2017/05/27 1st edition.
2017/12/25 Last updated.
○ 明らかな悪性病変もとりあえずそれでいい・食道生検で出現する病変の多くが扁平上皮癌,食道胃接合部であれば腺癌あたり
・まれに癌肉腫だったり,小細胞癌だったり,他の腫瘍の転移(意外と腎癌や肺癌が多い)だったりすることもあるが,あまり細かいことを言うと本筋から外れるので,とりあえず扁平上皮癌と腺癌に分けて話を進めていく
・その前に癌とするために必要なことについて簡単に触れておく.ココらへんは病理総論の知識のおさらいになってくる
○ 癌と診断する根拠は?
・扁平上皮癌でも腺癌でも同様だが,癌と診断するために共通の要素 → 異型がある!!!!!こと
・明らかな癌であれば悪い!あるいは悪そう!と思えるが,何をもって悪い!と言っているのかの根拠を,所見として記載する必要がある
・標本を読めるというプロセスは,癌と診断する根拠をきちんと述べることができ,かつ実際に標本に適応できるということになる
○ 細胞異型と構造異型
・大きく細胞異型,構造異型に分けられる
・細胞異型:核が大きい・形が不整である,クロマチンが濃い,N/C 比が高い,極性が乱れている,あたり
・構造異型:元の組織の構築からどれだけ隔てられているか.単にぐちゃぐちゃだから悪い,という認識は適切ではない
・細胞異型・構造異型を合わせてある一定の基準を超えたものが癌として診断され,その癌の基準を満たさず,また良性とは言い切れないものを異型上皮として扱う
・癌とする基準:実際問題として癌の基準はなにかと言われて,これ!と言うのは難しくて,ある程度の症例を通じて「この程度なら癌でいいのか」と実感する必要がある
○ 扁平上皮癌のみかた
・扁平上皮癌の特徴は?と言われてスラスラ出てくるような人は普通の教科書を読んでも何ら問題ない
・癌一般の特徴は一つ上の段で述べた
・特に食道の扁平上皮癌を診断する際に気をつけることは,浸潤癌にならなければ構造異型はまずほとんどないということ
・よって細胞異型だけで癌であるかどうかを判定する必要があり,そのために「(特に早期の)扁平上皮癌の診断が難しい」と言われる原因の一つになっている
・ポイントはただ一つで,核クロマチンの増加と大小不同,核型不整に注目すること
・上皮内を増殖する細胞がクロマチンがしっかり濃染されていて,核が大小様々で,核の形に不整が出てくれば癌と診断
○ 上皮内癌で扁平上皮癌とつけることの悩み
・食道粘膜の上皮内癌はしばしば見るが,診断名は squamous cell carcinoma である
・しかし,(特に食道における!!)上皮内癌は形態学的に細胞間橋や,層状分化,角化など,扁平上皮としての特徴的構造がはっきりしないため扁平上皮癌とは言いにくい
・ちなみに CK5/6, p63, p40 といった扁平上皮のマーカーは陽性のことが多く,話としては何一つ間違ってはいないが,,,
Cf0. CK5/6, p63(最近は p40 が流行り)は扁平上皮癌のマーカーとして頻用されているが,特に p40 以外は扁平上皮癌に特異的ではないことに注意
Cf1. 皮膚において扁平上皮癌 squamous cell carcinoma というと,浸潤癌を指すことになるので注意
Cf2. 上皮内腺癌は形態的に腺への分化を有している
・どどたん先生も違和感があるが,世の中そうなっているとしか言いようがない
○ 腺癌のみかた
・扁平上皮癌に比べると比較的簡単だが,それは構造異型が比較的出現しやすいから
・特に乳頭状の構造は正常では出現することはほとんどなく,癌と診断しやすい傾向
・また切れ方による変化ではない癒合腺管を見つけたら基本的には癌と診断
→ 古典的には腺管が癒合するとき,間にある間質が消失するために浸潤とみなす
→ 斜めに切れるとしばしば腺管は癒合様に見える
・判断が難しいのは腺管構造の不整が乏しい,高分化とされている腺癌だが,最終的には核異型が決め手
・腺癌と診断するための詳細な考え方は胃生検を参照のこと
○ 癌と診断するためには癌ではない別のものをたくさん見る必要がある
・癌と診断するためには癌ではないものもたくさん見る必要がある
・癌と迷う病変の中には「癌と紛らわしい良性病変」もたくさん含まれている
・また癌を否定するためには,それが癌ではない何かを知っている必要がある
・例えば,よく若い病理の先生は結節性筋膜炎を診断する時に迷う(実際に症例に遭遇すればわかります).これは結節性筋膜炎自体に関する知識よりも,結節性筋膜炎に見える結節性筋膜炎ではない別のものをちゃんと理解しているかどうかに寄る.知識は多ければ多いに越したことはない
○ 食道の spindle cell lesion は平滑筋腫のことが多い
・胃,結腸直腸でみられる spindle cell tumor の多くは GIST であるが,なぜか食道では平滑筋腫のことが多い
・もちろんどうせ免疫染色を染めるから別にわからなくてもいいんだけどなんとなく頭に入れておくと便利
・ちなみに GIST だと c-kit が原則的に陽性(他には DOG1, PDGFα),平滑筋腫であれば αSMA, Desmin あたりが陽性になるので,免疫染色である程度 clear cut に区別される(紛らわしいこともあるけど)
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