2018年2月28日水曜日

病理診断を学ぶ 〜 肝胆膵

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしましたが,特に変わりありません.

AFIP 以外に膵臓病理として独立した本がないというの実情で,胆道系も同様の状況.やはり WHO bluebook の充実っぷりが半端なく,結局その他の本はそれを補うような立ち位置にならざるを得ない.肝については非腫瘍性疾患もそこそこの位置を占めるがそれは AFIP や biopsy interpretation series などが有用かと思われる.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
肝胆膵の本でなかなかいい本はない気がする,という元も子もないことを言ってもしょうがないのだけれども,いくつかある程度読める日本語の本を紹介したあと,洋書を何冊か見てみることにする.ちなみに,肝病理の本というのはあっても,胆膵系の本というのはかなり少ない.膵臓だけで一冊というのはなかなか難しいらしく,どうしても肝胆膵の中の一冊という扱いになるらしい.

洋書については foundation in diagnostic pathology series とか,amirsys のシリーズとか色々出すぎていて混沌としているので,とりあえずこれは!と言える本だけ取り上げる.

Digestive System Tumours (World Health Organization Classification of Tumours) (2019)

WHO は基本.最近改訂されており比較的参照しやすい.

臨床に活かす病理診断学 消化管・肝胆膵編 第3版(2018)

値段もそこそこで手頃な本.肝胆膵の本というわけではないけれども,比較的わかりやすく書いているため,手始めに読む本としてはなかなかよい.また久しぶりに読み直してみたが,改訂するたびに,おそらく読者の意見を汲み取っていて,いわゆる臨床医(あるいは病理の初心者)が求めている本になっている.病理診断の基本は消化管であるので,病理自体をこの本から始めるのも意外とベストかもしれない.ベストセラーなのか,日本の医学書にしては結構頻繁に改訂している印象.当然だが分量的には少なく,細かく調べるには不向き.

この本に限らずだけど,消化管,肝胆膵は消化器内科医の需要が結構あるらしく,結構いろいろな本が出ている.良く言えばとっつきやすい,まぁ catchy な表面的な本が多くなっている.

肝病理標本の読み方(2001)

かつてはこの本が肝病理の本としては gold standard と言われていた.多分も売っていないと思うし,流石にこの本じゃなくてもいいようなきがするが,実際の病理診断レベルで言うと,世の中は意外と先には進んでいないようで,この本でも結構事足りることが多い.薄いので,一読するのはおすすめ.多分一読しただけでは理解は難しいと思うけど.


全陽先生による,比較的最近の肝生検のテキスト.少し項目建てが独特で項目に到達するに苦労する.比較的よく書けているテキストだとは思うが,スッキリしない感じもしなくはない.Amazon では入手不可能になってはいるが,書店ではまだ入手可能である.

肝臓を診る医師のための肝臓病理テキスト (2013)
胆道疾患を診る医師のための胆道病理テキスト (2015)
膵臓を診る医師のための膵臓病理テキスト (2020)

日本語で書かれた,肝・胆道系・膵臓のテキストで比較的まともに記載されている本.もし一冊買うとすればこのどれかを買っておけばとりあえず大丈夫と言えるだろう.もっとも英語の本の方が圧倒的に充実しているので,日本語の本を持っておく必要があるのかと言われるとなかなか難しい.

MacSween's Pathology of the Liver, 7e (2017)
Odze and Goldblum Surgical Pathology of the GI Tract, Liver, Biliary Tract and Pancreas (2022)
Surgical Pathology of the Liver (2017)
Biopsy Interpretation of the Liver (2021)
Scheuer's Liver Biopsy Interpretation (2020)

MacSween は昔から有名だけど,実はというほどでもないけど,読んだことないのでよくわからない.Odze は消化管と合わせて一冊になっていて,肝胆膵もそこそこ詳しいので,どれか一冊持つとすればこれがおすすめ.そして肝臓だけに限るけど,surgical pathology of the liver と biopsy interpretation of the liver がとてもおすすめ.肝臓の腫瘍で悩むことよりも非腫瘍性疾患で悩むことが多くて,しかも検体が提出される頻度が少ないことと合わせて結構苦手意識がある人は多いと思う.もちろん腫瘍も網羅されているけれど,この本を書いた人たちはわかりやすく説明することにとても長けている.学会会場などで見かけたら騙されたと思って手にとって見るのがおすすめ.

基本的には上記以外の本で言うと WHO bluebook や AFIP (非腫瘍性疾患を含む)がおすすめである.




病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...