# Introduction
- 肥大は,細胞の数は変わらず,個々の細胞がサイズアップすることで臓器全体の容量が増す適応反応である.
- 細胞の数が変わらないところが極めて重要なポイントである.
- 生理的刺激(例:ホルモン作用,運動負荷)または病的刺激(例:圧負荷,代償性負担)により,細胞は蛋白合成を亢進させ,機能単位を拡大する.
- 分裂能をもたない細胞(心筋,骨格筋,神経など)において,肥大は量的増加の唯一の適応手段である.
- その反応は可逆的であることも多いが,過剰または持続すると代償が破綻し,機能不全や細胞死へ移行する.
- 細胞数が増加する過形成と細胞数が原則的に不変である肥大とは対となる概念である.
- ただ,概念的に区別するだけで,実際には混同して使用することが多い.
# Body
肥大は生理的な適応反応から病的代償まで幅広くみられ,背景となる刺激の性質と強度がその形態を決定する.
## 生理的肥大
- 内分泌刺激や生理的負荷に対する反応である.
- 妊娠時の子宮平滑筋や運動負荷後の骨格筋などが典型例で,刺激の除去により可逆的に縮小する.
- 細胞レベルでは合成酵素活性が亢進し,筋原線維や細胞内小器官の増加がみられる.
## 病的肥大
- 慢性的な負荷や病的刺激に対する代償性変化である.
- 代表的なのは高血圧や弁疾患に伴う心筋肥大であり,初期には心拍出を維持するが,
- 持続負荷により心筋細胞の拡大と線維化が進行し,拡張不全・心不全に至る.
## 分子機構
- 肥大では mTOR 経路や MAPK 経路が活性化し,蛋白合成が促進される.
- 同時に機械的刺激が核内転写因子を誘導し,構造蛋白の過剰発現を伴う.
- この代謝亢進は一時的な適応であり,長期的にはエネルギー需給の不均衡をもたらす.
## 形態学的特徴
- 細胞体積の増大,核の肥大・濃染化,細胞質の好酸性増強がみられる.
- 心筋肥大では核が長楕円形に伸長し,しばしば核分裂像を伴わずに細胞質が拡張する.
- 過形成との違いについて,実際にはこの文脈依存で肥大あるいは過形成と判断しており,実際の診断では細胞数を比較することはない.
- 例えば心筋は肥大であって過形成はしないし,前立腺は肥大とはいうが実際は過形成を見ている.
# Practical Approach
- 肥大は負荷に対する細胞の積極的応答であり,単なる増大ではなく機能維持のための再設計と理解する.
- 肥大が観察された際には,その刺激が一時的か持続的かを見極めることが重要である.
- 心筋や骨格筋などでは,肥大の分布・程度が負荷の局在や慢性度の指標となる.
- 一方で過剰な肥大は,代謝的限界の結果として壊死や線維化を誘導するため,適応と破綻の境界を読む所見として位置づけられる.
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