2017年11月11日土曜日

病理解剖における手抜き?

# とりあえず

ブログには普段の twitter での tweet の中で,少し内容を掘り下げて話をしようと思っています.

とあるブログ http://mitochondrion.jp/diary2015.html

の中の

2015/06/28 臨床医による病理部批判

の記事.他にも夜間であろうと病理解剖をすべきという意見もある.

# あまり頑張りすぎるのはいくない...

確かに夜間でも亡くなった直後に病理解剖をした方が,症例としてはキレイではある.
(「キレイ」というのは医師以外だといまいちピンとこないかもしれないが,例えば手術が上手であったりとか,症例として典型的,教科書的であったりとか,そういうものを指していて,清潔不潔という意味ではない)

固定状態もよいし,ご遺体を家族に返すという意味では待ちが少なくなる(これは実際は少し状況が複雑で,家族としても急にご遺体を返されると急遽葬儀会社を探さないといけなくなるため,時間的猶予があった方がかえって良かったりすることもあるので何とも言えない).

>「土曜日の晩に入院した患者を、月曜日の朝まで待たせてから診療する」

土日夜間の病理解剖をやらないということは,上記のような事だ,という主張も解らなくはない.ただ,臨床医による手術と病理医による病理解剖はいろいろと状況が違うので一緒にしないでほしいというのが正直なところ.

病理解剖の場合,助手は原則一人で,多くて二人程度.それに比べて手術では看護師から麻酔科医まで様々な職種がサポートにつく.

あと個人的な感覚で申し訳ないけれども,最終的な標本の状態については,なくなってからすぐ解剖するのとある程度時間がたってから解剖するのと必ずしも大きな差があるとは言えない.もちろん冷蔵庫保管で腐敗を防ぐことは当然のことだけど.多分死亡するまでに低血圧の状態が続いたりするとすぐに解剖しても意外と変性が強いことが多い.

臨床医が不満に思う点は重々承知しているし,まぁレポートが外科材料に比べて後回しになってしまうことも多少は仕方ないというか申し訳ない,という言い訳に走ってしまうけれども.

# 病理解剖は病理の仕事からすると緊急手術の扱い

現在病理解剖の依頼はかなり少なくて年間 20 例を切る病院が多いと思う.そうすると昔と違って時間の振り分けとして,定期手術的な枠を抑える感覚から,緊急手術的な枠の扱いになってしまう.

つまり,病理解剖がないのが通常業務であって,病理解剖の依頼があればエクストラの業務になってしまう.緊急手術と違って,病理解剖の後には切り出し,標本作製,診断といった,その後の業務の方が多い.でもそれをルーチンの時間には組み込まれていなくて,それを暇な時間にやろうとすると,どうしても遅くなる.なかなか暇な時間なんてつくれないし.

これを夜間にやると確実に昼間の仕事に影響が出る.当直を経験してきたどどたん先生から言わせると,夜間の病理解剖は緊急オペなみにきつい.これをした後に翌日通常業務をするのはかなりつらい.

# 毎日待機する?

百歩譲って臨床医もやっているから仕方ないとするのであれば,毎日あるいは毎週末待機するのか?という問題になる.病理医が何人もいる病院はそうはないし,待機料は出ないし,ということで一人病理医であれば年中,二人でも半分は待機しないといけなくなる.これは結構つらい.臨床医であればオペ出来ないから他の病院へ,というのもあるけど,病理解剖は原則他の病院に移すことはできない(かどうかは知らないけれども,少なくとも病理医がいるのに他の病院で病理解剖をした,という例は聞いたことがない).

# 結局は理解できない壁

臨床の先生からすると病理に対して不満が大きいと思うけれど,病理側だって臨床医に対する不満は積もっている(この構図,どうやら臨床医 vs 放射線科医でもあるみたい).以前どどたん先生はこの壁が何とかならないかなーと思ってた時期もあったけど,最近はあきらめてる.多分分かり合えることはなくて,お互いが適度に不満を聞こえないところで言い合ってるくらいがちょうどよいのでは?という結論.どどたん先生的には夜間や休日はなるべくやらない方針で.

2017年11月5日日曜日

肝生検のやっつけかた【3. 自己免疫が関与する肝炎は確定がしにくい】

○ 自己免疫性肝炎 autoimmune hepatitis (AIH)
・自己免疫性の肝炎で,特徴的な血清学的な所見を呈する病気
・自己免疫性肝炎の組織診断は難しい割に臨床の先生は「自己免疫性肝炎の可能性はどうでしょうか?」って何食わぬ顔で聞いてくる.というかいまだに診断基準が古いままで,特異的な所見がないので,病理学的に「それっぽい」ことは言えても確定的なことは言いにくい
・ここでは自己免疫性肝炎は抗核抗体や抗平滑筋抗体が陽性となる中年女性に多い疾患という程度に認識し,あくまで臨床診断が重要だという認識をした上で特徴的な所見を述べていく
・典型的には門脈域の単核球,特に形質細胞浸潤が特徴的(ウイルス性肝炎よりも自己免疫性肝炎を考える)で,門脈域を越えて周囲の肝実質まで広がっていく(これを古い言い方では piecemeal necrosis, 最近では interface hepatitis という)
・単核球というのは病理診断の文脈でよく出てくる表現だが,ほぼイコールでリンパ球及び形質細胞と読み替えてよい(リンパ球も形質細胞も核は基本的に 1 つで).なぜかたまにこういう表現が好まれることがある
・他に肝細胞が集まって小胞巣構造を作るロゼット構造(ロゼットとは何かって結構飛ばされているけど,おそらく肝細胞が集まって小腺腔様構造を作るものを言っているらしい;結構微妙な写真が載っていたりする)や,肝細胞が単核球を取り込む emperipolesis が見られることがある(emperipolesis は何かがリンパ球を取り込むような像を指す表現で,hemophagocytosis と同じ文脈で使われる場合と分けて使われる場合がある)
・胆管病変があると,どちらかというと AIH から遠ざかる印象だが,overlap 症候群のこともあり,言い切らないほうがいい
一番重要なこと:AIH かどうかは病理組織診断で決めるものではない(病理診断報告書で AIH と言い切るつもりならば,カルテを参照して血液検査データをレビューして自分で診断をするくらいの覚悟が必要!)

○ 原発性単純性胆管炎 primary biliary cholangitis (PBC)
・自己免疫性疾患で胆管障害を主とした病変を形成する病気
・昔は原発性単純性肝硬変 primary biliary cirrhosis  (PBC) と呼ばれていたが,最近では比較的早期に発見されて全例肝硬変に進むわけではないので,cholangitis に名前が変更された(略称は変わらず)
・これも自己免疫性肝炎と同様に組織学的な診断基準もあまりはっきりとしない
・ここでは抗ミトコンドリア抗体が陽性となる中年女性に多い疾患という程度に認識し,自己免疫性肝炎と同様にあくまで臨床診断が重要だという認識をした上で特徴的な所見を述べていく
・小葉間胆管に起こる慢性非化膿性破壊性胆管炎が特徴とされる.胆管周囲の炎症細胞浸潤と胆管上皮は再生性変化をきたす.そして,病変が進行すると小葉間胆管が消失し,門脈周囲に細胆管の増生が見られ,肝硬変へ.まぁ肉芽腫はなかなか見られないし,胆汁うっ滞もそんなに目立つことはない印象
・結論:そんなにきれいな症例はめったに見ない

○ 原発性硬化性胆管炎 primary sclerosing cholangitis (PSC)
・これもなかなか見ない病気ではある.男性に比較的多くて,40 歳代を中心に年齢層は結構広い.潰瘍性大腸炎(まれにクローン病)に併発することがあるのは資格試験的にはよくある話で,遺伝的要因と自己免疫性の要因があると言われている
・胆管造影で bead appearance を呈するのが特徴とされるがまぁなかなかみない
・はっきり言って病理組織学的所見では決着はつかない.典型的には 胆管周囲に同心円状に線維化が見られ (onin skin fibrosis) 慢性炎症細胞浸潤と胆汁うっ滞が見られる.病変が進行すれば胆管も消失し細胆管の増生が見られる(胆管狭窄→反応性に細胆管増生はよくある文脈)

○ 結局よくわからない overlap 症候群
・AIH + PBC or PSC の overlap 症候群があり,臨床的に overlap が疑われることがある(肝生検について参照することの多い外科病理学にはあっさりと書いてあって心もとない)
・AIH + PBC:典型的な AIH の所見に加えて,PBC 様の胆管炎の像を伴っている
・AIH + PSC:典型的な AIH の所見に加えて,PSC 様の胆管周囲の線維化を伴っている.特に小児の AIH を見たら overlap を疑った方が良いとされる
・結論:overlap 症候群かどうかについては言い切らないほうが無難







肝生検のやっつけかた【2. ウイルス肝炎と新犬山分類】

○ 最近少ないウイルス肝炎の肝生検
・最近はウイルス性肝炎の肝生検が少なくなってきた
・臨床的に急性肝炎の像を呈する HAV, HEV は肝生検の適応にならないことが多い(AST, ALT がみるみる上昇してきてそれどころではないし,肝生検が出来るようになる落ち着いた状態になる頃には多分正常化していることが多いので)
・HBV, HCV についてもウイルス量は血液検査で評価できるのと,線維化についてはエコーでもフォローが出来るので,絶対的な適応というのは起こりにくい印象
・加えて薬で治るようになってしまったので,new case はますます減ることだろう(と思いたいところだけれども,新しい治療法が出来ると新しい副作用,合併症が報告され,それに相当する病理組織学的所見が新たに報告される,というループがあるので我々の仕事はそう簡単には減らないのだ)
・よってウイルス性肝炎で生検されるとすれば,ただのウイルス性肝炎ではなく+αでなにか別の疾患を疑っているなどしていることが多い

○ 新犬山分類のあらまし
・もともとは慢性のウイルス性肝炎に対して作られた分類で,どどたん先生の前にいた施設ではウイルス性肝炎以外にも「新犬山分類では○○相当である」といった書き方で書いてきた.必ずしも的を射ている表現ではないかもしれないが,雰囲気が伝わりやすいのでおすすめ(** 上司によっては嫌がります)
・炎症の評価 (A):軽度 (A1),中等度 (A2),高度 (A3) で表される.色々解釈はあれど,とりあえずどどたん先生は
 門脈域の中に留まる場合は A1
 門脈域を越えて肝実質へ炎症が広がる場合 (interface hepatitis とか古い言い方だと piecemeal necrosis といったりする) を A2
 肝細胞まで広く及んでいる場合を A3
としている.この分類で理解すべきは,原則的に炎症は門脈域から肝細胞へと広がっていくということ
・線維化の評価 (F):F1-F4 までで評価される.こちらも色々解釈はあれど,とりあえず
 F1 は Azan (Masson Trichrome) 染色において,門脈域周囲の肝細胞を取り囲むように膠原線維が染まっているもの (pericellular fibrosis といったりする) と考えている.ちょっとここは tricky だけど,A2 以上の interface の炎症があれば,F1 以上として良い.
 門脈域からの線維性の伸びだしが十分に確認できれば F2
 門脈域と門脈域 (P-P) あるいは門脈域と中心静脈域 (P-C) の線維性のつながりが確認でき,再生結節様であれば F3
 明瞭な再生結節を形成し肝硬変の像を呈していれば F4 としている
・実際には場所によって多少は異なるため A1-2F2-3 と言った表現をすることが多い
・有名な事実ではあるけれども次の 2 点に注意すること.1 つは炎症や線維化の程度は可逆的であること(治療によって改善する),2 つ目は場所による値の変動が大きいこと(サンプリングによる違いが結構大きい)

肝生検のやっつけかた【1. 肝生検を見る前に知っておくべき知識】

○ 肝臓の基本的な組織構築
・意外と言われていないことだけれども初学者は肝生検を見てどこを見たらいいのかがよくわかっていない
・次の門脈と中心静脈を認識することがとても重要
・まず門脈域を認識すること.門脈(静脈),肝動脈(筋性動脈),細胆管が膠原線維に囲まれて存在している
・次に中心静脈を認識すること.肝細胞の類洞から集約するように連続して見られる 1 本の静脈性の血管
・これらの特徴的な構造物から肝小葉を意識すること.ブタなどと違ってヒトの肝小葉はかなり不揃いなのが普通(組織学のアトラスを見てみると分かるが,きれいな六角形の肝小葉はヒトカラ採取された検体ではないはず)
・そして zone を意識すること.zone 1 は中心静脈の周りの領域で,そこから同心円状に zone 2, zone 3 と拡がる(zone 3 は門脈域に近いが,門脈域の周りではない)

○ 若干どうでもいいこと
・血流は肝動脈,門脈→中心静脈へ流れていき,胆汁は肝細胞で排泄され,門脈域の胆管へ流れていく(血流と胆汁は流れが逆)
・「中心静脈カテーテル挿入」という手技とこの肝臓の中心静脈は別物.勘違いする人はいないと思うけど一応
・細胆管が増生する von Meyenburg complex という像が見られる(たまに試験に出る,それだけ)

○ なんで肝生検をするのか,どんな検体が出てくるのか
・昔は慢性ウイルス性肝炎の炎症や線維化の評価のために生検されることが多かった(らしい)
・しかし,現在ではウイルス性肝炎はほぼ治癒する病気になってしまった(特に HCV の根治が期待できる治療薬が登場したときのどどたん先生の衝撃はすごかった,正直あと 10 年は無理だと思っていたから)
・現在では肝生検をする頻度はだいぶ少なくなってきて,自己免疫性肝炎を疑うが検査所見などから確定が持てない,とか自己免疫性肝炎と原発性単純性胆管炎との overlap を疑うとか,薬剤性肝炎を疑うとか,そういうそもそも込み入った文脈が多い
・肝腫瘍生検はめったに行われず,切除されることが多い.幸いなことに,早期の肝細胞癌の生検が提出されることは滅多になく,あまり悩むことがなくて済んでいる
・そのためにこのマニュアルでも実際に提出されうる検体を重きを置いており,腫瘍性病変の扱いは軽めになっている

○ 何を染めるのか
・さすがに HE だけという猛者はおるまい.どどたん先生のいたところでは HE + EVG + Azan (or Masson Trichrome) + Ag + Berlin Blue + Diastase (Amylase) PAS が基本で,加えて通常の PAS, Orcein 染色を加えているところまであった.なるべくたくさんの染色でみると心強いが,そこらへんは施設の検体の頻度や臨床検査技師との兼ね合いになるだろう
・HE 染色:とりあえず生ビールみたいな感じ
・EVG 染色:血管の同定に有用.肝動脈は平滑筋と内弾性板が見えるはず
・Azan 染色:線維化の評価に.膠原線維と肝細胞の細胞質のコントラストが明瞭な染色にしてもらおう.線維化は EVG ではなく Azan (or Masson Trichrome) で評価をすること
・Ag 染色:肝の類洞構築の評価に.肝細胞が潰れているように見えた時に,細網線維が残っているかを見る
・Berlin Blue 染色:鉄沈着の評価に.うっ血が強ければ,中心静脈周囲に鉄沈着が見られやすい
・Diastase (Amylase) PAS 染色:PAS 染色では肝細胞内の glycogen も染まってしまうが,消化酵素で消化することで,消化酵素抵抗性の沈着物(セロイド ceroid という)が浮き彫りになってくる.背ロイド沈着は肝障害を示唆する
・Orcein 染色:ルーチンで染めていないところが多いかも.HBV のウイルスを同定できたり,銅(正確には銅結合蛋白)が陽性となる.ただいずれもまず滅多に見ないものなので,全例で染めるのは…というところ

2017年11月3日金曜日

病理診断を学ぶ 〜 専門医試験受験

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
同様に実質的におすすめできるような本はありません.ちゃんと書きます.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
 * 実質的にはあまり更新しておすすめできるような本はありません.

病理専門医試験を受験するに当たって最低限必要と思われる本を列挙していく.他のカテゴリーでも提示している本もあるけれども,あくまで専門医試験を受験するにあたって,使い方も含めた観点から記載している.

・I, II 型問題(法律などの問題は除く)に対する出題に対応した本
・過去問を研究することは大前提(ここでは敢えて言及しない)

外科病理学 (2020)
おすすめ度:★★★★★

・とりあえず現時点 (2020/05/19 執筆時点)で一番オススメができる本
・フルカラーになりかつ内容が新しくなったこの本は現時点で外科病理学の勉強をしようとする人全てにに対しておすすめ
・Ackerman/Rosai や Sternberg の日本語版という位置づけだけれども,内容的にもまずまず標準的で日本の実情に合わせた内容になっており使いやすい
・専門医試験直前で見直すのは難しいとは思うがそれでも写真がカラーであり頭に入ってきやすく,ざっとみなすのばベター
・病理を初めて間もない人は,まず分からないときに最初に読む日本語の本としてここからスタートして専門書に移動するとスムーズでそうやって慣れておいてから通読を目指すと良い

病理診断クイックリファレンス (2015)
おすすめ度:★★★★★

・数年以内に病理専門医試験を受験しようとする人はこの本にアクセス可能な状況(買うあるいは借りるあるいは病理検査室にある状態)にしておくこと.
・試験に出やすい(出しやすい)疾患の宝庫.この項目を選択した人が誰だかは知らないし,実際の出題にあたっては特にこの本からというわけではないのだろう.
・しかし「ちょっと難しいし,知らないとぱっとは診断できないけど,実地臨床で遭遇しうる」という疾患が集められており,試験のレベルと十分合致している.
・この本は病理と臨床という雑誌の増刊号であり,普通の本と違って原則的に版を重ねることはない.必要と思ったら早めに入手しておくこと.またこういう増刊号は定期的に出版されており,数年以内に必要なければ次まで待つのも1つ.


組織病理アトラス (2015)
カラーアトラス病理組織の見方と鑑別診断 (2020)
おすすめ度:★★★★★

・最低でもどちらか,可能であれば両方共通読すること.版は 1-2 版古いものでもかまわない.版が違うと写真も違ってくるので,複数の版を読み比べても良い.
・疾患概念が変わってくるものもあるけれども,それは病理専門医試験を受験するレベルの病理医であれば十分吸収して解釈できるはず(病理診断クイックレファレンスあたりで補正しておく).
・通読した上で,過去問に出題された疾患については,再度確認すべき.文章の説明はあまり読まなくても良い.写真で疾患が想起出来るレベルまで昇華させる.

病理医・臨床医のための 病理診断アトラス Vol.1 (2009)
病理医・臨床医のための 病理診断アトラス Vol.2 (2010)

おすすめ度:★★★

・なんとなく伝説となった?,彩の国さいたま病理セミナーをまとめた本(主催者が○になったから急遽中止になって終了したようだ).
・正直写真がいまいちで,説明もまぁまぁと言ったところ.受験生はこの本をみて,どういう疾患が出題されうるのかを研究すべき.出題予想疾患一覧みたいな位置付け.必要に応じてネットで画像検索をして補完する.
・まぁ値段が高いので借りるなどしても良い.多分試験が終わったら使うことはないだろうから.
・さすがに古くなってきている.

・癌取扱い規約
おすすめ度:★★★★★

・当然自分で買う必要はない.病理検査室に必ずあるはず.
・試驗前にぱらぱらと写真の部分だけを読み流していくと,非常に勉強になる.
・普段は該当項目だけしか熟読していないと思うが,全臓器を俯瞰して見ると,腫瘍に関しては一通りの知識の棚ができる.
・ちなみに峰先生から教えてもらったけど,精巣腫瘍取扱い規約ははじめの写真に誤植がある笑

病理診断を極める 60のクルー (2014)
おすすめ度:★★★☆☆

どどたん先生は一応通読したけど,まぁ便利といえば便利.受験業界的にはいわゆる「ヨコのつながり」の本.臓器別というよりも診断クルーをかなめにして臓器横断的に所見を読み解いていくタイプの本.かなり応用的な本なので初心者やあまり自信がない人は読まなくても良い.専門医試験に有用かといえばいまいち.ただ,こういう視点をもつことは実地臨床ではとても重要.時間がある人は読むと参考になることが多いと思う.

というかタイトルが良くない.もう少し難し目のタイトルを付けないと.たまにこの本を学生が間違えて買ってしまって,「これ読んでもわかりませ~ん」って言うはめになる.

読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50ベーシック (2014)
読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50アドバンス (2014)
ポケット細胞診アトラス (2013)
おすすめ度:★★★★★

・病理専門医試験には細胞診の問題も出題されることを忘れてはいけない.多くの病理医は細胞診をちゃんと見ていない.これは病理の研修医にも言えること.これを反映してか,病理専門医試験には細胞診の難しい問題は一切出てこない.
・対策するだけ無駄.ただ,多くの人は病理専門医を取得後に細胞診専門医も受験すると思われるので,せっかくの機会に体系的な勉強をするに越したことはない.
・そのなかで Quiz 50 は比較的簡単かつ薄いので読みやすい.病理出版業界で有名な清水先生と仲間たちの本ではあるけれども(正直出し過ぎな感はあるけれども),とてもいいところをついてくるので仕方ない..
・ポケット細胞診アトラスは分量は多いが,写真がとても綺麗で,この像を頭に叩き込んでおけば大抵は戦える(細胞診専門医試験においても戦える).

病理専門医試験を見据えた場合には細胞診の問題は決してコスパが良いとは言えないが,将来的なことを踏まえると,どちらかあるいは両方とも買っておいて損はない.




病理診断を学ぶ 〜 病理解剖

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
特に変更はない.病理解剖の位置付けなどは欧米と日本では異なるように見え,記載の方法などは非常に独特とも言える.よって洋書はあるものの (hospital autopsy, medical autopsy などで検索),実際の使用という観点からは疑問符がつくので敢えて記載していない.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.

病理解剖に関する本は正直言ってかなり少ない.その上病理解剖のやり方自体が各大学によって全く異なっており,これで絶対大丈夫というのは言いにくい.特に解剖は診断と違って手技が重要なものなので,こればかりは教科書を見ただけで習得できるものではない.

英語の教科書もなくはないが,実際に参照する機会は少ないと思われる.

ということを前提にした上で,以下に提示する.

おすすめ度:★★★★★

比較的最近出版された,病理解剖に関する指南書で,実際の写真が豊富に含まれておりわかりやすい.どれか一冊と言われたら網羅的な「徹底攻略! 病理解剖カラー図解」をおすすめするが,他の人が持っていたり病理部に置いてあったりするのであれば,こちらの本も悪くはない.

徹底攻略! 病理解剖カラー図解 (2015)
おすすめ度:★★★★★

著者(編者)の出版意欲には頭が下がるというか,若干胡散臭いところもあるけれども,少なくともいま日本で出版されかつ入手可能な病理解剖の本の中で一番読みやすくかつマトモな本.どれか一冊と言われたら,間違いなくこの一冊をおすすめする.網羅的かつ一般的なことがきちんと記載されており,好感がもてる.

病理解剖―“わからん”が“わかる”へ (2010)
おすすめ度:★★★☆☆

上記の病理解剖カラー図解が出るまでは,比較的おすすめの本(であった).悪くはないのだが,絵や図が少なく文章メイン.あと,計測すべき事項が詳細に書いてあるが,なぜ計測すべきかなどが細かく書いていない.決して悪い本だとは思わないが,現時点ではこの本を積極的に推す理由はない.二冊目として買っても悪くはないが,,,.

あたらしい検案・解剖マニュアル (2018)
おすすめ度:★★★★☆

専門医試験を前提としたときにはこの本が活躍することはない.しかしながら,病理解剖をやっていて,事件関連なのでは?とか裁判沙汰になるのでは?と思うことは少なくない.現実的に法医学教室に勉強にしに行くことは難しくて,法医学の先生たちがどのようにやっているかということを見ることは少ない(もっというと,法医学教室によってもやり方が全然違うので意外と難しい).この本は一つの例としてある程度網羅的に書いているので,とても参考になる.

・病理と臨床 Vol.30 2012年臨時増刊号 病理解剖マニュアル
おすすめ度:★★★★☆

現時点では入手不可.でも心配はいらない.病理と臨床は数年ごとにテーマをぐるぐる回していて,おそらく数年後くらいにはまた病理解剖マニュアルの特集が組まれることでああろう.読む人も書く人も業界人なのでそこら辺は十分理解して執筆している.現時点で標準的な病理解剖の手法が記載されている.でもページ制限があり詰め込みすぎるきらいなのと,著者による多少の濃淡があるのと,全体としての統一性にややかけるので通しでは読みにくいかもしれない.

・病理解剖とその技術 (病理技術マニュアル)
おすすめ度:★★☆☆☆

この本,まず手に入らない.1983 年の本なので,昔からある病理検査室あるいは誰かが寄付しないと,そもそも見ることすら不可能.病理解剖の手技自体がそもそも枯れた技術なので,なかなか新しい本が出にくい,というのが現実.今回挙げたものなかでは多分いちばん詳しい本であるのは確か.もし病理検査室にあれが一度手にとって見ると良い.学会はこういう本をもう一度発売あるいは PDF などの形で会員に配布すべきだと思う.そういうことをしてこそ学会に所属する意義があるというもの.

おすすめ度:★★★★☆

病理解剖はやっておしまい,ではない.その後に臨床病理相関を検討する,CPC が待っている.病理解剖について勉強をしようとしている人たちは,すでに研修医の時に経験済かもしれないが,どのように CPC を進めていくべきか(正解ではなくとも)一つの目安にはなると思う.

個人持ちするというよりも病理部に買ってもらったほうが良い本ではある.

専門医試験の出題傾向 〜 男性生殖器・泌尿器編

# 病理専門医試験の出題傾向 〜 男性生殖器・泌尿器編

どどたん先生の onedrive を見てくださっていた人用に 2001-2017 年までの病理専門医試験で出題された疾患について,疾患名を修正して臓器分類とともに統一化していたものを公開していた.このデータを用いると,どういう疾患が出題される傾向にあるかが一目瞭然である.いやそうでもないかも.

・前立腺について
出題されるまず癌が含まれている割合が高いということ.ここでは掲示していないが,Gleason score を記載することが望まれている(割合については書かなくても良さそう).癌以外は良性病変で,granulomatous prostatitis はよく,膀胱癌に対する BCG 療法後に見られることがある.

・副睾丸について
副睾丸(精巣上体)としての出題はほとんどなく,adenomatoid tumor のわずか 1 題だけだが,adenomatoid tumor は他の臓器でも出題されうる比較的有名な疾患である.子宮腫瘍アトラスなどを参照して組織像は把握しておくと良い.

・精巣について
精巣はやはり germ cell tumor が一番多いが,lymphoma も少なからずある(亜分類は難しく malignant lymphoma と diffuse large cell lymphoma の 2 つに分けているが).良性は sperm granuloma のみ.精巣の germ cell tumor は mixed であることが多く,1つの組織型を見つけたら,他の組織型がないかは積極的に確認したほうが良い.教科書に書いてある spermatocytic seminoma はほとんど見ないので,これを出されると結構エグいなーと思う.

・膀胱について
Urothelial carcinoma で浸潤のあり,なしを含めての判定が望まれるよう.Inverted papilloma はよく出会う疾患なのだが,多分気をつけないと,invasive urothelial carcinoma と解答してしまうおそれがある.まためずらしいけれども,nephrogenic adenoma や paraganglioma (膀胱というよりも漿膜側)は膀胱に発生しうる腫瘍なので抑えておく.良性病変としては cytitis glandularis の病名は覚えておこう(尿細胞診で腺上皮が出てくるときは cystitis glandularis 由来だと言われている).Interstitial cytitis や malakoplakia は正直試験に出ても応えられる人はほとんどいないのではと思ってしまう.要するに捨て問題.


男性生殖器・泌尿器 出題数 平均点 最高点 最低点

前立腺 19 4.01 4.94 2.63
Adenocarcinoma 13 4.34 4.94 3.94
Basal cell hyperplasia 2 3.51 4.36 2.66
Duct carcinoma 1 3.31 3.31 3.31
Focal atrophy 1 3.06 3.06 3.06
Granulomatous prostatitis 1 2.63 2.63 2.63
Prostatitis 1 3.64 3.64 3.64

副睾丸 1 4.1 4.1 4.1
Adenomatoid tumor 1 4.1 4.1 4.1

精巣 20 3.54 5 1.93
Germ cell tumor, mixed type 5 3.53 3.82 2.7
Yolk sac tumor 5 4.2 4.69 3.75
Seminoma 3 3.7 5 1.93
Malignant lymphoma 2 3.17 3.7 2.64
Diffuse large cell lymphoma 1 2.51 2.51 2.51
Leydig cell tumor 1 2.69 2.69 2.69
Sertoli cell only syndrome 1 3.34 3.34 3.34
Sperm granuloma 1 2.95 2.95 2.95
Spermatocytic seminoma 1 3.14 3.14 3.14

膀胱 24 3.19 4.79 0.56
Urothelial carcinoma 4 3.04 3.45 2.26
Inverted papilloma 3 3.94 4.46 3.29
Carcinoma in situ 2 4.41 4.6 4.21
Cystitis glandularis 2 2.43 2.7 2.15
Nephrogenic adenoma 2 1.01 1.45 0.56
ALK 1 3.37 3.37 3.37
Carcinosarcoma 1 2 2 2
Granulomatous cystitis 1 4.09 4.09 4.09
Interstitial cystitis 1 1.01 1.01 1.01
Malakoplakia 1 2.9 2.9 2.9
Noninvasive urothelial carcinoma 1 3.03 3.03 3.03
Paraganglioma 1 2.31 2.31 2.31
Squamous cell carcinoma 1 4.79 4.79 4.79
Urachal carcinoma 1 4.61 4.61 4.61
Urothelial (Transitional cell)carcinoma,G3,with muscular invasion 1 4.47 4.47 4.47
Urothelial carcinoma in situ 1 4.28 4.28 4.28

専門医試験の出題傾向 〜 心血管編


# 病理専門医試験の出題傾向 〜 心血管編

どどたん先生の onedrive を見てくださっていた人用に 2001-2017 年までの病理専門医試験で出題された疾患について,疾患名を修正して臓器分類とともに統一化していたものを公開していた.このデータを用いると,どういう疾患が出題される傾向にあるかが一目瞭然である.いやそうでもないかも.

心血管については,そもそも外科病理の材料として提出されることがほとんどないので,出題もしにくいのではと思われる.


Amyloidosis, Cardiac myxoma, Infective endocarditis, Myocarditis, Cystic medial necrosis, Fabry disease, Hypertrophic cardiomyopathy, Temporal arteritis あたりは外科材料あるいは剖検例で比較的頻繁に登場するもので,流石に病気を知らない人はいないのではと思われる.もっとも心臓血管外科や循環器が active ではない病院も少なからずあるだろうが,教科書的にも有名であり鑑別診断も比較的迷いにくいので,実際に困ることは少ないだろう.


ただ,hypertrophic cardiomyopathy については剖検例も含めてなかなか典型例を見るのは難しいと思う.どどたん先生も本当に典型的な症例は1例だけであとは拡張相だったり,結局よくわからなかったりと,もやもやした例が多い.


残りの 1 例しか出ていない問題たちは,アトラスを軽くチェックするくらいで十分だと思われるが,これがどういう疾患なのかを背景も含めてある程度勉強すると知識アップに繋がる.肝細胞癌の心転移というかなりアクロバティックな出題もあったが,肝細胞癌は血管との親和性がよく,こういう転移様式もありうることを示している.また nonbacterial thrombotic endocarditis については腫瘍や重篤な感染症などで凝固能異常を来して起こるもので,原疾患というよりも成れの果ての状態の1つみたいなもので,たまに剖検例で見られる.と言った具体に1例の出題疾患でも実地臨床ではそれなりに意義のある問題がセレクトされている.




心血管 出題数 平均点 最高点 最低点
Amyloidosis 6 3.93 4.56 2.66
Cardiac myxoma 6 4.81 5 4.45
Infective endocarditis 4 4.15 4.76 2.88
Myocarditis 4 3.89 4.62 2.67
Cystic medial necrosis 3 4.4 4.6 4.28
Fabry disease 2 3.76 5 2.51
Hypertrophic cardiomyopathy 2 4.79 4.82 4.75
Temporal arteritis 2 3.67 4.98 2.35
Acute myocardial infarction 1 3.99 3.99 3.99
Allergic granulomatous angiitis 1 3.63 3.63 3.63
Congestive liver 1 3.83 3.83 3.83
Dilated cardiomyopathy 1 4.86 4.86 4.86
Endocardial cushion defect 1 3 3 3
Endomyocardial fibroelastosis 1 1.57 1.57 1.57
Fibrinous pericarditis 1 3.86 3.86 3.86
Marfan syndrome 1 4.71 4.71 4.71
Metastatic hepatocellular carcinoma 1 1.59 1.59 1.59
Nonbacterial thrombotic endocarditis 1 3.49 3.49 3.49
Papillary elastifibroma 1 3.1 3.1 3.1
Rhabdomyoma 1 1.03 1.03 1.03
Rheumatic myocarditis 1 3.28 3.28 3.28
Sarcoidosis 1 4.58 4.58 4.58
Thrombus 1 2.23 2.23 2.23
Unknown 1 1 1 1

病理診断を学ぶ 〜 病理組織診断学全般

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
【ここで載せている本について】
  • 病理診断を専攻しようとする専門研修医に対する本です.学生向けの本ではありません.間違って買わないようにしましょう.
  • もちろん学生だから読んではいけないということはなくて,病理診断部に出入りしていて,実際の病理診断に対して馴染みのある人や意欲の高い人はいるでしょう.
  • 将来的に病理を志すのであればここの本を買って読んでみるのも一興.
  • ただ,その前に基本的な知識は必要で,病理学を学ぶ,に書いてある本を参考にして 1-2 冊入門書を読んでからにしましょう.
  • 臨床各科と違って病理診断は知識や技術があれば資格の優先順位は低いです.がんばってください!

2017年11月2日木曜日

病理専門医試験の出題傾向 〜 肺編

# 病理専門医試験の出題傾向 〜 肺

どどたん先生の onedrive を見てくださっていた人用に 2001-2017 年までの病理専門医試験で出題された疾患について,疾患名を修正して臓器分類とともに統一化していたものを公開していた.このデータを用いると,どういう疾患が出題される傾向にあるかが一目瞭然である.
肺も腫瘍,非腫瘍いずれも出題されているが,結構幅広く出題されている.Cryptococcus の出題数が多いのは意外だが,感染症は結構出やすい.Solitary fibrous tumor については,NAB2-STAT6 の融合遺伝子を検出するのが今のところ,一番の王道だけど,HE 染色だけで判定しようとするとかなり典型的な所見を提示しないといけない.Sclerosing penumocytoma (以前は sclerosing hemangioma)もそう.

出題数がすくないのもあるけれど,重複癌だったり A + B みたいな提示もあるので,一応落ち葉拾いをしたほうが良い.あと稀なものについてはあまり学習する意義は少なそう.Tumorlet や meningothelial nodule あたりは知っておくと結構便利.



回答数 平均点 最高点 最低点
Cryptococcosis 9 2.89 4.74 0.64
Sclerosing pneumocytoma 7 4.18 4.69 3.58
Solitary fibrous tumor 5 3.78 4.47 2.44
Chondroid hamartoma 4 4.77 4.9 4.48
Sarcoidosis 4 3.79 4.4 3.33
Adenosquamous carcinoma 3 3.86 4.26 3.59
Hypersensitivity pneumonia 3 3.8 4.36 2.7
Large cell neuroendocrine carcinoma 3 3.33 3.68 3.09
MALT lymphoma 3 3.1 3.6 2.44
Neuroendocrine tumor 3 1.74 2.33 1.23
Pulmonary hypertension 3 3.76 4.25 3.26
Small cell carcinoma 3 3.95 4.64 3.46
Tumorlet 3 3.02 3.69 2.4
Adenocarcinoma 2 3.91 4.21 3.61
Adenoid cystic carcinoma 2 4.75 4.77 4.73
Amyloidosis 2 2.12 2.3 1.94
Asbestosis 2 2.66 4.25 1.06
Atypical adenomatous hyperplasia 2 3.89 4.24 3.54
Diffuse alveolar damage 2 4.06 4.52 3.6
Dirofilariasis 2 3.67 4.25 3.09
Epithelioid hemangioendothelioma 2 0.68 0.79 0.56
Langerhans cell histiocytosis 2 3.5 3.81 3.18
Mucoepidermoid carcinoma 2 3.08 3.24 2.91
Pleomorphic carcinoma 2 2.62 3.02 2.22
Pneumocystis jirovecii infection 2 2.87 4.05 1.69
Pulmonary proteinosis 2 1.85 1.98 1.71
Pulmonary sequestration 2 2.7 3.75 1.64
Wegener's granulomatosis 2 4.07 4.37 3.77
Actinomycosis 1 0.9 0.9 0.9
Allergic bronchopulmonary aspergillosis 1 2.63 2.63 2.63
Amniotic fluid embolism 1 3.9 3.9 3.9
Aspergillosis 1 4.6 4.6 4.6
Aspergillosis + squamous cell carcinoma 1 3.61 3.61 3.61
Asthma 1 3.72 3.72 3.72
Bronchioloalveolar carcinoma 1 3.37 3.37 3.37
Carcinomatous lymphangiosis 1 4.17 4.17 4.17
Carcinosarcoma 1 2.8 2.8 2.8
Chemodectoma 1 1.74 1.74 1.74
CMV+Pneumocystis jirovecii 1 4.55 4.55 4.55
Coccidiomycosis 1 0.78 0.78 0.78
Congenital cystic adenomatoid malformation 1 4.43 4.43 4.43
Epithelioid malignant mesothelioma 1 4.57 4.57 4.57
Heart 1 4.3 4.3 4.3
Histoplasma capsulatum 1 1.8 1.8 1.8
Inflammatory pseudotumor 1 1.87 1.87 1.87
Invasive mucinous carcinoma 1 2.43 2.43 2.43
Low grade fetal adenocarcinoma 1 3.66 3.66 3.66
lymphangioleiomyomatosis 1 3.26 3.26 3.26
Lymphangiomyomatosis 1 1.6 1.6 1.6
Malignant melanoma 1 3.84 3.84 3.84
Metastatic adenocarcinoma 1 3.6 3.6 3.6
Metastatic carcinoma 1 3.86 3.86 3.86
Minute meningothelial nodule 1 4.01 4.01 4.01
Mixed carcinoma (small cell carcinoma + adenocarcinoma) 1 2.91 2.91 2.91
Mucinous adenocarcinoma 1 3.91 3.91 3.91
Mucor infection 1 2.11 2.11 2.11
Organizing pneumonia 1 1.34 1.34 1.34
Pleural plaque 1 2.54 2.54 2.54
Plexiform lesion of pulmonary artery 1 2.44 2.44 2.44
Primary pulmonary hypertension 1 2.54 2.54 2.54
Pulmonary Aspergillosis 1 4.8 4.8 4.8
Pulmonary blastoma 1 2.97 2.97 2.97
Pulmonary infarction 1 1 1 1
Pulmonary thrombosis of bone marrow 1 3.9 3.9 3.9
S2 segment 1 3.5 3.5 3.5
Small cell carcinoma + adenocarcinoma 1 3.22 3.22 3.22
Tuberculosis 1 4.71 4.71 4.71
Usual interstitial pneumonia 1 4.72 4.72 4.72

病理診断学を始める人のために

# 病理診断はどのようになされているのだろうか
  • DDTN:さて,今日の仕事はこれで終わり.かーえろうっと.
  • NKM:先生,今日は帰るの早いですね.ちょっとこの標本を見てもらってもいいですか?
  • DDTN:さてさて,この胃癌の標本か...うーん,腺癌!
  • NKM:これ再生異型と迷うんですけど...どうですかね?
  • DDTN:まぁ癌でいいんじゃないの?うん,やっぱり癌だよ,これ!
  • NKM:なんで癌だと思うんですか?
  • DDTN:だって癌じゃない,これどう見ても異型があるでしょ.ほら,核腫大しているしさ.
  • NKM:でも再生異型でも核腫大しませんかね.
  • DDTN:するよ,するけど,ちょっと違うんだよなぁ...
  • NKM:その違うところを教えてほしいのですが...
  • DDTN:慣れだよ,慣れ.たくさん見てればそのうち分かるさ.
  • NKM:....
病理診断科をローテートしている人の中ではこれに近いことを言われた人は少なからずいるのでは?病理を始めたての頃は,○○先生が癌と言ったから癌!みたいなことが普通にまかり通るし,これは専門分野でもそう.何となくこう思うが診断になることは少なからずある(もっとも経験豊富な人の「印象」というのは的を得ていることはしばしばあって,ないがしろにはできないが).

診断をするためには本来明確な基準があって,その基準に合致したものに対して病名をつけている.シンプルな作業ではあるのだけれども,時に基準が不明確だったり,複雑だったりして診断するものを悩ませる.

次は診断基準というのものについて考えてみよう.

# 診断基準とは?
  • DDTN:例えば胃癌で早期癌を疑う場合は病変部分を全割(全て標本作製する)をしないといけない.進行胃癌であれば全てを作る必要はない.
  • NKM:どうしてですか?
  • DDTN:その前に胃癌の早期癌の定義って知ってる?
  • NKM:粘膜下層に留まる癌ですよね.
  • DDTN:そういうこと.これって裏を返すと,固有筋層に浸潤していない癌ということになる.極端なことをいうと,ほんの少しでも癌が固有筋層に浸潤していれば,進行癌になってしまう.
  • NKM:なるほど.だとすると,早期癌というためには進行癌を否定しないといけないわけですね.
  • DDTN:その通り.どうやったら進行癌を否定できるか.病変部分を 1 本作っただけでは不十分で,少なくとも癌の部分全てで固有筋層に浸潤している部分がどこにもないことを証明する必要がある.そこまでして始めて早期癌といえるんだ.
  • NKM:じゃあ進行癌は?
  • DDTN:進行癌は,少なくとも肉眼的に固有筋層に浸潤している部分を指摘できればあとは一番深そうなところを数か所作れば良い.
  • NKM:「ある」ことを証明するのは簡単ですけど,「ない」ことを証明するのは難しいですね.
  • DDTN:そうそう.
いろいろな腫瘍・非腫瘍の診断基準があるけれども,多くはこのどれかに入る.
  • あるものの存在を証明することで診断上重要なもの(「骨肉腫」における,類骨の証明,「脱分化型脂肪肉腫」における MDM2 遺伝子の増幅の証明,など)
  • ないことを証明することが診断上重要なもの(「胃早期癌」における固有筋層への浸潤がないことの証明)
病理を始めたばかりの人,特に細胞検査士の試験を受けようとしている人によく陥りがちなことがあるのが,○○という疾患は a, b, c, d といった所見が特徴的である,と書いてあるなかで,a, b, c, d いずれも同じように重要だと思いこんでしまうこと.実際には a >>>>>>> b >>> c, d みたいなことがあって,a の所見がないのに b, c, d の所見をもって診断してしまう,あるいは a だけしか見られないことを理由にその診断を否定してしまう.

例えば甲状腺乳頭癌で言えば,核所見が一番重要なのであって,乳頭状構造を作るかどうかは実際どうでも良く,濾胞構造を作っていても乳頭癌としては okay ではある.つまり「核所見(核溝,核内封入体,スリガラス状核)>>>>乳頭状構造」であって,もっというと,核所見の中でも「核内封入体>核溝,スリガラス状」であり,核内封入体があればよりより乳頭癌と言いやすい.

# A と診断するということは,その他の B, C, D, E, ... を否定すること
  • DDTN:甲状腺の乳頭癌の鑑別診断は?
  • NKM:えーっと,だいたい乳頭癌ってすぐわかりますよね.そんな鑑別診断を考える必要ってあるんですか.
  • DDTN:あるある笑だってもし乳頭癌じゃない時に,頭真っ白になっちゃうでしょ.人生においてもそうだけど,常に代替の選択肢は準備しておかないといけない.準備できない時は相当入念にしないといけない.
  • NKM:それもそうですね.
  • DDTN:乳頭癌を考える時は,hyalinizing trabecular tumor, follicular adenoma/carcinoma, adenomatous goiter あたりを考える.単純な症例では そんなに鑑別が問題となることはないけど,adenomatous goiter を背景にした乳頭癌なんかではなかなか難しいと思う.
  • NKM:そんなへんてこりんな症例もあるんですね.
病理診断(臨床診断もだけど)は疾患あてゲームではない.当たれば正解,外れたらまた考えよう,というスタンスがなくはないけど,基本的には十分考慮した上で診断を出している.

例えば甲状腺乳頭癌を診断するときには,乳頭癌以外の鑑別すべき(吟味すべき)腫瘍・非腫瘍を否定している.所見を書く場合も乳頭癌の特徴ばかりを書くのではなくて,きちんと他の腫瘍も考えたけど,○○の所見がないから違うと考えたよ,ということが分かるように丁寧に記載しないといけない.

特に難しい病変を診断する場合は,だいたい鑑別診断が複数提示されていて,それを肯定あるいは否定するために免疫染色を行ったりしている.その上で,有意な所見を取り上げてそれをもって確定診断とする.

臨床診断も原則的にはしていることは同じで,A という診断名を考えるときには他の B, C, D, ... を否定している.

実際の診断では straight に診断してかまわないんだけど,常に裏に何を考えて,何を否定しているのかは意識する必要がある.

2017年11月1日水曜日

病理専門医試験の出題傾向 〜 乳腺編

# 病理専門医試験の出題傾向 〜 乳腺

どどたん先生の onedrive を見てくださっていた人用に 2001-2017 年までの病理専門医試験で出題された疾患について,疾患名を修正して臓器分類とともに統一化していたものを公開していた.このデータを用いると,どういう疾患が出題される傾向にあるかが一目瞭然である.

乳腺については,診断名がばらつく傾向にある.部位についても若干記載にばらつきがあって,わかりにくい.その中で,Paget disease, ductal carcinoma 辺りは鉄板で,adenoma of the nipple は実際に症例を見る頻度は低いものの,有名だからか,出題頻度は高い.

Invasive lobular carcinoma はよくあるものであるが,実際に試験で出されてきちんと答えられるか,これが意外と難しい.Adenomyoepithelioma, Metaplastic carcinoma, Tubular carcinoma 辺りは見たことない人も少なからずいるはず.Secretory carcinoma は最近唾液腺で analogue の癌がちらほらケースレポートで出始めたので知っている人もいるはず.Phyllodes は過去問では良悪性の判定まで求められることが多いようである(何も記載のない phyllodes tumor は模範解答に良悪性の記載がない).

Radiation therapy は恐らく,泡沫状細胞浸潤やヘモジデリン沈着を見せて,何をしたのかを答えさせる問題なのであろう.

乳腺では実際には良性の病変に遭遇する機会も多く,その分,試験にも良性病変が多く出題されている.部分点を狙いに行くのであれば,取り敢えず悪性でないことを前提として benign とか,mastopathic change とか,毒にも薬にもならない事を言えば良い.あまり当てに行くとやけどする可能性があるので,要注意.



乳腺 回答数 平均点 最高点 最低点
Adenoma of the nipple 5 4.2 4.67 3.95
Adenomyoepithelioma 2 2.23 2.41 2.04
Adenosis 1 4.62 4.62 4.62
Apocrine carcinoma 2 3.7 4.55 2.84
Benign 1 3.5 3.5 3.5
Ductal carcinoma in situ 6 3.61 4.33 2.44
Ductal carcinoma with neuroendocrine differentiation 1 2.99 2.99 2.99
Ductal hyperplasia 1 3.01 3.01 3.01
Ectopic mammary gland 1 2.8 2.8 2.8
Fibroadenoma 4 3.82 4.64 2.62
Fibrous disease of the breast 1 2.34 2.34 2.34
Granulomatous mastitis 2 3.27 3.6 2.93
Hamartoma 1 1.33 1.33 1.33
Her2 score 2 3.2 4.89 1.5
Intracystic papilloma 1 4.72 4.72 4.72
Intraductal papilloma 2 3.92 4.43 3.4
Invasive ductal carcinoma 3 4.42 4.86 3.95
Invasive lobular carcinoma 9 4.17 4.79 2.99
Invasive micropapillary carcinoma 2 3.97 4.22 3.72
Lactating adenoma 1 3.21 3.21 3.21
Lobular carcinoma 2 4.27 4.56 3.98
Margin; positive 1 3.87 3.87 3.87
Mastitis 1 3.69 3.69 3.69
Mastopathy 4 3.27 3.86 2.8
Medullary carcinoma 2 4.52 4.83 4.21
Metaplastic carcinoma 1 3.34 3.34 3.34
Mucinous carcinoma 2 3.68 4.99 2.36
Paget disease 3 4.67 4.99 4.35
Phyllodes tumor 3 4.02 4.53 3.59
Phyllodes tumor, benign 3 3.9 4.48 3.33
Phyllodes tumor, malignant 3 4.42 4.71 4.19
Radiation therapy 1 1.44 1.44 1.44
Sclerosing adenosis 2 3.45 3.56 3.33
Secretory carcinoma 1 0.94 0.94 0.94
Tubular adenoma 1 3.35 3.35 3.35
Tubular carcinoma 1 3.66 3.66 3.66

病理医としてのキャリアパス:中間点

# 次はいずこへ どどたんせんせはいわゆる around 40 で,この職場で留まるべきか次にどこかに行くべきかをそろそろ悩まなくてはいけない感じなっている.ある程度 public なこういうブログで書くべきかは悩ましい感じもするが,ごく普通の人の普通のキャリアパスについての具体...