2021年3月10日水曜日

症例テンプレートの運用について

  【臨床情報(年齢・性別・部位等)】

[頻度] 

[年齢・性差] 

[病因・病態] 

[臨床的特徴] 

[症状] 

[画像所見] 

【肉眼所見】

【組織学的所見】

【鑑別診断】

【免疫組織化学染色・分子病理】

【治療・予後】

【実際に症例を経験した感想】


大体こんな感じでテンプレートが出来上がりそう.試行錯誤をしていくうちに,だんだん WHO bluebook に近づいている感じがするけれども,結局そういうことだったのかと改めて納得笑

実際に経験した感想はあったほうがいいのかなと思い始めた.そうしないと結局論文読んでまとめました以上の広がりがないので.

2021年3月8日月曜日

虫垂憩室 appendiceal diverticulosis

今日は最近見た(疑った)虫垂憩室について調べたことのまとめ

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1066896909332728

↑主に参照した文献 (review).

 【臨床情報(年齢・性別・部位等)】

[頻度] 稀,虫垂切除検体のうち 0.004-2.1% に見られ,剖検例では 0.20-0.66% 程度.

[年齢・性差] >30 歳,平均的には 37-39 歳.男性>女性

[病因・病態] 多くは後天性.先天性憩室非常に頻度が低い(0.014%).厳密な病態は不明だが,男性,>30 歳,ヒルシュスプルング病,嚢胞性線維症はリスクが高い.後天性の憩室に関する病態は炎症に起因するものと起因しないものが考えられている.前者では,先行する炎症により内腔の狭窄をきたし,リンパ装置の萎縮から壁の脆弱性をきたすというもの.後者では,何らかの原因(腫瘍や糞石など)により,狭窄を来たし,内圧上昇及び筋活動の活発化をもたらすという.先天性のものは発生途上の異常と考えられている.

[臨床的特徴] 穿孔を起こす確率が高く,急性虫垂炎よりも致死率が高い.

[症状] 憩室であれば無症候性あるいは軽度の慢性的な腹痛が数ヶ月~数年程度続く.憩室炎であれば腹痛があり,右腸骨窩に限局し,臍周囲痛の先行を伴わない.急性虫垂炎で見られるような嘔気,嘔吐,食思不振などと言った消化器症状は見られない(典型的な腹部症状ではない高齢男性では虫垂憩室炎の可能性を考慮)

[画像所見] 画像上指摘するのは難しい.憩室炎であれば急性虫垂炎に類似している.

【肉眼所見】

  • 虫垂の遠位 1/3 側が最も多い.
  • 複数の憩室があればビーズ様の像を呈する.
  • 憩室は通常複数で,2-5 mm 大と小さいものが多いが,中には 8 cm 程度まで大きいものも存在する.

【組織学的所見】

  • 先天性憩室は真性憩室であり,後天性憩室は仮性憩室である(真性憩室の方が穿孔を起こしにうい).
  • 虫垂憩室及び虫垂憩室炎は次の 4 つの亜型に分類されている.
    • Type 1:古典型.急性憩室炎で虫垂は正常
    • Type 2:急性憩室炎で虫垂炎が付属するもの
    • Type 3:急性虫垂炎で炎症を伴っていない虫垂憩室が見られるもの
    • Type 4:正常の虫垂及び症を伴っていない虫垂憩室が見られるもの
  • この中で type 1 が最も多い.Type 1-3 は穿孔の有無で更に分類される.

【鑑別診断】

  • 急性虫垂炎:多くは臨床的に鑑別がなされる
  • Crohn 病,腸結核,寄生虫感染
  • (組織学的な鑑別ポイントはあまりなさそう)

【免疫組織化学染色・分子病理】

特になし.

【治療・予後】

虫垂切除検体が基本.特に虫垂憩室が見られた場合には穿孔を起こしやすいため選択的切除が望まれている.

【実際に症例を経験した感想】

穿孔を起こすと,そもそも憩室かどうかの確認からして難しいが,背景の虫垂に炎症らしい炎症が乏しい(せいぜいカタル性虫垂炎程度)ことから憩室の穿孔を疑った.臨床的には虫垂炎あるいは回盲部周囲炎として切除されてくる可能性がありそう.月次な感想だが,unusual な虫垂炎の切除検体を見たときには憩室炎・憩室穿孔も鑑別に入れておいたほうがよいかも.

2021年3月7日日曜日

論文斜め読み

Plasma cell neoplasms of the bladder: A series of 9 cases

ちょっと何個か感想を書きながら,何をまとめたらいいか考えてみよう.

感想としてはまぁそうだろうな,という感じ.Clear cell adenocarcinoma の合併は結局なんでなんだろう.まぁたまたま?

ただ,少し気になったのが,IgG4 related disease の rule out はしてなさそう.膀胱で(別に膀胱でもなくてもいいんだけど),形質細胞多いなと感じたら

  • Plasma cell neoplasm (primary or bone marrow の extension も含めて)
  • Plasmacytosis  / plasmacytoma
  • MALT lymphoma で plasmacytic differentiation が激しいやつ
  • IgG4 related disease
  • Invasive urothelial carcinoma, plasmacytoid variant (plasmacytoid urothelial carcinoma)
  • Chronic inflammation (結石でもなんでもいいんだけど,慢性的な炎症を引き起こすような局所的な要因)

あたりは丁寧に鑑別したいところ(特に教科書を参照せずに適当に思いついた物をあげているだけなので抜けてるかも).大体生検 or TUR での提出が多くて,fragmented な検体が多いから HE だけで鑑別するのは難しいことも多いけど.

Invasive urothelial carcinoma, plasmacytoid variant と診断するのであれば,やはり cytokeratin が陽性となることは最低でも確認しておきたい(IHC なしで診断をするのは勇気がいる,言い換えると間違えるリスクが結構高い).あとは lymphoma set の IHC で半ば機械的に処理をする感じかな.

Amyloid の沈着は確かに,plasma cell neoplasm に特徴的かもしれない.他ではそんなにみないもんな.ただ,Bowen's disease では上皮下に amyloid が沈着することはまあまあ有名.沈着したらなにかって感じではあるけど.

ここからは論文の内容とは関係ない.

このブログはおそらく google のサービスが終了しない限り 10 年間くらいは続きそうな気がするから,最初に書いておくけど,AI 病理診断が一般的になる今現状(あるいはなってからも?)では,いかに鑑別診断を挙げられるかが重要というかそれが全てみたいなところはある.

鑑別診断を挙げることができれば,あとはその鑑別診断を丁寧に rule out するだけで,各疾患に関する詳細はだいたい本や論文を見れば書いてあるから細かく覚える必要はない(全く覚えないのも問題だが,鑑別診断を出す時点である程度は分かっているはず).

ただそれが鑑別診断を覚えなくてもよくなるのかと考えると多分そうじゃないと思う.なんでもそうだけど,判断するにはある程度の知識や経験が必要で,最終的に人が判断をするというのであればそれなりの経験を求められる.

ここはまだどういう方向性になるのか未知の領域ではある.例えば車の運転についてはホンダが自動運転車を本当に実用化してしまった.気になって色々調べてみたところ,これは自動運転をして事故が起こっても運転者は原則無罪だそう(人が運転をするより安全で,もし事故が発生した場合は相手が 100% 有責でもしそうでなければ自動車会社が責任を追うとのこと).病理診断もそこまで行くと,AI 診断と呼べるだろうが,AI の機械あるいはアプリを作った会社が責任を追う未来が描けるだろうか(多分それをするくらいなら AI の作製会社が自ら診断をしているだろう).

そういう未来が来たときには多分本当に仕事がなくなるかもしれないが,でもそのときはおそらく社会全体の仕組みがガラッと変わっていて,そしていつも言っているように,そういう epoch making なイベントは静かに少しずつ近づいてきてることが多い.その波に遅れないように,update していく必要があるんだろう.


広告の運用について

 特にあまり深く考えずに google アドセンスを入れてみた.

見えている画面の一部にちょっと表示されるならいいかなと思ったけれども,pop up のように出てくるのはちょっとイマイチ.

アドセンスで収益をあげることが目的ではないので,やっぱり消した.

本当はアドセンスで月々数千円の収入があればそれを原資に zoom の有料アカウントを契約してもいいかなとも思っていたが.Zoom くらいなら自腹でもまぁいいし,何なら Microsoft Teams や Cisco Webex など他のサービスもあるか.

Skype はなかなか有望なアプリだけど,MS は skype と teams をどう位置づけているのか.どっちもかなりかぶるとは思うのよね.

とりあえずしばらくは zoom かな.

論文をちょっと読む

気が向いたら論文の斜め読み.大体 abstract だけ.せっかく読むんだから記録をつけても良いかなということで.抄読会のネタ候補としても保存目的.

# NTRK fusion in soft tissue sarcomas harboring MDM2/CDK4 amplification: three case reports

内容としては比較的シンプルで,要するに dedifferentiated liposarcoma について調べたら NTRK fusion が見つかりました,ということ.こういうことは多分ありえる話で,脱分化自体がさらに遺伝子異常が累積しうることから極論何があってもよさそう.

まぁ「良さそう」なら簡単に言えるわけで,こういうのをちゃんとまとめるのはそれはそれですごいんだけれども.

形態的にどう違うのは興味深いところではある.結局我々は形態やさんだから.


# Retroperitoneal dendritic cell sarcoma: A case report

組織の話かと思いきや,画像診断の話であった.なかなか難しいのでまぁ難しいよね,で終わるのだが.

組織球系の腫瘍は結構忘れがちで,最後に諦める前にふと考えると正解にたどり着けることがある,というくらい.

Pubmed のキーワード検索で毎週送られてくるやつだけど,自分の興味にドンピシャリな論文はなかなかお目にかかれない苦笑

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...