2021年11月8日月曜日

診断チェックのポイント

# 診断のチェックとは

診断のチェックには

  • 診断内容の質的チェック
  • 体裁(誤字脱字,内容相互の矛盾)に関するチェック
があり,セカンドとして診断医がチェックする場合は両者を確認している一方で,検査センター等で事務あるいは臨床検査技師がチェックする場合はほぼもっぱら後者になる.

ここでは,後者の内容を中心に,どどたん先生がどういう点に着目して診断内容をチェックしているか簡単に紹介してみようと思う.

# 診断文面の構成

これから話をすることは,腫瘍の手術材料を想定している.

病理診断報告には一般的な病理診断報告は次のような項目が含まれている.

・組織型
・腫瘍の局所的な浸潤 → Ly, V, Pn/neu, INF, int/med/sci
・腫瘍の広がり → pT
・切除断端:VM, HM, PM, DM, ow, aw
・背景病変や付属で切除された検体 → pN, pM

各項目ごとに見てみよう.その前に重要なこと.

その診断がその患者さんのものかどうかを確認すること.この手の間違いは極めてクリティカルである.

# 組織型
 
表記のチェックをするときに組織型の齟齬を指摘するのは難しい.報告書のみをみているだけだと間違いを指摘するのは不可能であり,結局書いてあることをそのまま是認するしかないというのが実際である.

するとせいぜい確認できるのは診断欄に記載している組織型と所見欄に記載している組織型が同一のものかを確認するくらいだが,一つだけ重要なポイントがある.

臨床診断と病理学的診断で良悪性がずれていないか.

良悪性の不一致は特段問題はないのだが,明らかに臨床的に良性を謳っている病変で,悪性と返している場合,そしてその逆は診断のチェックに回したほうが無難なことが多い.

# 腫瘍の局所的な浸潤

局所的な浸潤の記載は,脈管,神経侵襲であったり,間質量,浸潤様式に直結する.とはいえ,このような局所の浸潤は最終的なステージの記載には影響しないことがほとんどである.

ただし,脈管侵襲や浸潤様式がステージに影響すると判明しているのは自分の知っている限りでは次の通り.

・消化管 ESD 検体での浸潤癌
・精巣腫瘍
・膀胱 TUR (?)

文面のチェックだけではこれらが適切に評価できているかは不明であるが,消化管 ESD や精巣腫瘍については Elastica 染色や D2-40 染色などで脈管侵襲を見つけ出す努力がなされていてほしい(これは施設の方針にもよるが...).

# 腫瘍の広がり

これはほぼそのまま pT 分類に直結する.詳細は UICC や規約を参照せねばならず,ここで一言で言うのは難しい.pT 分類を理解するために参考となるような考え方を列挙する.

消化管を除く,多くの臓器の T 分類は 1-2 は腫瘍の大きさで規定されており,3-4 になってくると,その臓器特異的な,メルクマールとなるような構造物への浸潤を flag としている.例えば肺であれば胸膜を突き破るか,前立腺であれば精嚢へ浸潤するか,など.UICC の T 分類を眺めると,腫瘍がいかにして進展していくのか,その様が垣間見える.

甲状腺は例外的で年齢に寄り Stage が異なる.規約によってその cut off の年齢が微妙に異なっているから注意が必要.

# 切除断端

ある程度一人でサインアウトができるような病理医は切除断端がわからないということは恐らくないが,漏れる可能性がある.

# 背景病変・リンパ節

きちんとした?報告書であれば背景病変に関する記載が充実している方がよいが,まぁなくても良い.

リンパ節転移については,領域リンパ節意外は遠隔転移になるので,一応リンパ節は規約を見て確認しないといけない.


書いていてあまりパッとしない文章だが,今後 rewrite することを考えてとりあえず公開しておく.

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