2017/10/08 1st edition.
2018/12/29 Last updated.
○ 良悪性の判定が難しいときにすべきこと
・一番簡単なのは専門家に投げること.近くあるいはコンサルテーションシステムを使って専門家に丸投げしてみる
・最近はだいぶ改善している気がするけど,偉い先生(○害?)が癌といえば癌になるようなちょっとずれた診断もあったと思う
・もしコンサルテーションをするのが現実的ではないときは,切除生検を勧めてみる(臨床医からすると切除生検をした後追加切除をするのは結構難しいらしく,切除生検を勧めてみても部分切除になることが多い気がする)
・胃癌や大腸癌だと,ESD までは癌がなくてもなんとなくセーフという風潮があるのと同時に,乳腺だと部分切除まではなんとなくセーフという風潮がある.もちろんその前提として臨床医から患者への丁寧な informed consent が重要なことは言うまでもない
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 浸潤性乳管癌 vs 硬化性腺症
・これがトラブルになるナンバーワン.方や悪性,方や良性で,画像上も結構紛らわしくて,どちらもありの文脈になっている
・間違えると医師免許が飛ぶ,,,ことはないと思う
・多くのプロたちが間違えているものなので,決定的な鑑別点がないのが困りものだけど,しばしば乳管周囲の間質の有り様について語られることがある.すなわち,腺症であれば乳管周囲の間質は硝子化していたりして,かつ流れがスムーズ,浸潤性乳管癌であれば乳管周囲の間質は途切れていたり,線維芽細胞が見られていたりしている.当然乳腺症では上皮の二相性が保たれる
・と言っても難しいので,少しでも悩んだら,免疫染色が無難なところ(本当の問題は悩まずに出してしまうことで,そのためには常日頃から意識的に見ないといけない)
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 Microglandular adenosis vs 浸潤性乳管癌
・Microglandular adenosis という疾患概念を知らない人は多分浸潤性乳管癌としているだろうし,稀だけど,結構鑑別が難しい
・Microglandular adenosis は筋上皮細胞が消失しており,免疫染色 (CD10 陰性,p63 陰性) では結果だけを見ると,浸潤性乳管癌にしてしまう.核異型が乏しく,比較的単調な増殖を示すことが多くて,その点で浸潤性乳管癌とは何かが違うのではないか?という疑問を持つことができれば合格だと思う
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 乳管内癌 vs 乳管内増生
・典型的には乳管内癌は核が丸くて単調,腺腔を形成する時には極性が見られる(極性というのは腺腔に対して核が基底部に揃っている状態)
・乳管内増生は核が大小不同があり(大小不同があっても多形性はない),腔を形成しても,極性は目立たない.また充実性に増殖している部分で CK5/6 陽性の細胞が介在(一応乳管内増生の特徴的な所見)しているのが確認できる
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 乳管内癌 in 乳管内乳頭腫
・乳管内乳頭腫内に乳管癌が進展することがある
・ある程度大きな乳管内乳頭腫の中に少し性状が違う,雰囲気の違う領域(単調な細胞の増殖)があれば免疫染色 (p63, CK5/6, CD10) を出してみると良い
・乳管内乳頭腫であれば,CK5/6 陽性細胞が介在しているはずで,乳管癌と思われる部分では CK5/6 が欠落しているはず
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 乳管内癌 vs Atypical ductal hyperplasia (ADH)
・正直 atypical ductal hyperplasia の定義が微妙で(複雑かつ不明瞭)で気軽に使えない
・low grade DCIS との鑑別が明瞭ではない(上に,近くに明らかに DCIS があれば ADH 病変も DCIS の一部としてみなされる)
・ちょっと異型のある乳管に対して気軽につけられる所見ではない
・どどたん先生的にはあまり使わない用語の1つ
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 異型乳管上皮 atypical ductal lesion
・前述の理由で,ADH の定義自体が非常に微妙で特に生検ではつけることがとても躊躇される(下手につけると独り歩きしてしまうので)
・乳腺の専門家に言わせれば,ADH 相当の異型乳管も近くに明らかな DCIS があれば,まとめて DCIS にするとかで,要は全体を見通して診断しないといけいないことになっている
・そういうわけで,ADH っぽい,でも乳管癌とするほどの異型は言い難い,っていうときにどどたん先生は atypical ductal lesion という言葉を多用している
・教科書的には乳管内に対して,二相性の見られない乳頭状増殖,Roman bridge 構造(乳管内で伸びだした上皮がくっついて橋渡し構造を形成する),平坦だけど,核が丸く腫大している,といった構造が見られれば,doubt として引っ掛ける
・どどたん先生の実感からはこれらの異型上皮が見られたら,だいたいどこかに癌があることが多い気がする
・ちなみに某検査センターでは悪性と判断されたら CK5/6, p63 をルーチンで染色して,二相性を確認しているそう
・困ったら免疫染色がキーワードになるのは当然のことであるが,困る状況は以下の通り
・大型の腫瘍胞巣が散見される場合は圧排性浸潤により二相性が消失している可能性がある
・「はす切れ」によって小型の腫瘍胞巣のようにみえることもある
・もう一つ.HE 染色を見れば分かるという先生もいるかもしれないが,大手の ○CL が全例で免疫染色をルーチンですることにした意味をもっと真摯に考えたほうがいい.ダブルチェックをしているラボでも症例数が馬鹿みたいに多くなると見逃す可能性があるということと,間違えた場合のインパクトがあまりにも大きすぎるということ.それだけコストをかけたとしても仕方ないと思わせるほどのことだという話
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 粘液癌 vs Mucocele like lesion
・粘液癌のところで概説をしたけれど,針生検で mucocele like lesion と確定診断をするのは極めて危険
・手術検体で明らかな粘液癌(他の癌成分)がなければそうつけるしかないけれど,上皮成分が見られなければ,所見記載でコメントに留めるのが無難
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 センチネルリンパ節転移の見逃し
・リンパ節転移の見逃し症例の多くは経験上,浸潤性乳管癌の転移症例.小葉癌の方が難しいけど,その分注意して見るし,そもそも頻度自体が少ないため
・2ch (現 5 ch)辺りでは,小葉癌見逃すのは馬鹿だみたいな言われ方だけど,実際は乳管癌ですら難しい
・見逃しのパターンとしては,転移巣の腫瘍が量的に少ない場合と,逆にびまん性に転移していてかえって気づかなかったパターンがある
・100% 見逃しを防ぐことは不可能.せめて見逃しのパターンを知っておくだけでも違う
○ あるあるお悩み・失敗例 〜 別のところから or へ転移した乳癌
・乳癌が別のところに転移することはよくある話で,原発不明癌で特に女性の場合は乳癌は特になくても頭のなかに入れておかなくてはいけない(ここら辺を鑑別診断のスタートで入れられるかが,いかに早く正解にたどり着けるかの違い)
・乳癌の脳転移は臨床的にも指摘されていることが多くて,正直あまり問題にはならないが,乳癌の肺転移,胃転移,子宮転移(後は正直どこでもあり)などに注意が必要
・特に小葉癌の転移の場合は,個在性の浸潤であるためそもそも癌としての認識が難しいこともある(リンパ腫とかと間違われる)ので,転移性腫瘍を疑った場合は非上皮様に見えても,念のために AE1/AE3 などの pancytokeratin を加えておくなどの慎重さが常に求められる
・逆に別のところから乳腺に転移,浸潤した癌の可能性も念頭に置かないといけない(悪性黒色腫や腎癌など).ちょっとでも定型的でないと感じたら既往チェックや免疫染色で裏を取るべき
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