2018年6月11日月曜日

病理診断を学ぶ 〜 細胞診

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
特に変更はない.細胞診は洋書もあるにはあるのだが,洋書は動きが悪い.個々の領域で本が出版されたりはしているのだが,まとまった教科書的な本は近年はほとんど出ていない.その一方でミラノシステムやパリシステムなど,各領域のガイドライン的な本が精力的に出版されている.細胞診は頭を使って診断を推定していくというよりももしかしたら,検査に移行しているのかもしれない.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.

細胞診の本は昔から結構様々な種類の本が出ていて,古典的な本を含めると結構な冊数に渡る.ここでは主に細胞診専門医を取得しようとしている病理医を焦点に,臨床検査技師,婦人科など臨床医にも対応できるような,本を紹介していく.

ちなみに細胞診とは言っても基本は病理学なので,病理学の本も参照のこと.特に細胞診専門医を取ろうとする臨床医は自分の科以外の知識はかなり少ないはずなので,これらの本を読んで難しいと感じたら,シンプル病理学などを通読して通り一遍の知識を軽く頭に入れておくと良い.

読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 ベーシック篇 (2014)
読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 アドバンス篇 (2014)

おすすめ度:★★★★★

この本ははっきり言ってアンチョコ本の部類に入る.この本を読んだからと言って,細胞診ができますなどと言える代物でもない.しかし,それでもこの本をおすすめするのは,おそらく細胞診の勉強をしている人は(養成所の学生を除けば)病理部でルーチンワークをこなしながら仕事をしている人か,あるいは普段細胞診に接することのない臨床医のはず.

そのような人に「細胞診を学ぶ人のために」を渡してこれを読めというのははっきり言って酷な話.細胞検査士や細胞診専門医を受験しようとしている人はなるべく細切れの時間を活用して勉強しないないといけなくて,そういうニーズに沿っている.

ポケット細胞診アトラス (2013)
おすすめ度:★★★★★

この本の良いところは,写真が豊富,写真がきれいなところ.写真がきれいというのは当たり前のようでとても重要で,汚い写真をいくら睨んでもポイントはつかめない.解説もそこまで長くなくてサラッと読める.

もちろん解説の深さは若干足りないし,これ一冊,そもそもこの本だけで勉強する人はいないだろうから,何度も何度も繰り返しめくって output と復習をすると画像のイメージが定着する.

細胞診アトラス (2021)
おすすめ度:★★★★☆

比較的新しい細胞診のアトラスで,組織と対比して参照できる.確かに悪くはないのだが,写真が少し小さめであることと,1:1 の対比で少し広がりに欠ける.総じて悪くはない.


改訂新版 臨床検査技師を目指す学生のための細胞診 (2013)
おすすめ度:★★★★☆

この本は臨床検査技師の学生向けの本だが,どちらかというと病理医あるいは臨床医向け.病理のトレーニングを始めたレジデントが細胞診の標本の作り方や極めて基本的なことを学習する機会は実はそんなになくて,かといって当たり前過ぎて意外とスクリーナーに聞けない.この本で大まかな知識を入れてスクリーナーに質問するとよい.臨床医もなおさらで,おそらく標本作製の過程など見たことない先生も多いだろうから,この本はわかりやすく書かれている.薄いのですぐ読める.

サイトスクリーナーを目指す臨床検査技師はこの程度の内容は学習済みなはずなので,基本不要のはず.

細胞診ワンポイント講座―知っていれば役立つ細胞所見 (2017)
おすすめ度:★★★★☆

細胞診はキーワード(あるいはクルー)が結構多く,その意味を理解していないと何を言っているのか,どういうニュアンスなのかがわからないことがままある.そんなときに役立つ本.通読するというより調べ物的な立ち位置.

アトラス細胞診と病理診断 (2010)
おすすめ度:★★★☆☆

この本は内容が若干古くなってはいるが,一冊で大まかに網羅できるためとても便利.細胞診と組織診を対して提示しているので,比較して勉強できる.ただ,言うまでもないが写真が少ないため,知識を入れ込むための本と割り切って使うと良い.

細胞診を学ぶ人のために (2019)
スタンダード細胞診テキスト (2019)
おすすめ度:★★★☆☆

どちらも細胞診の伝統的な本で,一般的には一応買うことが勧められる.と言っておく.確かに細胞診の網羅的な resource としてはとても有用.サイトスクリーナーを目指す臨床検査技師はこの本を通読することが求められるが,細胞診専門医を目指す病理医や臨床医はそこまでの知識は求められない.

学会が出版しているガイドライン

意外とよくまとまっている.できれば定期的に改訂してほしいが,著者が多いと難しいのかもしれない.

細胞診のスキルを磨くためには問題演習が必要で,問題集は比較的数多く出版されている.


他の明らかに難問すぎる問題集は意図的に省いている.

2018年6月2日土曜日

病理診断を学ぶ 〜 乳腺

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
特に大きな変更はない.結局のところ,WHO 分類が基本にあってあとはそれを補うような位置付けになりがちである.乳腺疾患は非腫瘍性疾患も含まれているが,結局臨床的には癌か癌じゃないかの二択で十分であることが多いのと,免疫染色を行えばある程度蹴りがつくのでバリエーションとしてはそこまで多くはない.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
* 特に大きな変更はありません.
乳腺の本を参照することって実際問題あんまりなくて,なんといっても取扱い規約と WHO,あとは AFIP といったところ.

こういうことを言うと乳腺を専門とする先生には失礼かもしれないけれども,乳腺病理における疾患のバラエティは少なくて,鑑別診断でポイントとなることは限られている.難しい病変でも免疫染色を行うことである程度は決着がつくこともある.

現実的には WHO 分類及び規約,及び鑑別診断アトラスを見ながら診断をすることが多い.規約と WHO 分類に乖離が生じており悩ましい.

Breast Tumours (World Health Organization Classification of Tumours) (2019)

WHO bluebook はもはや,乳腺腫瘍(のみならず)全領域の基本的な本と言える.今回の改定ではそこまで大きくは変わっていないが,髄様癌が消えてしまい,invasive breast carcinoma の一亜型になっている.Rosen や AFIP もあるにはあるが,少なくとも腫瘍については WHO に従っておけば問題ない.5th series に入ってから,定義や診断に必要な要件などの記載がより鮮明になっている.

Rosen's Breast Pathology (2020)

これも言わずと知れた Rosen の教科書.大したこだわりはないのだが,まぁ細かいことも含めてよく載っている.腫瘍性病変については定義などの問題もあり WHO に軍配があがるが,特に非腫瘍性の病変で悩んだときに使う本ではある.

Biopsy Interpretation of the Breast (2017)

洋書で比較的新しく,かつそこそこ安い本としておすすめ.特にこれと言ってすごいというわけではないのだが,一通り揃っている.洋書でなにか一冊といったとき,ハンディなので専門にするのでなければはじめの一冊としてよいかも.

臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版 (2018)

だいたい,大して内容が変わっていないのに,18 版も重ねて何しているの?という批判はさておき,まぁ実際問題取扱い規約に書かれている内容で十分日常業務は事足りる,という意味では個人的に気に入っている.

浸潤性乳管癌の亜型の変更も結局何が言いたいのかよくわからないし.まぁともかく,個人持ちする必要はないけれども,日本で病理をやっていく上ではやはりこれが基本.しかし,稀な組織型については,WHO 分類を参照してくれというのは投げやりすぎないか?

乳癌 (腫瘍病理鑑別診断アトラス) (2016)

日本語の本としては,結局のところ,規約とこのアトラスで 9 割程度は網羅されている印象.これで書いていないあるいは不十分な記載があれば,腫瘍であれば WHO, 腫瘍あるいは非腫瘍であれば Rosen を参照するというのが大体のルーチン.しかし,規約の前に規約に改訂してしまってどうするんだろうか.また改訂するの?という感じ.




病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...