2021年6月6日日曜日

病理診断を学ぶ 〜 肺・縦隔

2022/01/01 内容を少し見直しました.ほとんど変わりません.

呼吸器関連は結構名著も含めて多いと思われる.本当は全て紹介しておかないと (Dail and Hammar's 等) あれが足りない,これが足りないと言われそうである.

ただ,実際に参照する,参照できる本は限られておりここでは独断と偏見で本を選び掲載する.

Thoracic Tumours: Who Classification of Tumours (2021)

結局今では WHO 分類を除いて腫瘍について語ることができなくなってしまった.もちろん批判の対象となりうることもしばしばあるがそういうのも含めて WHO 分類はスタンダードと言える.病理部に備え付けられていることがおおく敢えて買う必要はないが,持っておいても決して損はない.

Practical Pulmonary Pathology: A Diagnostic Approach: A Volume in the Pattern Recognition Series (2017)

Pattern recognition series は比較的有名で,実は肺が最初に登場している.そして肺病理で成功をしたから?その後続々と登場している.軟部腫瘍は比較的成功している方で皮膚病理はイマイチ(Weedon skin pathology と著者が一緒である).さて,肺病理についてはこの本が世界的に有名で,人気がある.一応買って読んで見て確かに有用かもしれないが,少なくとも胸部腫瘍については WHO 分類が基本となるのでだんだん登場する頻度が少なくなってきている.パターン認識で分類しようという試みは悪くはないが,この本が人気なのはパターン認識というよりも実際の記述が丁寧だからだと思っている.

人気の本で他のシリーズと比べてかなりの頻度で改訂されていたが,ここ最近はしばらく改訂されていない模様.

Diagnostic Atlas of Non-Neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists (2016)

かの有名な Katzenstein による非腫瘍性肺疾患の病理のアトラスで,写真のみならず解説も充実しており教科書的でもある.Katzenstein and Askin's Surgical Pathology of Non-Neoplastic Lung Disease (2006) が有名で,この本を持っている人はだいぶ少ないと思われる.2006 年の本が病態的な記載が中心であるのに対して,こちらの本は実際の診断に即した記載が中心となっている.さすが Katzenstein で,記述自体が非常にわかりやすい.有名な人が書いた本だからおすすめというわけではなく,この本自体が非常によく書けているからおすすめと言える.正直 WHO とこの本だけで肺病理に関してはとりあえず問題ないと思っている.

病理像+X線・CTで一目でわかる! 臨床医が知っておきたい呼吸器病理の見かたのコツ (2015)

現実的に入手可能,という意味においては日本語の本だと実質的にこれ一冊となる.写真が小さいのはしょうがないのだろうか.肺病理アトラスも良いのだがいかんせん古すぎるし,おそらく再販されることもないだろう.

Spencer や冒頭に紹介した Dail and Hammar's 等大御所と言える教科書は少なくないはずであるが,最近の(出版頻度という意味での) activity はあまり高くない.

病理診断を学ぶ 〜 胎盤

 胎盤病理は難しい.見えている現象すべてが必ずしも胎児や母体の異常と相関が付けられる訳ではないから.その上胎盤が提出された時点で治療後の状態であり,特殊な事例を除いて特に還元できることがない.

とはいえ,実務上胎盤病理の診断が求められておりここでは比較的有用と思われる本を紹介する.

胎盤病理アトラス(2021)

著者いわく,10 年は使えるように書いたとのこと.内容もそこそこ充実しており確かに使いやすい.2021 年は胎盤関連の書籍が一気に出版された年.特に和書は品切れになることも少なくないのでほしいと思ったら早めに購入を.

目でみる胎盤病理 (2002)

昔からあるよい本.薄い本ながらよく書けている.おそらく病理部で見ることが多いだろう.今では絶版になっているようで,敢えて高いお金を払って購入するほどでもない(他にも良い本がたくさんある).職場にあればぜひ参照してみてほしい.

周産期医療にかかわる人のためのやさしくわかる胎盤のみかた・調べかた (2016)

どれか一冊と言われたら,確実にこの本をおすすめする.比較的新しい本で実際に診断をする上で疑問に思うようなことはだいたい記載されている.もう少し内容が多くても良いような気もするが,現在日本語で入手可能な教科書としては群を抜いて良い.

Atlas of Placental Pathology (2021)

AFIP の胎盤病理の本.こちらも網羅的でおすすめ.5 版が直近で出版されている.

Pathology of the Human Placenta (2021)

胎盤病理界隈ではおそらく大御所とされている Benirschke による胎盤病理の本.おそらく情報量としてはこれが一番多いと思う.直近で出版されており,今が一番の買い時か.

Manual of Pathology of the Human Placenta: Second Edition (2011)

個人的には一番のおすすめ,なのだがいかんせん出版からかなり時間が経過しているのがとても残念.非常にわかりやすく記載されており,疑問に思うようなこともきちんと説明がなされている.早く第三版を出してほしい!!と思っている.そこらへんを全て併せ飲むことができるのであれば,日本語の本は「周産期医療にかかわる人...」で英語はこの本を買うと胎盤病理の大半は網羅でき,さらに深く勉強したい人は Pathology of the Human Placenta まで行くと良いだろう.

Pathology of the Placenta: A Practical Guide (2019)

比較的最近出版された本.本来は読んでから感想を書くべきなのだが流石にここまでは手を出せていない.ぱっと見良さそう(笑)

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...