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2019年9月23日月曜日

皮膚筋炎 dermatomyositis

診断にあたって参考となるサイト・本:
臨床所見:
  • 上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹),体幹の紅斑,手指関節背面の局面状皮疹 (Gottron 徴候) などの皮疹
  • 10-30% において内蔵悪性腫瘍を合併
  • 多形皮膚萎縮症を残すことがある
  • 厚労省の診断基準あり,この基準に従えば皮膚及び筋生検はいずれも組織所見は診断に必須ではない
組織学的所見:
【皮膚生検】
  • 表度は多少萎縮性,ときに表皮突起が消失 or 平坦化
  • 角層はほぼ正角化性 → Gottron 徴候部では角質増生と表皮肥厚
  • 表皮・真皮境界部ではしばしば顕著な液状変性,リンパ球が表皮・真皮境界部に沿って散見され,メラノファージを伴う.時間経過とともに基底膜は肥厚
  • 真皮浅層では比較的軽度の血管周囲炎,血管拡張.ただし深部の炎症は目立たない
  • 真皮網状層は浮腫状,膠原線維間にムチン沈着
  • 終末期では表皮萎縮,平坦化,液状変性,メラノファージ,真皮浅層の毛細血管拡張 → 多形皮膚萎縮症の所見
【筋生検】
  • 基本的には筋萎縮で,perifascicular atrophy が特徴とされる(筋束がある程度まとまって見られないとそもそも評価できないか)
  • リンパ球浸潤が見られることが多く,CD4 > CD8 である(Cf. 多発筋炎は CD8 > CD4)
鑑別診断:
  • SLE とは臨床的に鑑別するしかない
診断をする上での雑感:Clear cut に診断できる症例は少ない印象.結局もやもやしながら診断している.筋生検でリンパ球浸潤が見られれば,CD4/CD8 くらいはしてもよいかも.

2018年9月25日火曜日

Interface dermatitis - Vacuolar dermatitis

1. Vacuolar dermatitis の診断は結構微妙で,lichenoid dermatitis との区別は必ずしも確定的ではない

Vacuolar dermatitis が何であって,何でないかというのは意外と難しく,結果的には lichenoid dermatitis から炎症細胞を引き算した程度の概念になる(基底層の空胞状変性というのは lichenoid dermatitis でも見られるから).空胞状変性が強くて,接合部が不明瞭になるのがその典型とされる.

そのためそもそも分類として曖昧.だから教科書の方針や病変の時相によってはある疾患は lichenoid だったり vacuolar と分類されたりする(要するに深く考えすぎるな,ということ).また最近の考え方ではこれらの病変は一連のものだという認識が一般的で,だからこそ interface dermatitis という言葉が登場しているのだが,思考の整理として二つに分類されるのが一般的

ちなみにテキストによっては vacuolar dermatitis を一つの亜型とせずに,interface dermatitis with superficial / superificial and deep perivascular dermatitis としているものもある(考え方としては lichenoid change がない interface dermatitis ではどこから炎症がやってくるかというと,結局血流に乗ってこないとやってこれないわけで,perivascular dermatitis は起こりうる).

だから分類自体で細かくあーだこうだいうのは建設的ではない.

2. Vacular pattern を呈する疾患の特徴

多形紅斑 erythema multiforme:なぜか? vacuolar dermatitis のプロトタイプされることが多い.比較的急な発症なので角層は正常であることが多い.vacular dermatitis に分類されるのは炎症細胞がやってくるよりも早く,表皮細胞の壊死が来るからか.ひどくなると,いわゆる Stevens-Johnson syndrome や toxic epidermal necrolysis になる.
慢性円板状エリテマトーデス discoid lupus erythematosus:個人的にはむしろこっちが vacular dermatitis のプロトタイプとした方が良いと思っている.接合部の空胞状変性は特徴的だが,注意してみないとたぶん見逃す.軽度の毛包周囲炎や真皮内のムチン沈着,毛包内の角栓辺りが抑えられればほぼ確定だが,あくまで臨床診断が重要であることを忘れない
皮膚筋炎 dermatomyositis:慢性円板状エリテマトーデスから毛包周囲炎を引き算した様な所見.SLE とは鑑別できない.
薬疹 drug eruption:で見られることもある.好酸球浸潤を伴うこともある.というかそもそも薬疹は多彩すぎて一言ではまとめられないし,いかなるシチュエーションでもありうるので,程度覚悟した方がいい.

3. 結局何がいいたいかというと,,,

結局のところ,interface dermatitis と診断したら,炎症細胞の多寡で大まかに lichenoid なのか vacuolar なのかを分類して,プロトタイプの組織像と同じところ・違うところを意識して所見を記載していいく.そしてそこから+αの所見を探していく.

もしその特徴的な+αの所見が見つからなければ,interface dermatitis, see description で終わらせれば良いし,もし見つかれば(+臨床的な文脈がしっかりしていれば) interface dermatitis, compatible with discoid lupus erythematosus のように書けばよい.

臨床診断で良悪性がひっくりくりかえることは稀だが,日光角化症なんかは違う目で見ていると interface dermatitis に見えてしまうので,その意味でも最後に no malignancy (あるいは悪性所見を認めない.)といった一言を書いて確認する癖をつけることは悪いことではない.

Interface dermatitis - Lichenoid dermatitis

1. Interface dermatitis は幅広い

日本語で言うと接合部皮膚炎.伝統的に?interface dermatitis は vacuolar dermatitis と lichenoid dermatitis に分類されるが,いずれも表皮真皮接合部をターゲットにした変化で,結構似通っていて,どちらかにはっきりと振りにくいことも多い.

しかも interface dermatitis ではない,psoriasiform dermatitis でも interface の変化が見られることもあるので,それを言い出すとどこからスタートして良いかわからなくなる(このことについては多くの本がさらっとこの病変は interface dermatitis だよねと書いてあるが,今見ている病変が interface dermatitis なのか psoriasiform dermatitis なのかわからないことは実は少なくない).

そこでここでは interface の変化が強くて,他の変化があってもよいがそんなに目立たないもの(具体的に言うと psoriasiform な変化や,bullous な変化,deep perivascular dermatitis, pure な vasculitis が目立たないもの)を中心に説明していく.なお perivascular dermatitis はどのパターンでもあってよい.困ったら overlap させて鑑別診断を考える.

2. まずは lichenoid dermatitis から

はじめに注意しておかないといけないことは,組織学的に lichenoid dermatitis が見られることと,臨床像が「苔癬型」であることは必ずしもイコールではないことに注意が必要で,この点は結構多くの教科書でも指摘されている.そこが理解できずにドツボにはまることが多い.混乱させるもととも言えるので,本によっては lichenoid dermatitis という表現自体を嫌っているもの (interface dermatitis with lichenoid infiltrate などと表現) もある.

Lichenoid dermatitis のプロトタイプは扁平苔癬と言われており,扁平苔癬をまずは思い浮かべて細かい違いを考えていく.組織学的に! lichenoid な病変というものは典型的には次の要素を満たしている.

a. 基底細胞の液状変性(あるいは空胞状変性,用語の問題),程度が強ければわずかに水疱様 (Max-Joseph space)
b. 接合にリンパ球が帯状に(広く連続的に)浸潤していること
c. 表皮の有棘細胞に Civatte body個細胞レベルでのアポトーシス)が見られること
d. 顆粒層の肥厚,過角化(≒ ターンオーバーの遅延
e. 真皮浅層の melanin incontinence(≒ 基底細胞の傷害によりメラニンが真皮内に落ちて組織球に貪食された状態)

これらのうち,必ずしも全てを満たす必要はないが,少なくとも a, b を満たしていないものに対して,lichenoid dermatitis と表現する人はほとんどいない

プロトタイプである lichen planus では,外傷やウイルス感染などにより表皮基底層の基底細胞に抗原性に変化が起こり,そこに CD8 陽性 T リンパ球が攻撃をすることで起こると考えられている.Civatte body (apoptosis) は浸潤してきた CD8 陽性 T リンパ球により誘導される.Lichen planus では psoriasis vulgaris とは異なり,遅いターンオーバーで対応すると考えられているので,ケラトヒアリン顆粒をたくさん作る余裕が出てきて,さらに過角化を来す(psoriasis vulgaris と逆のパターン).

とまぁ,とりあえずこの lichenoid dermatitis を頭にたたき込んだ状態で,それぞれの疾患の特徴を理解していく.細かいことは教科書を確認すべし.ここでは悩みそうなところを中心に説明を加えていく.

3. Lichenoid pattern を呈する疾患の特徴

・扁平苔癬 lichen planus:いうまでもなく,プロトタイプの組織像.好酸球浸潤は典型的には見られない.
・固定薬疹 fixed drug eruption: 臨床経過がしっかりしていないとつけにくい.vacular change のパターンのこともある.好酸球浸潤が見られることが多い.急性に発症するのか?角層は正常なことが多い
・光沢苔癬 lichen nitidus:通称カニの爪.有名だがなかなか見ることはない.
・GVHD:Vacuolar dermatitis に分類する本もある.大体において,造血幹細胞移植など文脈が確立しているが,薬疹ですか?GVHD ですか?といわれてもたぶん答えられないことが多い(GVHD では好酸球は通常ほとんど見られないことから,もし好酸球浸潤が強ければ薬疹の可能性が高いね、という程度).もう一つ,14 日以内に GVHD が見られるのは稀.急性だと薬疹と鑑別が難しい(というか厳密には無理).慢性だと強皮症と鑑別が難しい.経過を見て再生検で診断がつくこともある.
・Mucha-Habermann 病(あるいは急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 PLEVA):好中球浸潤を伴う部分的な錯角化が見られる.
・苔癬型薬疹 lichenoid drug eruption:錯角化が見られやすく,これがあれば扁平苔癬よりも苔癬型薬疹と言いやすい.好酸球浸潤が少しでも見られたら苔癬型薬疹と言いやすい.
線状苔癬 lichen nitidus:汗腺周囲の炎症細胞浸潤が見られる.
悪性腫瘍:悪性黒色腫や菌状息肉症,基底細胞癌,日光角化症辺りは lichenoid pattern を示してくるので,要注意.

皮膚生検の謎

apapapa 先生からの "interface dermatitis" がなぜそう分類されているのか,病態生理学的な理由を含めて教えてほしい,というお題.答えるが,とても難問かつそもそも 1 - 2 回の投稿で解決できる問題でもないので少し分けて説明する.

まずは炎症性皮膚疾患の皮膚生検を評価するときの根本的な問題点から.

1. 皮膚生検の謎

多くの病理医は皮膚生検は苦手で,特に炎症性皮膚疾患は苦手という人は多い.わかりやすい説明がウリのみき先生の本ですら読んでいてよくわからないという人は少なくないはず.どどたん先生もそんなに得意という訳ではないが,なるべくわかりやすく考えてみる.

わかりにくいとされる一番の原因は炎症性皮膚疾患そのものが遺伝子変異が主体である腫瘍性疾患と異なり,はっきりとした原因は不明,あるいは組織像との対比がしにくく,病態生理学的な機序に基づいた説明が難しいと言うことだろう(みき先生の本ですら病態生理学的な記載は乏しい).実際多くの教科書は組織パターンと鑑別診断に終始している.読者としてはなぜそれが起こるのかという本質を知りたいのに,そうじゃないよくわからない?組織学的所見に振り回されている.

ここは炎症性疾患の宿命とも言える.例えば,肺病理でも器質化肺炎の器質化と細菌性肺炎の慢性化した器質化は同じであり,生検だとしばしば区別がつかない.なぜこういう変化が起こるかということを完璧に説明できないのは,研究会などでも意見が完全に異なってくるといったことにつながってくる.

もう一つ原因として考えられるのが用語や分類が混沌としていること.Civatte body は colloid body やアポトーシスなどの別名があって教科書によって書き方が微妙に違う.しかも分類自体も Ackerman の分類をベースにしているのはみんな同じだけれども,WHO 分類などの統一した分類があるわけでもなく,それ自体も混沌としている.

さらに炎症性疾患の疾患の entity の多くは臨床的な所見を中心にまとめ上げられており,組織学的所見が overlap することはしばしばある.そのためにそもそも我々病理医が診断をつけること自体が困難なことも多い.

と悩ましい要因がつまりまくっているのが現状.それでも皮膚科医は生検をしてくる...

2. では炎症性皮膚疾患の皮膚生検に対して,病理医はどのような態度で考えたらよいのか

以上から皮膚疾患の診断には

a. 組織学的所見だけで診断がつくもの(腫瘍の多くはそう)
b. 組織学的所見と臨床像を足して診断するもの
c. 組織学的所見が確かに有用ではあるが,確定診断自体は別の検査が必要なもの

があり,その中で,炎症性皮膚疾患はほぼ b or c に属すると言える.例えば接触性皮膚炎は時期にもよるが,組織学的には spongiotic dermatitis であり,何かに対する接触歴があるという情報を得て初めて接触性皮膚炎という診断が確定する.我々がすべきことは spongiotic dermatitis の所見を記載することで,あとは臨床医が考えること.

そしてなぜだかはわからないのだが,皮膚疾患を来す原因はたくさんあるのに対して,皮膚自体は限られたパターンで対応しようとしている.裏を返せばパターンを認識できさえすれば,臨床像と照らし合わせ,それなりの妥当な答えが出てくる,かもしれないが,我々がすべきことは少なくとも要求されていることは皮膚検体をきちんと評価して拾うべき情報をもれなく拾い上げて,臨床医が提示した鑑別診断に対してコメントすること.

ちなみに皮膚病理で病態生理学的な所見が日本語で比較的しっかり記載されているのは

皮膚病理のみかた(表皮)
皮膚病理のみかた(皮膚の炎症・膠原病・血管炎)

なんだけど,この本はおそらく中古ぐらいでしか手に入らない上に,編集が雑で写真と本文が離れていたりして読みやすいとは言い難い.しかし,この二冊でこれから述べることもこの本を大いに参考にしている.本当は三部冊の本だったはずだが,Ken Hashimoto 先生が書かずに?そのまま亡くなってしまい,おそらく出ることはないと思う.とても残念.

2017年12月27日水曜日

病理診断を学ぶ 〜 皮膚

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
がとりあえず大きな変更はありません.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
* 日本語の本を中心として新しい本がどんどん出版されていますが,正直全て買う必要があるのか微妙な感じです.著者が結構かぶっていたりするので,実際に手にとってみて良さそうなものを買ってみると良いでしょう.

皮膚病理は難しい,というか病理医が細かく知る必要はない気がする.という元も子もない前提をさしておいて,幾つか本を紹介してみる.皮膚病理は結構たくさん本があって全て紹介していると発散しそうなので,幾つかに絞って,かつ洋書は大御所のものに限ることにする.

まず最初の第1歩としては,,,

改訂新版 皮膚病理学 (2012)

この本は 2012 年と書いてあるが,2000 年以前のかなり古い本.出版元が変わってカバーだけ差し替えた感じだけど,本質的には変わっていない.皮膚科自体が古い用語を好む領域なので(多分幾つかあると思うのだが,免疫染色などよりも形態学的診断が好まれるから,とか炎症性皮膚疾患などは遺伝子異常等とはあまり関連がないことなどか?→あまり関係がない,というのはちょっと言い過ぎた.関係があっても組織学的診断には反映されにくいとしておこう),実際問題新しい概念というのはそんなに登場していなくて,この古い本でも有用.申込書の臨床診断に書いてある診断名を理解できない人は少なからずいるはず.そういう時に便利.

皮膚科サブスペシャリティーシリーズ 1冊でわかる皮膚病理 (2010)

はじめに言っておくと,決して一冊では分かるようにはならない.この本を嫌っている人が少なからずいて,結構重要な疾患にもかかわらず,鑑別診断でわずか数行コメントするに留まっているものがそこそこあるということ.まぁ写真もきれいだしきちんと載っているので結構有用だとは思うのだけれども,一冊で十分というのははっきり言って言い過ぎ.まぁ色々載っているので便利ではある.

実践皮膚病理診断 (2017)

この本は 2017 年に出たばかりの比較的新しい本.この本の良いところは炎症性皮膚疾患の分類法.炎症性皮膚疾患については Ackerman (surgical pathology じゃない方)のアルゴリズムが有名だけれども,superficial perivascular dermatitis とすべきか spongiotic dermatitis とすべきかとか,悩むことがしばしばあって,このアルゴリズムは結構使いにくい.著者らは,ハイブリッド診断として,どこの所見から入っても診断にたどり着くように工夫をこらしている.もちろんこれが全て,というわけではないのだが,なかなかわかりやすいと思う.比較的新しい診断アルゴリズムで結構おすすめ.

皮膚病理組織診断学入門(改訂第3版) (2017)

この本はとても有名で,3 版になってから一回り大きくなった.この本は結構昔からあるので愛用している先生は多いのでは?鑑別診断が丁寧に書いてあるので取っ掛かりがつかめたら,そこを頼りに鑑別がしやすい.ただ,謎なのがなぜ病名がアルファベット順にしているのか.ただ,実際にはこれ,調べようとするとき意外と分かりやすかったりする.

みき先生の皮膚病理診断ABC (1) 表皮系病変 (2021)
みき先生の皮膚病理診断ABC (2) 付属器系病変 (2007)
みき先生の皮膚病理診断ABC (3) メラノサイト系病変 (2009)
みき先生の皮膚病理診断ABC (4) 炎症性病変 (2013)


みき先生の本の素晴らしさは特に言及する必要はないと思う.まぁこんなにありふれた疾患に対して鑑別診断も含めて丁寧に記載している事自体がすごいということ.ここで細かく説明するよりもとりあえず本を手にとって見て欲しい.何かが変わるはずだ.ちなみに表皮系病変から update されている.


皮膚病理について,これ一冊でという比較的まともな本が何冊も登場してきた.特に付属器腫瘍の本は網羅的でよく書けている.病理診断リファレンスも網羅的だが,腫瘍・非腫瘍を一冊で網羅しようとするのはなかなか難しいように思う.いずれもとてもおすすめの本


確かに良さそうに思うのだが,正直皮膚病理の本が何冊もあってもしょうがない.ここまで買う必要があるのかという疑問も出てこなくはない.

皮膚科医をターゲットにしているせいもあって,和書はほんと挙げればキリがない.気が向いたらまた追記することとして洋書を数冊提示して終わることにしよう.

WHO Classification of Skin Tumours (Who Classification of Tumours: International Agency for Research on Cancer) (2018)

腫瘍の分類においては WHO 分類を無視することは出来ない.Keratoacanthoma などの分類で日本とは考え方が異なる部分もあるが,原則的 WHO 分類に従うべき.

Lever's Histopathology of the Skin (2014)

リンクを貼っておいていうのも何だが,Lever は少し読みにくい.他の本に比べて写真が少ないので何を言っているのかがわかりにくいことがある.ちなみに皮膚科の大御所の先生たちは Lever 自身が書いた版を使って勉強しろと言っている.古本で amazon に転がっているので興味のある人はどうぞ.

・McKee's Pathology of the
Skin (2019)

分子生物学的なことなどを含めて,おそらくマッキーが一番詳しいと思っている.写真も大きく内容もとても詳しいので,皮膚病理の最後の砦として調べ物をするには最適.ちなみにマッキー先生はもう引退している.

Weedon's Skin Pathology (2020)

現時点でどれか一冊洋書をと言われると,この本がお勧め.これは一冊にまとめているので重たくて腕が抜けそうになるが,情報量は当然多い.ちなみにどの本もそうで,特に炎症性皮膚疾患はその傾向が強いけれど,著者によって分類方法が結構変わってきたりする.どれが正解というのもないので別にいいんだろうけれども,非専門家としてはどれか一冊に軸足を置いておいたほうが良いと思う.Weedon, Mckee もどちらも最近改訂されており,いずれか一冊で十分だし,皮膚病理が好きであれば両方とも持っておいても損はない.

Inflammatory Dermatopathology: A Pathologist's Survival Guide (2016)

炎症性皮膚疾患の診断の仕方を記載した良書.コンパクトで著者いわく週末かければ読めると言っているが,non-native の日本人としてはまず週末だけでは集中力が持たない.この本は結構現実的なラインで話を勧めている.Spongiotic dermatitis と psoriasiform dermatitis は時として鑑別が難しくどちらとしても良い(所見をきちんと記載すること)など現実的なことを言ってくれている.Sample report が秀逸.Cleveland Clinic ではこういうふうに書いているのかというのはとても参考になる.Clinicopathologic correlation is recommended. がやたらと多いのは気になったけど笑.


皮膚の軟部腫瘍の比較的数少ない本.High-Yield series と同じスタイルの本.皮膚軟部腫瘍に関する本は非常に少なく,貴重な本.皮膚軟部腫瘍は皮膚 WHO bluebook の他に軟部腫瘍のテキストにも記載がある.

あとは個人的な趣味に走る.

Pearls and Pitfalls in Neoplastic Dermatopathology (2016)
Pearls and Pitfalls in Nonneoplastic Dermatopathology (2016)


この本の良いところは鑑別診断について丁寧に記載しているところと,病変の典型的な所見と経時的な変化を細かく書いてあるところ.母斑などは経時的に呈する像が変わることがよくあるけれども,その所見も丁寧に記載されている.


2017年6月21日水曜日

皮膚生検のやっつけ方〜皮膚病理総論

   改訂履歴    
2017/06/21 初版  
【はじめに】
○ 皮膚病理は難しい
・皮膚病理は臨床所見と合わせ判断する必要があって,病理組織単独で病名を確定すること自体が困難
・腫瘍性疾患は病理のみでの比較的評価しやすいが,炎症性皮膚疾患は臨床的な背景がなければかなり厳しい
・なぜ難しいのかというと,ある組織像を呈する臨床病型が複数あって,逆にある臨床病型が複数の特徴的な組織像を呈することが往々にしてあるため,一対一対応ができない
・多対多対応というのは炎症性皮膚疾患はもとより,腫瘍性疾患でも Bowen 病 vs Bowenoid papulosis などあり,注意が必要

○ 実は病理医にとって皮膚病理を評価することはそこまで求められていない
・皮膚科医は基本的に自分たちだけで標本を見ている
・皮膚科医は病理医の書く病理診断のレポートを参考程度にしか見ていない
・たまに「生検→切除」の流れで,切除検体の病理検査の申込書で,生検診断とは違った診断名で出てくることがある
・そういう不一致例でも特に病理側に話が来ることはない

○ 病理と皮膚科とのコミュニケーション
・皮膚科医との密なコミュニケーションが取れていない環境下では踏み込んだ診断はやめた方がよい
・皮膚科医は病理医の診断が自分たちとの診断が異なっていて自分たちの診断に自信があれば,その診断で通し,もし自信がない or 分からなければ,病理医の診断を採用する
・病理診断は臨床診断に依存していることが多いのだが,生検時点で検体申込書に適切な情報が記載されているとは限らず,我々としてもその情報だけで適切な診断ができるとは限らない(もっというと明後日の意味不明な臨床診断で生検してくる皮膚科医もいる)
・そして,最終的に間違っていた場合にはカルテに「病理検査では●●であったためこうしたが…」という風に病理があたかも誤診したかのような書き方をされる
・他にも学会発表とかでも彼らは勝手に発表していてこっちには一切話しが来ないとか,どどんぱせんせは皮膚科医に対してはとても否定的なイメージを持っているのだが,まぁ愚痴はこれくらいにしておいて要点を次で述べる

○ 炎症性皮膚疾患は所見診断が基本,腫瘍性病変でも書き過ぎは注意
・皮膚生検のやっつけ方では基本的に臨床診断をあまり重視せず,所見診断を基本にする
・ある種の比較的特異的な所見については他に疑うものがほぼないような状況下ではない限り suggestive of, compatible with などを用いるが,臨床医にとってはこれらの表現もいつの間にか取りされてしまうので仕様にあたっては細心の注意が必要
・炎症性皮膚疾患は疾患特異的といえる所見がないことが多く,所見診断で今病変がどのような状態にあるのかについて言及
・腫瘍性病変もある程度臨床像(年齢,性別・部位)が合えば,はっきりと書いても良い

【皮膚病理を学ぶ前の段階】
 ○ 湿疹三角は一応大切な考え方
 ・湿疹 eczema = 皮膚炎 dermatitis でかなり広い概念で,どどんぱせんせいも正直どこからどこまでが湿疹として扱ってよいのか悩む
 ・湿疹三角は一応基本と言われているが,あまり皮膚病理を読む時に重視されていない気がする
 ・別に皮膚科診療をするわけではないので特に知る必要はないが,湿疹というものが「紅斑」から始まって「膿疱」で極まり,治癒あるいは「苔癬化」(≒皮膚の肥厚,いわゆる扁平苔癬とは別物)で慢性化するという流れは知っておくと色々と便利

 ○ 皮膚科で使われる言葉を知るべし
・皮膚科の言葉遣いはとても独特で,初学者が覚えるのは結構辛い
・もっと簡単な言葉遣いにしてほしいけど,もうそうなっている以上はどうしようもない
・全てを最初から覚えるのは無理で,出てきた時に逐一確認するのが現実的

○ 皮膚科で使われる用語〜平坦な病変
・斑:皮膚面と同じ高さの病変
・紅斑:血管拡張による.圧迫により色が消退
・紫斑:出血による.圧迫により色が消退しない
・色素斑:赤血球以外により色が濃くなる(多くはメラニン色素)
・白斑:メラニンの減少により色が薄くなる

○ 皮膚科で使われる用語〜隆起性病変
・充実性:丘疹(<0.5 cm),結節(≧ 0.5 cm, < 3 cm),腫瘤(≧ 3 cm)
・非充実性:
  表皮下までの液体を入れる腔:水疱(Cf. 0.5 cm未満は小水疱),血疱(含む血液),膿疱(含む膿)
  真皮内で液体を入れる腔:嚢腫(=嚢胞だが膿疱と混同しやすい),膿瘍(含む膿)
・局面:径 2 cm以上の扁平隆起性病変(Cf. 0.5-2 cm 小局面, <0.5 cmは丘疹)
・苔癬:丘疹が集簇(Cf. 苔癬化局面とも言える)終始その形を保持して他の発疹に変わらないもの
・疱疹:小水疱あるいは小膿疱の集簇
・膨疹:24時間以内に消失.ほぼイコールでじんま疹を指す用語
・瘢痕:皮膚損傷後 → 線維化で正常皮膚と置き換わったもの

○ 皮膚科で使われる用語〜陥凹性病変
・皮膚欠損:びらん(表皮・粘膜上皮まで)の欠損,潰瘍(真皮・粘膜固有層以深)の欠損.Cf. 外傷によるものは表皮剥離
・亀裂:真皮に及ぶ線状の裂隙(組織欠損を伴わない)
・萎縮:皮膚の退行性変化,菲薄化により陥凹

○ 皮膚科で使われる用語〜その他
・痂皮:滲出液や血液がびらん・潰瘍面に付着し乾固したもの(血液性のものは特に血痂という)
・鱗屑:堆積した角層が大小の薄板となって付着するもの
・掻痒症:掻痒のみで他の症状がないもの
・紅皮症:紅斑と鱗屑が皮膚の90%以上に及ぶ状態

○ 人名の付いた,比較的特徴的な徴候名
・皮膚描記症:皮膚を擦った後,皮膚を擦った通りに出現するじんま疹様の膨疹.物理的じんま疹の一型(正常人の5%程度が示すこともある)
・ダリエ Darier 徴候:病変を擦ったときに,その部分が膨れる現象.例 色素性じんま疹すなわち肥満細胞症
・ニコルスキー徴候:中毒性表皮壊死剥離症およびある種の自己免疫性水疱性疾患の患者で皮膚を優しくずらすように圧迫するときに生じる表皮の剥離
・アウスピッツ徴候:乾癬の局面から鱗屑を剥がした後に点状の出血を生じる現象
・ケブネル現象:外傷(例,引っかく,擦る,損傷)を受けた部位に病変が生じる現象.例 乾癬(+扁平苔癬)で見られる現象

15 年目の悲劇

# 卒後は 17 年目,病理は 15 年目 自分は 2009 年に大学を卒業しているので,2026 年 4/1 現在だと,卒後 17 年目になる.卒後 15 年目のとか,20 年目の,みたいなタイトルの本を見るが,その節目を超えてさらなる大台に突入してしまった感じはある. 初期研...