2017/05/27 1st edition.
2017/12/25 Last updated.
○ 逆流性食道炎(炎症による反応性変化)・逆流性食道炎では好酸球浸潤(あるいは好中球浸潤)が高度に見られる
・炎症によって上皮が破壊された場合,修復するために周囲の残存する上皮細胞が増生して,いわゆる反応性変化と呼ばれる一連の形態学的変化が出現
・反応性変化では核が腫大し,クロマチンも濃染する
・腫瘍の核異型と同じように見えるが,よくよく考えれば当然の話しで,反応性変化でも腫瘍性変化でも細胞が増えるというプロセスは共通しているので,同じように一応は見える
・しかし,反応性変化は癌と比べて核の腫大の程度が比較的一様で,極性の乱れは目立たない
・もっとも鑑別に難しいことは多々あり,じゃあそんな時教科書で調べることに加えて,打つ次の一手が必要になる
○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと ~ Deep cut (深切り)
・生検はとても小さい組織だが,検体がなくならないように,あまり削られていないこともある
・「臨床的に癌として認識」された検体に腫瘍がないと判断したら,思い切って deep cut をする
・どどたん先生は deep cut 5 枚をオーダーするのが好き(病院によっては削りすぎてなくなることがあるので,連続切片 serial section を切るのがおすすめ)
○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと ~ Ki67, p53 染色をする
・Ki67 染色は細胞の増殖活性を,p53 染色は細胞の核が陽性になると,一応 p53 遺伝子に変異があることになっている(一応,ね)
・食道の扁平上皮での有用性はいまいちなところもあるが,一応セットで出している
・評価方法も実は決まったものはないのですが,Ki67, p53 いずれも陽性細胞が多い場合に「より癌を疑う」という程度
→ もっというと,最表層まで Ki67, p53 陽性細胞がいると怪しい
→ Ki67, p53 染色を参考にして,HE 染色に戻って再検討する
○ 癌との鑑別が難しい時にやるべきこと~再生検を依頼する
・変性が強い組織などでは確定診断が困難な時もある
・その場合は良性・悪性とも判定せずに再生検を依頼するのが無難
・その病変が「良性である」ということと,「良悪性がわからない」ということでは臨床的な対応も含めて話が大きく変わってくる
○ それでもわからないときの言い訳の仕方~なぜわからないのか,ポイントを明確に
・わからない時はなぜわからないのか,病変が特殊なのか,炎症が強くて評価が難しいのか,検体が少ないのか,変性が強いのかなど理由を明確に述べる必要がある
・でないと我々だけではなく,臨床医が次に何をすれば良いのかがわからない
・病理診断によって,臨床医が次にどういう行動を起こすべきか,ある程度規定できるような書き方をする必要がある
○ Atypical epithelium という用語
・現在の取扱い規約(第 11 版)では atypical epithelium という記載が登場した
・WHO 2010 では low/high grade intraepithelial neoplasia が採用されており,第 10 版ではそれに準じていたが,今回の改訂で,WHO に反する形になった
・WHO 分類では子宮頚部の異形成と同じように,基底層から順に細胞が増殖し全層性増殖から浸潤へ進展するという理論に基づいて,異型細胞の層の厚さで low grade, high grade を分けていた
・しかし,日本の消化管病理医たちは low grade と分類される中にも細胞異型からは癌と言える病変(あるいは結果的に浸潤癌となった症例)を経験しており,low/high 自体の分類に意味がないという主張
・だから low/high という区分けではなく,「癌」あるいは「癌を否定出来ない異型上皮」という区分にした方が現実に即しているというのが一応の趣旨とどたん先生の理解
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