2021年5月5日水曜日

病理診断を学ぶ 〜 婦人科

2022/07/31 情報を更新しました.

特にこれといって新しい情報はなく,やはり WHO が中心とならざるを得ない.最近は出版のサイクルが少し鈍くなってきた気がする.


婦人科病理については流派のようなものがあり,それによって病気の命名方法が異なっている.とはいえ,WHO 分類に集約されつつあるので,WHO 分類を基本に,よく参照するテキストについて紹介をする.

Female Genital Tumours: Who Classification of Tumours (2020)

WHO 分類が基本で,ここで大きく変わり周囲のテキストがそれに追随する.とりあえずこの本からスタートすると良い.

Blaustein's Pathology of the Female Genital Tract (2019)

有名な Blaustein の婦人科病理の本.今回の版は挑戦的であり,索引が省略されている.目次からたどり着けないような初心者は使うなという玄人向けの本.冗談.索引はここからダウンロードできる.

Diagnostic Gynecologic and Obstetric Pathology (2017)

Blaustein と双璧をなす,Crum & Lee の婦人科病理の本.どちらか好みの方で良いと思われる.

Atlas of Gynecologic Surgical Pathology (2019)

こちらも婦人科病理の本だがアトラス的であり情報量としてはやや少ない.

産婦人科病理学診断図譜 (1998)

非常に古い本だが,正常構造や非腫瘍性疾患についても詳細に記載されているため,とても有用.特に婦人科病理に興味がなければ個人持ちをしなくてもよいがまだ販売されており,持っておいても損はない.地味にシェーマがわかりやすくて講義なんかをするときにも便利.

Gynecologic and Urologic Pathology: Similarities, Differences and Challenges (2019)

なかなかおもしろい試みの本.生殖器という共通性からどのように疾患が発生していくのか.対比をしながら提示している.

胎盤病理アトラス (2021)

胎盤病理に新しい player が参入した.著者らいわく,10 年は使える本を目指したということで,確かに網羅性やわかりやすさという点で文句はない.

周産期医療にかかわる人のためのやさしくわかる胎盤のみかた・調べかた-わかりやすい検査・診断チャート付 (2016)

胎盤病理という点ではこの本も捨てがたい.誹謗中傷になるので,どこの本とは言わないが,所詮感想文程度でしかない本をよりもよっぽど良い.

卵巣腫瘍アトラス,子宮腫瘍アトラスもあるが現在では入手不可能になっており,参照する本から除外した(子宮腫瘍アトラスは内容も古くなっており少し参照しにくいがそれでも非腫瘍性病変などは有用).もし図書として有していれば是非参照したいところ.

病理診断を学ぶ 〜 頭頸部

2022/01/01 内容を少し見直しましたが,殆ど変わっていません.

頭頸部は様々な臓器からなる領域であり,雑多な集まりになっている.甲状腺を頭頸部に含めるのか,内分泌に含めるのかは教科書によって異なっている.

WHO Classification of Head and Neck Tumours (2017)

Gnepp's Diagnostic Surgical Pathology of the Head and Neck (2020)

Diagnostic Pathology: Head and Neck (2022)

Head and Neck Pathology: A Volume in the Series (2018)

WHO 分類を原則として,比較的近年出版されている Gnepp や Diagnostic Pathology あたりが参照しやすいテキストと言える.

上記本は頭頸部領域について広く扱っているが,こういう本は日本語に関しては腫瘍鑑別診断シリーズ以外はほぼないと言っていい.ただ,各臓器ごとの本がいくつかあるので提示しておく.

口腔病理アトラス (2018)

唾液腺腫瘍の組織診・細胞診 (2018)

眼病理アトラス (2020)

Schuknect's Pathology of the Ear (2010)

口腔病理アトラスは唾液腺病変も含んでおり,どれか一冊と言われるとおすすめできる.耳の病理診断に関する本はほぼないものの, Schuknect は比較的よく書けている.少し古いが買っておいて損はないと思われる.

唾液腺腫瘍アトラスはとても良い本だとは思うが流石に古くなりすぎているので参照する本からは除外した.



病理診断を学ぶ 〜 脳腫瘍

2022/01/01 内容の確認を行いました.

脳腫瘍に限らず,現在では WHO 分類が事実上,あるいは実際腫瘍の分類の原則になっており,WHO blue book 以外は解説書的な位置づけにならざるを得ない.

特に脳腫瘍は分子遺伝学的な根拠に基づいて再分類されているため,昔の教科書の情報自体が陳腐化してしまう.現実的には WHO bluebook をまず第一の参照根拠とし,その他の本は理解を促すための本という位置付けにしたほうが無難.

現実的には癌取扱い規約及び WHO bluebook を参照することが多く,

WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System (2016)

発行から 5 年経過しており,流石に最新とは言い難くなってきている.最新の話題については cIMPACT-NOW Update と命名された論文で定期的に提供されている.

WHO 分類は 2022 年に新しい版が出版される予定.

脳腫瘍臨床病理カラーアトラス (2017)

アトラス脳腫瘍病理 (2017)

脳腫瘍取扱い規約 第4版 (2018)

実際の診断にあたっては日本語の本が使いやすく,上記の本を参照することが多い.どれも写真が多く,比較的よく書けている本であり参考にしやすい.

Practical Surgical Neuropathology: A Diagnostic Approach (2017)

脳腫瘍の病理診断について,現実的には WHO と上記日本語の本で十分(それ以上は専門的にすぎる)だが,強いて英語の本を挙げるとすると,pattern recognition series が比較的有名である.

Diagnostic Pathology: Neuropathology (2022)

Diagnostic Pathology シリーズはあまりここで取り上げないようにしているのだが,そもそも改訂されている本が少ない中で唯一改訂がなされている.

脳腫瘍病理入門Q&A200 (2015)

この手の本としては珍しく入門的な書籍である.脳外科を志望する研修医の先生におすすめ.もちろん病理の研修医に対してもおすすめ.


病理診断を学ぶ 〜 分子病理専門医試験

2022/01/01 内容を改訂しました.2021 年度実施の試験を受験された先生の意見を反映しました.

2020, 2021 年に 2 回分子病理専門医試験が行われた.

分子病理専門医試験自体がまだ成熟していない,今後変化しうる試験ではあるが,今後の受験にあたって有用と思われる本を列挙していく.

分子病理専門医試験の対策ページを現在作製していないため,便宜上ここに列記する.なお,試験の受験をクリアするためには e-learning をすべてクリアし記憶することと,講習会の内容を理解することが必要十分である.プラスで購入する本は,そのための補助的な資料という位置づけと考えると良い.

日本病理学会 e-Learning(ゲノム診療用病理組織検体取り扱い規定)

e Precision Medicine Japan

遺伝性腫瘍 e-Learning

ゲノム研究用病理組織検体取扱い規程

上 3 つは一つのアカウント登録で相互に学習可能.アカウント登録はすぐにはできないので余裕を持ってみること.遺伝性腫瘍以外の e-learning はマストと言える.e Precision Medicine は基礎編と臨床編があり,少なくとも基礎編はマスト,臨床編は出来ればクリアできるとよいがかなり時間がかかる.

がんゲノム病理学 (2021)

がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド (2020)

がんゲノム医療結果報告書の読み方と患者への伝え方 (2020)

臨床検査 2020年 10月号増刊号 特集 がんゲノム医療用語事典 (2020)

ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程 (2019)(講習会の指定テキストで分子病理専門医試験受験志望者は全員持っているはず)

遺伝子診療よくわかるガイドマップ (2018)

最初に説明したが,結局の所 e-learning と講習会のテキストを理解することが必要十分なわけで,いかにそこに到達するかが問題となる.2021 年 12 月にがんゲノム病理学が出版されて,これが実質公式参考書?かのような宣伝がなされていたが,本の網羅する範囲と試験範囲は微妙にずれていて,思ったほど出題されなかったという意見がある.2021 年度の試験を受けた先生からは公式の講習会の内容を理解することが必要十分で,がんゲノム病理学は後半のエキスパートパネルの問題が有用とのことであった.

自分も含め,多くの先生はがんゲノムなにそれ?という人が多いと思うので,まずは「がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド」と「がんゲノム医療結果報告書の読み方と患者への伝え方」あたりで,そもそもがんゲノム医療がどのようになされているのか,という概要を理解することから始まる.

そして NGS を中心とした,がんゲノム医療の根幹をなすような技術について学習をすることが必要となる.そのためには遺伝子診療よくわかるガイドマップ」などで基礎的な部分を学ぶ.

そうしてある程度基本が固まったところで講習会テキストを読み,e-learning に取り組む.以上で午前問題対策はほぼ完璧と言える.午後問題対策としては C-CAT レポートの読み解きが必要となるが,それには実際のエキスパートパネルに参加し,腫瘍内科の先生に解説を頼むと良い

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...