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2018年9月23日日曜日

軟部腫瘍の考え方 2

1. 軟部腫瘍には良性,悪性,境界悪性(2 種類)の大きく 3 種類の分類がある 

WHO 2012 では骨軟部腫瘍は benign, intermediate (locally aggressive), intermediate (rarely metastasizing), malignant の 3 (あるいは 4 )種類に分類されている.読んで字のごとくで,局所浸潤があるから中間悪性の場合と,稀に転移するから境界悪性の場合があることに注意.

この分類はそのまま臨床的なフォローにつながるため,臨床医や病理医からはわかりやすいとおおむね歓迎されている(もちろん,えっこれが境界悪性なの??とか,これは悪性じゃないでしょ〜という批判はあるけどそれは仕方ないこと) .もっともこの分類を知らないい臨床医も山程いる.まぁしょうがない.何気なく取ってみたら軟部肉腫だったなんてこともあるわけで.

我々は組織型を同定するという作業をしていく中で,実質的にこれが良性なのか,悪性なのか,中間悪性なのかを分類していることになる .

2. FNCLCC 分類を記載する 

http://immuno2.med.kobe-u.ac.jp/20130627-3575/
腫瘍の分化度,核分裂像,腫瘍壊死をスコアリング化し,Histological grade を計算し求められる .腫瘍専門の整形外科医以外は多分知らないと思う.基本的には生検で評価し,その後の治療の参考に資するためのものだが,腫瘍壊死は生検だけだと評価不十分になるため,手術検体でも同様に評価したほうが良い.

FNCLCC 分類を見るとわかるけど,腫瘍の分化度はそのまま組織型とイコールで分類されているので,単に悪そうとか良さそうで分類しない,あくまで組織型の同定が前提となっていることに注意.

3. 良悪性と細胞異型は必ずしも相関しない

病理総論の基本的な考え方からすると細胞異型が強い=悪性ということになるけれども,軟部腫瘍についてはその考え方を捨てたほうがいい.明らかに悪性といえるのは,異常核分裂像が見られた場合のみで,それ以外は常に良性の可能性を完全には否定しきれない .よって常に組織型を頭に組織型を念頭に置きながら鑑別診断を行っていく必要がある

とはいえ必ずしもという程度で,あまりガチガチに考えてもしょうがない.

4. (再掲)年齢,性別,部位はとても重要な指標 

例えば異型脂肪腫様腫瘍 atypical lipomatous tumor を例に取ると,,, 異型脂肪腫様腫瘍が中学生くらいに発生するのはとても不自然.多くは中高年に発症する.若年者に見られた場合はよっぽどの根拠が無い限りはつけない .性別も重要で,男性あるいは女性のどちらかに起こりやすいことはあるけど,これは他の項目については優先度は下がる

部位はとても大切.異型脂肪腫様腫瘍が皮下の浅いところに出来ることは極めて稀で,もしそういうところにできた病変に対して異型脂肪腫様腫瘍という病名をつけようとしたときは間違えていることが多い(よくあるのは spindle cell / pleomorpic lipoma という良性病変と間違えていることが多い).原則異型脂肪腫様腫瘍は深部(後腹膜や筋内,縦隔など)に発生するものなので,表層に病変が出現したときには否定から入るべき

5. 部位は浅いところと深いところに分ける 

例外はたくさんあるけれど(DFSP, 滑膜肉腫,MPNST, myxofibrosarcoma etc),原則良性腫瘍は表層よりに,悪性腫瘍は深部よりにある.

表層と深部を分けるのは色々言われているが,1つは筋膜で筋膜より表層側(表皮,真皮,皮下脂肪織)を表層と考え,筋膜以深を深層とみなすことが多い.これは診療科の境界ともいえ,表層側であれば皮膚科が扱い,深層側であれば整形外科が扱うという暗黙の了解がある.

よって申込用紙を見た時に,病変がどの位置にあるかを大まかに知ることによって良悪性の目安がつく .もし書いていなければ臨床医に問い合わせるべきだし,どどたん先生は CT や MRI を見ながら鑑別している.当然臨床医も部位を記載すべき.

6. おすすめの本

いろいろ本はある.もちろん Weiss の textbook でもいいし,WHO でもいいし,Diagnostic pathology でも biopsy interpretation でもいい.

どれか一冊と言われたら,今だと次の本を勧める(これは現時点では,という話でもちろん新しいいい本が出れば話は変わってくる).

Practical Soft Tissue Pathology: A Diagnostic Approach E-Book: A Volume in the Pattern Recognition Series

有名な pattern recognition series の一冊だが,この本の良いところは,pattern recognition はさておき,疾患の臨床像と組織学的,分子生物学的所見と鑑別診断が丁寧に書いてあるところ.何だそれだけかと思うかもしれないが,変に突出しているよりも普通に普通がきちんとできることのほうが実はとても大切.

軟部腫瘍の考え方

そういえば,そろそろ学生に対する講義を頼まれそうな気がしてきたので,ちょっと予習を兼ねて,まずは軟部腫瘍に対するみかたから始めて見る

1. 軟部腫瘍に対するみかた

とある腫瘍整形専門の臨床医いわく「僕たちは特別なことを求めているわけじゃないのです.Round cell か spindle か,良性か悪性か(あるいは中間悪性か)の 4 つあるいは 6 つの matrix のどれに入るかを教えてくれたらそれでいいんです.」という.

まさにそのとおりなのだが,それが難しいという話.そして結構な割合で間違える.実際この腫瘍細胞が紡錘形なのか,円形なのかの判断ですら迷うことがしばしばあるので.

2. それでも円形・紡錘形からスタートする

やはり,軟部肉腫を考える上で,円形なのか,紡錘形なのかというのははじめの分岐点としては有用だと考えている.あまりにも広い鑑別診断の中でどのように泳いでいくかというかと考えるとはじめの第1歩として大きく分ける必要がある.

円形か紡錘形かどちらにも見える場合,楕円形などは,自分はとりあえず紡錘形細胞に分類した上で,鑑別診断に合わなければもとに戻ってまた考え直す.

3. どういう構築を作っているのか,及びどういう基質を産生しているのか

これは普通の上皮性腫瘍の診断と同じことなのだが,腫瘍細胞がどのような構築を作っているのか及び,産生している基質の種類で腫瘍の組織型はだいたい決まる.

基本的なことなんだけど,おそらく軟部腫瘍のすべての組織型を熟知している人はほとんどいないはずで,多くは組織像を見てからテキストを見ながらそれっぽい組織型を判定していくというプロセスを経ているはず.そのときに構築,産生する基質をきちんと整理しておかないと見た目だけでとんでもないところにたどり着いてしまう.

4. 類骨?膠原線維?

日本の骨軟部腫瘍研究会は確か類骨を考える会みたいな名前だったように,類骨と膠原繊維の鑑別は難しい.いずれも軟部肉腫の作る基質だけど,どちらももとは同じ物質なので,見た目だけで判断することになる.

肉腫で類骨と判断すれば osteosarcoma になるし,膠原線維と判断すれば(他にはっきりとした分化がなければ) undifferentiated pleormophic sarcoma になる.しかし,ここらへんは専門家でも意見が分かれることがしばしばあるので,あまり気にする必要はない.

基本的な考え方は腫瘍細胞の周りを取り囲むように骨のような領域性の構築を作っていれば類骨と判断するが,微妙な症例が多くて,結局判断が迷っていることが多い.

5. 臨床情報はとても重要

腫瘍によっては好発年齢,部位が決まっている.もちろん例外もあるが,好発年齢,部位から外れたものについては診断を今一度考え直した方が無難.

例えば low grade fibromyxoid sarcoma は若年に起こりやすいし,myxofibrosarcomaは高齢者に起こりやすい.年齢の感覚を持てればよいのだが,そうでなくともテキストを振り返る際に必ず臨床情報はチェックしたほうがよい.

6. あまり深いことを考えずにとりあえず免疫染色を出す

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24111893

ミエッティネン先生が言っているように,軟部腫瘍の免疫染色はある程度網羅的に出すべきである.よく,HE 染色だけを見てこうだろうという目星をつけて限られた項目だけを出して診断している人もいるけど,pertinent negative な所見も含めて診断する必要がある.

つまり,AE1/AE3, EMA, Desmin, αSMA, CD34, S100 の 6 項目を提出すると,多くの軟部腫瘍は何かしらかかってくると言われている(いくつか組織型を思い浮かべてみるとわかるけど,大体網羅されている).

例えば synovial sarcoma は AE1/AE3 が陽性になることが想定されるし,melanoma や MPNST は S100 がひっかっかる可能性がある.

軟部腫瘍は組織型自体が多い上にバリエーションも多いので,ある程度網羅的な検索を心がける.

7. 分子生物学的な手法は専門施設に任せるしかないあるいは諦める

ある程度は免疫染色で戦えるようになってきたが,それでも免疫染色の抗体をすべて持っているわけではない.さらに FISH や PCR となると,現実的にできないことが多い.

軟部腫瘍が多い施設はそうだが,少ない施設ではこれらのプローベを揃えることすら難しいわけで,そういうときはあまり無理をしない.そのためにコンサルテーションシステムがあるわけでそこに頼るのも一つ.

そして,もう一つ重要なこととして,臨床医がどの程度必要しているかということ.軟部腫瘍で化学療法のメニューが決まっているのは rhabdomyosarcoma, Ewing sarcoma だけで,それ以外は(現時点では!)どのような組織型であろうと化学療法のメニューはだいたい一緒(最近は特定の遺伝子の転座あるいは増幅に対して特異的な治療法が開発され始めているので,今後はわからない).

なので,最初の臨床医の話に戻るけれども,明らかな悪性とみなされる(atypical mitosis があるなど)ものであれば,その情報を伝えて終わりにするのも一つ.

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# 卒後は 17 年目,病理は 15 年目 自分は 2009 年に大学を卒業しているので,2026 年 4/1 現在だと,卒後 17 年目になる.卒後 15 年目のとか,20 年目の,みたいなタイトルの本を見るが,その節目を超えてさらなる大台に突入してしまった感じはある. 初期研...