある
・その場合は無理をせず所見記載による診断にとどめておいたほうが良い

○ よく使うキーワード
・以下のキーワードはどれも疾患特異的とは言い難い.所見のボリュームを増していかにも的なレポートを仕上げるために必要なもの.以下の変化が混在して見られることはとてもよくある

・再生性変化 regenerative change
 胃生検ほど紛らわしいことはない.基本的には核が一様に軽度丸く腫大し,極性の乱れが目立たない状態
 大小不同が出現し,紡錘状になってきたら再生性変化ではなく低異型度管状腺腫として拾う
 びらんによる上皮の再生でも,炎症による反応性変化でもどっちに対して用いても良い
 再生性変化による核腫大が強く腫瘍性に見える状態を再生異型というが結腸直腸生検ではほとんど問題にならない

・過形成性変化 hyperplastic change
 過形成性変化というときは,腺上皮の細胞質が増生して丈が長くなった状態を指す
 結腸直腸生検では過形成性変化を起こすと,ノコギリ状の鋸歯状という形態を呈することが多い
 過形成性ポリープと SSA/P の違いは別に項目を設けているのでそちらを参照

・腸上皮化生 intestinal metaplasia
 杯細胞が出現する状態
 Paneth 細胞まで出現したら完全型腸上皮化生と呼ぶこともある
 結腸直腸生検で見られるのは当然腸上皮なので,腸上皮化生と書くと流石にまずい(異所性胃粘膜に生じた腸上皮化生など特殊な場合を除く)

・浮腫状変化 edematous change
 正直浮腫状変化単体ではあまり病的意義は見出しにくく,またどの程度から浮腫状変化と呼ぶかもあいまい
 どどんぱ先生的にはどうでも良い変化なのだが,見られれば記載したほうが良い

・Fibromusculosis
 間質に膠原線維と平滑筋細胞の両方が増生してくる病態
 粘膜脱症候群 (MPS) でよく見られる,中心的な所見だが,この所見自体は非特異的でこれがあるから MPS とはいえない

・毛細血管の拡張 ectatic capillaries
 うっ血の状態
 内視鏡所見で「あかい」から生検してきたものはこれ(+微小出血)を見ている可能性が高い
 MPS の部分像としても登場しうる

・間質の肉芽組織様変化 granulation like change
 見えたら書いたほうが良い

・びらん erosion
 びらんという言葉の組織学的定義は意外とあいまい
 びらん,潰瘍いずれも粘膜の欠損(びらんは粘膜まで,潰瘍はそれ以上深いところ)
 生検検体で表層の腺上皮が剥離しているものを全てびらんというのは難しい,なぜならば artefact の影響も考慮されるから
 どどんぱ先生は上皮の欠損+好中球浸潤(あるいは中等度以上の慢性炎症細胞浸潤でも可)があったときにびらんという表現を使うが,単なる上皮の欠損でもびらんという言葉を使う人もいる
 上司の方針に従うこと

結腸・直腸生検のやっつけかた【2. 結腸・直腸生検を見る前に必要最低限の組織学的な知識】

2017/06/25 1st edition.
2017/07/07 Last updated. 

○ 結腸・直腸生検の正常構造
・粘膜固有層→粘膜筋板→粘膜下層→固有筋層(内輪・外縦)→漿膜下脂肪織→漿膜
・通常は粘膜下層までしか採取されない → 粘膜筋板の有無を記載することが好まれる(粘膜固有層全層が採取されていることの担保)
・杯細胞 goblet cell を豊富に含む上皮からなる腺管が見られ,右半結腸では Paneth 細胞がみられてもよい
・間質にはリンパ球,形質細胞,好酸球などが浸潤
・盲腸生検の場合は結腸粘膜が採取されてくる場合と,小腸粘膜が採取されてくる場合がある
Point: 生検検体から分かるのはせいぜい大腸か小腸かくらいで,部位については同定は不可能.結腸なのか,直腸なのかすらわからない.たまに盲腸で小腸粘膜が採取されていることもある.

○ 実際の診断に当たっての注意
・Polyp などでどの場所で起きやすいか,だいたい決まっているものもあり,またこの部位にはこういう変化が起きても良いなどと決まっていることもある
・採取部位の確認は一応しておく

2017年6月21日水曜日

皮膚生検のやっつけ方〜皮膚病理総論

   改訂履歴    
2017/06/21 初版  
【はじめに】
○ 皮膚病理は難しい
・皮膚病理は臨床所見と合わせ判断する必要があって,病理組織単独で病名を確定すること自体が困難
・腫瘍性疾患は病理のみでの比較的評価しやすいが,炎症性皮膚疾患は臨床的な背景がなければかなり厳しい
・なぜ難しいのかというと,ある組織像を呈する臨床病型が複数あって,逆にある臨床病型が複数の特徴的な組織像を呈することが往々にしてあるため,一対一対応ができない
・多対多対応というのは炎症性皮膚疾患はもとより,腫瘍性疾患でも Bowen 病 vs Bowenoid papulosis などあり,注意が必要

○ 実は病理医にとって皮膚病理を評価することはそこまで求められていない
・皮膚科医は基本的に自分たちだけで標本を見ている
・皮膚科医は病理医の書く病理診断のレポートを参考程度にしか見ていない
・たまに「生検→切除」の流れで,切除検体の病理検査の申込書で,生検診断とは違った診断名で出てくることがある
・そういう不一致例でも特に病理側に話が来ることはない

○ 病理と皮膚科とのコミュニケーション
・皮膚科医との密なコミュニケーションが取れていない環境下では踏み込んだ診断はやめた方がよい
・皮膚科医は病理医の診断が自分たちとの診断が異なっていて自分たちの診断に自信があれば,その診断で通し,もし自信がない or 分からなければ,病理医の診断を採用する
・病理診断は臨床診断に依存していることが多いのだが,生検時点で検体申込書に適切な情報が記載されているとは限らず,我々としてもその情報だけで適切な診断ができるとは限らない(もっというと明後日の意味不明な臨床診断で生検してくる皮膚科医もいる)
・そして,最終的に間違っていた場合にはカルテに「病理検査では●●であったためこうしたが…」という風に病理があたかも誤診したかのような書き方をされる
・他にも学会発表とかでも彼らは勝手に発表していてこっちには一切話しが来ないとか,どどんぱせんせは皮膚科医に対してはとても否定的なイメージを持っているのだが,まぁ愚痴はこれくらいにしておいて要点を次で述べる

○ 炎症性皮膚疾患は所見診断が基本,腫瘍性病変でも書き過ぎは注意
・皮膚生検のやっつけ方では基本的に臨床診断をあまり重視せず,所見診断を基本にする
・ある種の比較的特異的な所見については他に疑うものがほぼないような状況下ではない限り suggestive of, compatible with などを用いるが,臨床医にとってはこれらの表現もいつの間にか取りされてしまうので仕様にあたっては細心の注意が必要
・炎症性皮膚疾患は疾患特異的といえる所見がないことが多く,所見診断で今病変がどのような状態にあるのかについて言及
・腫瘍性病変もある程度臨床像(年齢,性別・部位)が合えば,はっきりと書いても良い

【皮膚病理を学ぶ前の段階】
 ○ 湿疹三角は一応大切な考え方
 ・湿疹 eczema = 皮膚炎 dermatitis でかなり広い概念で,どどんぱせんせいも正直どこからどこまでが湿疹として扱ってよいのか悩む
 ・湿疹三角は一応基本と言われているが,あまり皮膚病理を読む時に重視されていない気がする
 ・別に皮膚科診療をするわけではないので特に知る必要はないが,湿疹というものが「紅斑」から始まって「膿疱」で極まり,治癒あるいは「苔癬化」(≒皮膚の肥厚,いわゆる扁平苔癬とは別物)で慢性化するという流れは知っておくと色々と便利

 ○ 皮膚科で使われる言葉を知るべし
・皮膚科の言葉遣いはとても独特で,初学者が覚えるのは結構辛い
・もっと簡単な言葉遣いにしてほしいけど,もうそうなっている以上はどうしようもない
・全てを最初から覚えるのは無理で,出てきた時に逐一確認するのが現実的

○ 皮膚科で使われる用語〜平坦な病変
・斑:皮膚面と同じ高さの病変
・紅斑:血管拡張による.圧迫により色が消退
・紫斑:出血による.圧迫により色が消退しない
・色素斑:赤血球以外により色が濃くなる(多くはメラニン色素)
・白斑:メラニンの減少により色が薄くなる

○ 皮膚科で使われる用語〜隆起性病変
・充実性:丘疹(<0.5 cm),結節(≧ 0.5 cm, < 3 cm),腫瘤(≧ 3 cm)
・非充実性:
  表皮下までの液体を入れる腔:水疱(Cf. 0.5 cm未満は小水疱),血疱(含む血液),膿疱(含む膿)
  真皮内で液体を入れる腔:嚢腫(=嚢胞だが膿疱と混同しやすい),膿瘍(含む膿)
・局面:径 2 cm以上の扁平隆起性病変(Cf. 0.5-2 cm 小局面, <0.5 cmは丘疹)
・苔癬:丘疹が集簇(Cf. 苔癬化局面とも言える)終始その形を保持して他の発疹に変わらないもの
・疱疹:小水疱あるいは小膿疱の集簇
・膨疹:24時間以内に消失.ほぼイコールでじんま疹を指す用語
・瘢痕:皮膚損傷後 → 線維化で正常皮膚と置き換わったもの

○ 皮膚科で使われる用語〜陥凹性病変
・皮膚欠損:びらん(表皮・粘膜上皮まで)の欠損,潰瘍(真皮・粘膜固有層以深)の欠損.Cf. 外傷によるものは表皮剥離
・亀裂:真皮に及ぶ線状の裂隙(組織欠損を伴わない)
・萎縮:皮膚の退行性変化,菲薄化により陥凹

○ 皮膚科で使われる用語〜その他
・痂皮:滲出液や血液がびらん・潰瘍面に付着し乾固したもの(血液性のものは特に血痂という)
・鱗屑:堆積した角層が大小の薄板となって付着するもの
・掻痒症:掻痒のみで他の症状がないもの
・紅皮症:紅斑と鱗屑が皮膚の90%以上に及ぶ状態

○ 人名の付いた,比較的特徴的な徴候名
・皮膚描記症:皮膚を擦った後,皮膚を擦った通りに出現するじんま疹様の膨疹.物理的じんま疹の一型(正常人の5%程度が示すこともある)
・ダリエ Darier 徴候:病変を擦ったときに,その部分が膨れる現象.例 色素性じんま疹すなわち肥満細胞症
・ニコルスキー徴候:中毒性表皮壊死剥離症およびある種の自己免疫性水疱性疾患の患者で皮膚を優しくずらすように圧迫するときに生じる表皮の剥離
・アウスピッツ徴候:乾癬の局面から鱗屑を剥がした後に点状の出血を生じる現象
・ケブネル現象:外傷(例,引っかく,擦る,損傷)を受けた部位に病変が生じる現象.例 乾癬(+扁平苔癬)で見られる現象

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...