2022年6月30日木曜日

Coca cola after work.

# 仕事の後のジュース

仕事のあとのジュースを飲むのは爽快.お酒じゃないのか?と思われるかもしれないが,個人的にはお酒でもお茶でもジュースでもあまり変わらない感じ.

ここ 1, 2 週間はありえないくらい暑くて外に出て入るだけで死にそうなくらい消耗する.まぁ実際死んでるんだけど.いわゆる夏バテとというやつ.

# 常にリクルートを

複数の病院をまたいでわかったことは,人が減りだしたらどんどん人が減るし,人が増えだしたらどんどん人が増える.ごくごく当たり前かもしれないけれども,人は人が集まっているところに集まってくる.上昇トレンドに乗り出したら何もしなくても集まってくるが,人が減りだしたらもう手がつけられなくなる.自分がいなくなったほうが早かったりする.

病理のようなマイナーな診療科は勝手に増えるということはあまりないので,放っておくと確実に減っていく.だからこれだけいたらもう十分という感覚になるのは危険で,隙きあらば常に人を入れよ,という方針でようやく現状維持以上となる.

# 自分達の強みと弱みを整理する

よく案内をするときに,良いことしか言わないことが多い.うちに来ればこういう事ができるよ,とかこういうのがいいよ,とか.わざわざ弱点を伝える必要があるのかと思うかもしれないけど,弱点を伝えないと信用されにくい.

もっというと,自分の経験にもよる.例えば海外に留学することが出来るよ,と言われてもよくよく見ると実際に留学した人の実績がなかったり,現状人がいなさすぎて留学をするだけの余裕がなく出させてもらえなかったりとかもある.

聞く側は伝えられたことに対して最大限を期待しがちであるため,その最大限の期待を打ち砕く作業が必要.そうしないと「こんなはずじゃなかった」と思われてしまい残念なことになりがち.

そのためには自分たちを客観的に見る必要がある.客観的に見て自分たちのどこが強くてどこが弱いのか.留学をするにしてもどういう条件を満たせばというふうに具体性を持って話をしないといけない.

# 相手の真のニーズを把握すること

誰であってもいいというわけではなくて,いくら人が欲しくても選別はしたいところ.誰でも welcome というのは一定の確率で変な人が集まってくる可能性があるし,まともな人であったとしてもお互いのニーズが合わない可能性もある.

本当のニーズはなかなかすぐには話してくれないことが多いので,質問を変えながら,様々な話をしながら探っていく.そうやってそのニーズを解決する方法を模索しながら,それがうちの病院で解決できることであればそれを提案する.もし出来なければ他の選択肢を提案する.

そこまでして初めてリクルートと言える.話をしてみたものの,結果的に違う病院で働くことになった先生も少なくない.


2022年6月27日月曜日

AI diagnosis vs Cytogenetic diagnosis

 # AI diagnosis vs Cytogenetic diagnosis

https://twitter.com/kiko12139/status/1541028333428678656?s=20&t=Yq_JE94J9uzQuj51YAtUUQ

この話題はもう今では使い古されたようにも見えるが,テーマを若干変えて時代を超えて脈々と受け継がれており,興味深いので取り上げてみる.

# IHC solves everything

1990 年代から 2000 年代初頭において,免疫染色が台頭した時に次のように言われてきた(その頃は病理をしていなかったというか学生だったので直接は知らない).

免疫染色をすれば癌か癌じゃないかすぐ分かるようになるので,病理は失業するだろう

しかし, 現実的には HER2 を始めとして,PD-L1 の免疫染色等様々な治療適応あるいは予後予測因子を含めて様々な抗体が登場しており,失業どころか仕事がどんどん増える傾向にある.面白いことに,どの免疫染色の抗体のマニュアルを見ても次のような記載がされている.

HE 染色で病理医が癌(当該の適応のある腫瘍)と診断していること

いくら陽性であっても癌でなければ評価には意味がない.実際問題,HER2 の clone によっては胃腺窩上皮にも陽性になるため,結構判断を慎重にせざるをえない.

# History repeats itself or generates an epoch-making event. 

免疫染色が登場した時に臨床医から「病理医なんて要らなくなるよ」と言われていた病理医は多分ほれ見たことかーと思っているだろう.ただ,細胞遺伝学的な定義となってもその状況が続くかは分からないが,個人的には多分変わらないんじゃないかなと思っているところ.

これは今までずっと言い続けてきたところだけれども,遺伝子異常そのものは腫瘍か否かを定義できない.実際 IgH の再構成は健常の人の末梢血からの検出されうると言われている.

腫瘍であるという前提がある場合は遺伝子異常は診断(区分)に非常に有用だが,腫瘍かどうかという前提がはっきりしない状況下では判断が難しい.

もちろんこれは現時点での知見に基づく話であり,今後,変わるかもしれない.腫瘍・非腫瘍を区分するような,診断上有用な新しい遺伝子異常が見つかるかもしれない.そうすると組織標本の HE 染色を評価すること自体が陳腐化してしまうだろう.

# Paradyme shift changes everything.

臨床医の「病理医不要論」はパラダイムシフトが起きれば可能かもしれないが,その際には臨床医だって不要になる可能性がある.病理診断に drastic な革命が起きるとして,その時に臨床医は従来のままだということはありえない.医療は相互に関連しているのだから.

その時にはどうなるのか予測をすることは難しい.結局そういう変化に不安を抱くのか,楽しむのかという違い程度でしかない.

# Efficiency is not all.

もう一つ指摘すべき点として,「病理医不要論」の中には無駄が一切省かれている前提が多い.ただはんこを押すだけのいる意味がないような人たちは存在しないような前提である.しかし,天下りを始めとして様々な職場にはそういう人達がいる.ルールを少しいじるだけでいかようにでもなる.論理的には正しいかもしれないが,実際にどうなるかはわからないし,変数が多すぎる.

外国人のエスコート

# コロナ禍での観光案内

先日,学会関連で来日した外国人の先生の観光案内をしていたところ.結論としては楽しんでもらえたようでよかったと一安心しているところ.ただ,反省点や疑問点も多々あったところ.

予め言っておくと,当然 1 対 1 ではなく,サポートしてくれる人が複数いる中での話.多分一人だと話が持たなかったと思う.

# 不干渉か過干渉か

外国人の日本の観光で何を望んでいるのかは多分人によって相当異なっているのだろうと思っている.これまで見聞きした範囲では一人で自由に活動したいから接触は極力しないでほしいという人から,今回みたいに「全てお任せ」というパターンまで.お任せと言われて嫌な顔をされることはないのだろうけれども,意外と難しい.

そして注意深く観察するとお任せと言いつつも,こういうことがやりたいとかこういうのを見たいとかが言葉の端々から出てくるので,そういうのを丁寧に拾いつつ,スケジュールと併せて最大限の体験を提供できる様に務めることになる.

ただ,いわゆる「日本的なもの」は多くの人が食いつくようなので,そういう日本的なものは確実に含めつつ,あとはプラスアルファで状況を見ながらということになる.

# 猛暑の中の観光

正直言うと今は時期が悪い.あまりにも暑すぎて外を出るのは若干命がけ.こまめに涼しいところへと思っていても,寒暖の差で体調を崩しやすい.

かといって中の activity は限られるし,室内だけでは日本を観光したかと言われるとどうかなという印象を持つ.

# 普通を見てもらうこと

案内をする時に個人的に心がけているのはなるべく普段を見てもらうようにすること.いわゆる昔の古き良き?日本の面影が分かるところだけではなく,現代のモダンな側面を見てもらえるようにすること.

そしてこういう形で来る外国人にはすでに高級料理店に連れて行かれていることが多いので,その反動で,格安ないわゆる日本のファーストフード(ラーメン,うどん,牛丼等)や,あとは世界的なファーストフードチェーンに連れて行ってみる.前者はいわゆる普通の日本として知ってもらうのに好都合だし,後者は自国のメニューと比較するのも面白い.あのマクドナルドを含め,ほぼ必ずファーストフードチェーンはローカライズしているので,自国のメニューがあるとかこんなメニューは見たことないとかそういう発見も面白い.

そして普通をきちんと説明できるようにしているとおそらく受けが良いと思っている.

2022年6月19日日曜日

オンラインのレクチャーを聴く

 # オンラインのレクチャーを流しておく

つい先日行われた臨床細胞学会のオンラインを聞きながら単位を取得.すべて聴けるのは良いが,総コマ数でいうとおびただしい数になってしまうので,とりあえず専門医機構などの単位取得を前提にちょこちょこと.

とはいっても,ちゃんと聞くと難しいのでとりあえず聞いたフリになるかな..ダラダラ聞いていても,いくつかはへーと感じることがあるのでこういうのも悪くはないとは思う.

ただ,active window にしないと放送が遮られるので,別の作業をしながらするときにはパソコンをべつにようしないといけない.まぁ自分はパソコンがたくさんあるので困ることはないけれども.

# 細胞診専門医試験を受験する人に

どうやら病理専門医試験が 9 月に行われる様になったために,細胞診専門医試験を受験する際に「病理専門医合格見込み」での申込みができなくなっているよう.ただし,現在交渉中で,以前と同様に見込みだそう.

うちでは細胞診専門医の価値が極端に低い.むしろ持っている方が損をするような仕組みになっている.これはさすがにどうなのかなという気持ちがしなくもないけれども.役職者が価値を見出していないということが多い気はしている.

臨床細胞学会自体が金にがめついという印象があるのは否定できないが,それはそれとしてある程度歴史のある学会である.専門医機構のサブスペに入れるかどうか,という懸念はあるが,少なくとも実地的には細胞診断に即して存在してきた学会であり,日本の細胞診断に大いに寄与していることは確実である.

諸外国と併せて鑑みると,細胞診専門医は例えば皮膚病理,血液病理などと同様にサブスペシャリティとして認知されている.そのため少なくとも自分は病理専門医+細胞診のサブスペシャリティがあると対外的に言えるし,まぁ実際ともそんなには相違はないか.

# 学会の準備をせねば

そろそろ学会の準備をしないといけない気もするが.そういえばまだ案内はないな.




2022年6月17日金曜日

病理検査依頼書の書き方

 # 結局まともな病理検査依頼書なんてかける人なんてこの世には存在しない

これが結論.病理医も臨床医もその点は間違えている.昔は「病理診断をするときに,臨床情報が不足しているのは臨床医の quality が低いかトレーニングが足りないからだ」と思っていたが,米国やその他でも似たような状況なんだなと理解してもう一度考え直した結果たどりついた結論.

# 病理診断をするときに依頼書のどこに着目しているのか

病理検査(診断)依頼書の書き方の講義をする病理医はたまにいる.そこでは大抵の場合は「〇〇や△△の情報を記載してほしい」という話し方がなされる.それは間違っていないのだが,そのなぜが伝わりにくくインパクトとしては弱い.

そこで,依頼書のどこに着目して書いているのかについて少し例を挙げて書いてみる.これを読んでもらえたら依頼書の書き方のイメージが少し湧くのでは?と期待している.

胃生検,60 歳女性.これくらいは書かなくても依頼を出す時点で自動的に付与されている.それを確認して標本を見る(臨床情報をあとから見る,という病理医もいる).胃底腺領域の胃粘膜内に癌があるな.しかも低分化.粘膜内だけど,いわゆる carcinoma in situ と呼べる部分がなく,腺癌の有り様としてはやや不自然.辺縁から採取したのであれば粘膜内進展として acceptable か.でももし中心部から採取されたのであればやはりおかしく癌の転移についてはどうなのか気になる.

と,ここで病理診断に必要な情報が出てくる.

  • 採取部位:胃底腺領域であることはよいとして,病変の中心なのか辺縁なのか
  • 他の原発性癌の可能性:既往歴があるのか,なければ全身検索はされているのか
ここでもし直近で乳癌の既往があるとなると,乳癌の転移の可能性はということで ER, PgR, GCDFP15, GATA3 などが施行される.肺癌があれば TTF1, etc という風に何を原発と考えるかで次の action がダイナミックに変わってしまう.女性だし乳癌の可能性も考慮しないと考え,免疫染色を行っている最中に,「結果どうですか?あっ癌の可能性がある?ちなみに右肺上葉に 5 cm 大の腫瘤が上部消化管内視鏡検査前に見つかっていて,こちらは別の肺癌かと考えています!」なんて言われた日にはなんで別って言い切れるんだよ!みたいな気持ちになってしまう.

でももし癌がなくて慢性胃炎であった場合には詳細な既往歴や臨床経過も無駄になってしまう.そうすると「要領悪く臨床経過をだらだら書きやがって!」という感想になる.さらにピロリっぽい菌をごく少数見つけたときに除菌後かいなかという情報がないとはっきりとものを言いたくなくなる.ピロリ菌は癌であれば(あれば記載をするが)ほぼ問題ない.

どこに着目しているのか,という答えは難しく,組織像によって必要な情報は変わるので本質的には難しい.答えがわかっているとそりゃたしかに必要だよなということになるのだが,答えが見えないのに解答に必要な補足情報を過不足なく提供するのは不可能で,病理検査依頼書がきちんとかけている先生は病理に出す前から病理診断の予測がついている事が多い.

# カルテを見ればいいじゃないか

たまにこういう臨床医がいる.カルテに詳細に記載しているのでそちらをご参照くださいと言われる.やってみればわかるがカルテを開くのは結構面倒.贅沢な病院では病理診断システムと電子カルテが相乗りしているところもあるが,電子カルテを別の端末で参照するところも少なくない.

たとえとして適切ではないかもしれないが,気持ち的には外来で患者を一人見て,すぐに処置室に様子を見に向かう感じ.施設によるが往復するのにも結構時間がかかる.それを患者一人に対して全てしろというのはあまりにも酷である.

コロナ禍での病理医としての働き方

書きながらちょっと話が途中から脱線しているが,それはそれでよいことにする.

 # 結局コロナはあまり働き方を変えてはくれなかった

もちろん現状ではまだ新型コロナウイルス感染症が収束したとは言い難いが,まぁある程度収束しているとみなしてもよいだろう,良くも悪くも new normal と言われている新しい生活様式が始まろうとしている.どちらかというと near normal が近いかな.総括ではないが.

病理医としての働き方をする上で,コロナは大きく変えてくれることを期待していた.在宅が中心で,職場に行くのは切り出しだけ,あとは WSI でスキャンされた画像が送られてきて自宅で診断を入力する.定期的に zoom や Teams で会議をしながら,youtube を見る.お気に入りの音楽をかけながらゆったりと仕事をする.

少なくとも自分のところではそれは実現しなかったし,他のところもほぼ通常営業をしている.病理はその仕事の有り様を大きく変えられるチャンスでもあったのだが.自分が長であれば間違いなくやっていただろうが,そこはしょうがない.

# やはり face to face での仕事は大切なのかもしれない

今日はレジデントの先生の診断を一緒に multiheaded microscope で議論をしながら診断のサインアウト(正確にはさらに上に上級医がサインアウトをする)をしていた.単に診断をチェックするだけならば,特に顔を合わせる必要はないが,一つの症例から学べることは多く,そういうときに脱線を踏まえながら見ていくほうが結果的に学習の効率という点では遥かによい.

例えば,大動脈粥状硬化症による動脈瘤を見たときに,典型的な粥状硬化がどのようにして形成されるのか,という病理総論の知識を踏まえつつ,さらに進行すると中膜の弾性動脈が断裂して血管壁が不明瞭になり瘤状に拡張することや解離を起こすこと,ときに炎症性大動脈瘤という炎症細胞浸潤が目立つような形態をとることを話す.解離は中膜外 1/3 に起きやすく,そして炎症性大動脈瘤の場合,形質細胞浸潤が目立っていれば IgG4 関連疾患や現在ではほぼ見ないが梅毒 4 期も鑑別に挙がること.そして梅毒では vasa vasorum が侵されることなどを話す.

最近では一つの症例や疾患に対して,診断ができるだけではなく,様々に語れることが大切なのかなと考えていて,例えば一つの大動脈粥状硬化症をとっても丁寧に説明している.こういう細かいことをきちんと聞いてもらえるように話をすることは face to face 以外では難しいような気がしている.つい先日米国から来日した病理医の先生の講演で質問をしても結局 face to face に戻ったという旨の話であった.

# Case based approach

自分は比較的初期から?学習をする際には症例ベースで学んだほうが結果的には効率がよいと信じていて,今でも実践している.結果的に診断がかなりゆっくりになっているが.

レジデントの先生と標本を見るときにも,当該症例をベースにして常に揺さぶりをかける.もし「AE1/AE3 陰性だったら先生は何を考える?」「臨床情報がなかったらどうやって鑑別診断を組み立てる?」「もし生検 3 個中に 1 個だけあった癌のある切片がないと仮定したら,どうコメントする?良性とだけ返す?」そうやって一本道しかないようにみえる簡単な症例の難易度を上げていって常に考えながら診断をするように促す.

ある意味ゲームみたいなお遊びだが,それをするはある程度熟練してかつ専門医を取得する前までの先生のみ.トレーニングのはじめの先生はまだそういう揺さぶりを耐えるほどの実力はないし,専門医を取得した先生に対しては(よっぽど間違っていなければ)自分は原則指導をしない.それだけ専門医というものは価値があると思っているし,その先生の主体性を尊重すべきだと思っているから.

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...