2017年10月8日日曜日

乳腺のやっつけかた【3. 良性とされる病変のバリエーション】

2017/10/08 1st edition.
2018/12/29 Last updated.

○ 乳腺症性変化 mastopathic change
・一般に乳腺症性変化という言葉は欧米では用いられておらず,fibrocystic disease がそれに相当する
・海外では mastopathic change という言葉は使われていないかもしれない
乳腺症は乳癌の発生母地だ,と主張されることが多いが,程度の差はあれ,大抵みんなあるので,それを言ったらみんな乳癌になってしまうことになり,若干眉唾もの
・乳管の拡張,乳管内増生 duct papillomatosis (ductal hyperplasia, usual ductal hyperplasia),アポクリン化生,などなどで腺症も含むかなり雑多な概念で,
・これらは全て良性というのがポイントで後々の鑑別診断で登場してくる

○ 腺症 adenosis
・腺症というのは要するに腺が増えている状態
・正常の乳管が集まってできる小葉の構築とは異なり,密集している印象
・線維化を伴って腺が増える硬化性腺症 sclerosing adenosis はよく癌と間違われやすい(エコー上も組織像も)
・腺症が診断できることが重要というよりも癌と間違えないように注意
・浸潤性乳管癌との鑑別はなんと言っても筋上皮があるかないかで,腺症であれば必ず筋上皮が確認できる
・HE 染色レベルではっきりと筋上皮を認識できれば腺症としてよいし,できなければ筋上皮のマーカーを染めて筋上皮の有無を確認する

○ 乳管内乳頭腫 intraductal papilloma
・拡張した乳管内を乳管上皮が乳頭状に増生し,間質が介在している病変で,乳管上皮と筋上皮の二相性は保たれる
・拡張した乳管は手術検体では認識しやすいが,生検では部分像でありはっきりとした乳管構造を認識できないことがある
・そのような針生検でも乳管内病変だということを認識できる必要がある → 腔の一部として矛盾しない扁平な細胞が裏打ちした部分とヘモジデリン沈着や組織球浸潤があれば intraductal な病変であることが示唆される(ヘモジデリン沈着や組織球浸潤が cystic な変化を示唆するということは細胞診でも有用な考え方)
・乳管の拡張が高度で嚢胞状の形態を呈していれば intracystic papilloma と呼ぶこともある
乳管内癌 ductal carcinoma in situ が乳管内乳頭腫内を「進展」することもしばしばあるので注意が必要

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