改訂履歴
2017/07/30 初版
2018/01/20 改訂
● 脳腫瘍の WHO 分類に基づいた glioma の検索2018/01/20 改訂
○ IDH 変異
・IDH 変異の内訳は IDH1, IDH2 変異がそれぞれ約 96%,約4% で,IDH3 変異は現在のところ見つかっていない
・変異型 IDH の約90% は IDH1 のコドン 132 がアルギニン(R) からヒスチジン(H) に変わった R132H
・IDH R132H 以外の変異型 IDH1として R132C (2.8%), R132S (1.4%), R132G (1.1%), R132L(0.6%)がある
・IDH2 にも R172K (2.8%), R172M (0.8%), R172W(0.6%), R172S(0.2%) がある
○ 成人の glioma の成り立ち
・成人の浸潤性膠腫には 2 つの type がある
・IDH 変異を出発点とし WHO grade II また は III の腫瘍として発生,悪性度が増して膠芽腫に至る
・IDH 変異の下流に TP53 変異,ATRX 変異が加わると diffuse astrocytoma, anaplastic astrocytoma が生じる.また IDH 変異の下流に 1p/19q co-deletion が加わると,oligodendrocyte 系の腫瘍が生じる
・IDH 非依存性で,TERT promoter 変異など別の遺伝子異常が腫瘍発生に関与し, 前駆病変を介さず de novo に膠芽腫として発生
・変異型 IDH の中で最も頻度の高い R132H は特異変異抗体 IDH1R132H の免疫染色で検出可能
・De novo のglioblastoma 以外の astrocytoma, oligodendroglioma は IDH1 R132H 陽性,p53, ATRX に相互排他的な染色性を示す
・IDH の変異がない (IDH-wildtype) と診断するには IDH1 の 132, 172 のコドンのいずれにも変異がないことを示すが,免疫染色陰性でも R132C などの可能性を除外できない
・ただし, 55 歳以上の glioblastoma では IDH 変異の確率は 1% 以下であり,IDH1 R132H (-) -> glioblastoma, wildtype と診断可能
・新 WHO では IDH 変異のない grade II or III invasive glioma は存在しないというスタンス → IDH wildtype の診断は慎重に(IDH wildtype の glioblastoma や localized な glioma を見ている可能性)
・Glioblastoma, IDH-wildtype である epithelioid glioblastoma. 30 歳以下に多い.GFAP 発現弱く,50% に BRAF V600E 変異あり
・小児の浸潤性膠腫で正中線上,特に橋に発生した腫瘍はびまん性内在性橋神経膠腫と呼ばれ,ヒストン H3.3 をコードする H3F3A or HIST1H3B/C に変異があり,リシン → メチオニン (K27M).Diffuse midline glioma, H3 K27M-mutant という名称(WHO grade IV)
・限局性 well-circumscribed type の glioma はBFRA 遺伝子変異による
○ まとめ
・Invasive glioma を見たとき
→ IDH1 R132H (+), ATRX(-), p53(+) → astrocytoma, grade II-III, IDH mutant / glioblastoma, grade IV, IDH mutant
→ IDH1 R132H (+), ATRX(+), p53(-) (+ 1p/19q co-deletion) → oligodendroglioma, grade II-III
→ IDH1 R132H (-) → IDH wildtype → atrocytoma, IDH wildtype(ただし wildtype と言い切るためには DNA sequencing が求められるため,検索が出来なければ NOS とする)
例外:55 歳以上の glioblastoma については IDH 変異がほとんどなく glioblastoma, wildtype と診断可能
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