2017/05/30 1st edition.
2017/07/07 Last updated.
○ 腺癌 adenocarcinoma
・病理総論で言う腺癌でよい.胃型,腸型に分けることになるけれども,(正直言うとほとんどが腸型であり,実際上はとりあえず)腺癌といえばあまり問題ない
・分化型(pap, tub1, tub2)及び未分化型(por1, por2, sig)に分けることが多いが臨床的に必要なことであり病理学的に言及する必要はない.分化・未分化というキーワード自体に違和感がある
・細胞異型,構造異型から診断f
細胞異型は核が腫大し,大小不同,クロマチン濃染,極性の乱れが強い(± 核小体明瞭,核分裂像)があり,
腺管構造の不整については,胃生検においける乳頭状構造は癌が示唆されやすく,また少なくとも切れ方による変化ではない「癒合腺管」については腺癌(中分化)としてよい
・細かい組織型については本をよむこと.大体は読めば分かる
・手つなぎ癌:細胞異型は弱い腺癌としてある意味有名.どどんぱせんせ的な解釈としては手を繋いでいる時点で,腺管構造の不整が強くそれだけで腺癌と診断できる
○ 腺腫と腺癌の違いについて
・腺腫 adenoma とされている病変は実は少ない.胃癌では adenoma-carcinoma sequence が確立されていないことになっているので,もし腺腫と腺癌の合併を疑った場合には全部を腺癌としなくてはいけない
・どどんぱせんせい的には(腸型)腺腫というのは「細胞質は好酸性,核は一様に腫大しておりクロマチンも濃染.極性の乱れは軽度,の比較的単調な腺管が密に増殖している」という風に解釈している
・よって細胞異型,構造異型から少しでも腺腫を逸脱しているような病変(例えば,乳頭状構造を呈している腺腫)なんかは比較的癌よりに診断している
・生検検体で,腺腫と診断するのは慎重になったほうがいいかもしれない(EMR, ESD 検体で腺癌が出てくることはままある).もっとも腺腫と腺癌の鑑別が難しいような病変は(腺腫と診断してしまって)少々ほっといても大して進行はしない
・ただ,腺腫 vs 腺癌は施設間の差もあるため,上記を念頭において上司に従うのが無難
○ EBV 関連胃癌は分かればよし
・胃癌取扱い規約では gastric carcinoma with lymphoid stroma みたいな診断で EBV 感染がなくてもつけてよいことになっているがまぁ EBV 感染を証明できなければ普通は付けない
・癌であることには変わりないので仮に間違えてもダメージは少ない
・他の腫瘍でもとりあえずリンパ球が高度に浸潤すること自体が予後がよいみたいな良い方がされている(Cf. 乳腺の carcinoma with medullary feature)
・組織学的には高分化腺癌+豊富なリンパ球の場合と低分化腺癌+豊富なリンパ球の場合があって EBER1 in situ hybridization をして EBV の DNA を検出することが出来る(いわゆる I 型の潜伏感染)
・ちなみに LMP1 や EBNA2 といった抗体は II, III 型で発現するので EBV 関連胃癌では基本的にやっても無駄
○ リンパ腫にも注意せよ
・胃には H. Pylori 感染からの MALT lymphoma は有名,他には diffuse large B cell lymphoma もある
・MALT lymphoma を診断する前に,「リンパ球の単調さ」に気づく必要がある.普段見ている検体はリンパ球,形質細胞,好酸球などかなり多彩な炎症のはず.その炎症細胞が同じような顔つきをしているリンパ球に置き換わっているのがまず弱拡大で気づくべき印象.その次に腺管破壊 (lymphoepithelial lesion; LEL) があるかをみていく.LEL 自体ははそれこそ慢性胃炎でもたまに見られることがあるので,LEL のみを根拠に MALT lymphoma を考えていくと多分行き詰まる
・MALT lymphoma の組織診断:胃の MALT lymphoma の治療の第一はあればピロリ菌の除菌,と言うくらい反応性変化との境界は不明瞭.よって見える組織像も典型的なリンパ腫から,う~ん等なるようなものまである.わからない場合はわからないとした上で,GELA histological grading system なんかを参考にgray zone であることを伝える
・MALT lymphoma の免疫染色の解釈:どどんぱせんせい的にはだだだと CD3, CD5, CD20, CD79a, CD10, bcl-2, Ki67, AE1/AE3, κ,λ あたりを出しているが,κ,λ でうまく染まることは少ない印象.MALT lymphoma には特異的なマーカーがないので難しいが,CD20 陽性細胞が多ければ可能性を示唆し,CD20 陽性細胞による腺管破壊(断片的な AE1/AE3 陽性細胞)が見られれば,一応確定としている
・Diffuse large B cell lymphoma の診断はリンパ節のそれに準ずる.細胞接着性の乏しく,かつ大小不同の強い異型細胞を認識することがポイント
○ GIST vs 平滑筋腫 vs 神経鞘腫
・粘膜下層には Cajal の介在細胞というのがいてその細胞由来で gastrointestinal stromal tumor (GIST) が起こる
・生検あるいは EUS-FNA で採取されてくる
・形態的にはばらけた spindle cell 病変で,粘膜筋板がばらけたものと鑑別が必要だが,GIST の場合は単調な腫瘍細胞であることがポイント
・形態学的には正直 GIST と平滑筋腫の鑑別は厳しい.まあ昔は間違えられるくらいだったし
・免疫染色では鑑別に挙がる平滑筋腫,神経鞘腫をカバーするように出す.すなわち AE1/AE3, Desmin, αSMA, CD34, S100, c-kit, Ki67
・基本的に GIST であれば c-kit 陽性,たまに CD34 陽性.平滑筋腫であれば Desmin, αSMA 陽性,神経鞘腫であれば S100 陽性.いずれにせよ Ki67 index はおおまかには増殖能の参考
・ちなみに言うと筋系マーカーは特異性が低いものもあるので,2 種類上陽性で初めて筋への分化があるという
○ 他の癌の胃への転移はまじで注意
・普通の腺癌じゃないなと思ったら必ず既往を確認
・正直言うとどどんぱ先生は何度か転移を見落としている(よくあるケースが,腺癌と診断できたものの,実は転移だった)
・乳癌,肺癌あたりは意外とよくあるので,典型的な胃癌の腺癌に当てはまらない場合は積極的に免疫染色を出してみると良い
・あと胃生検では稀だが,内膜症というパターンもあるので,間質も含めて違和感を感じたら ER, PgR, CD10 あたりを出すとよい
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