# Introduction
- 萎縮は,細胞や組織が機能を維持するために構造を縮小させる適応反応あるいは再調整の過程といえる.
- 刺激の低下,血流障害,栄養不足,内分泌の変化など,持続的な環境負荷(変化)が加わると,細胞は合成よりも分解を優位にし,容積を減少させる.
- 具体的には,細胞数または細胞の大きさの減少を特徴とし,肉眼的には臓器全体の容積縮小として観察される.
- この過程は死ではなく生存のための節約であるが,この適応が限界を超えると,代謝は停止し,細胞死(壊死)へと移行する.
# Body
萎縮にはいくつかの機序があり,いずれもその背景には「萎縮が起こる理由」という文脈が存在する.
## 生理的萎縮
- 発達や加齢に伴い生理的に生じるもので,胸腺や卵巣,骨格筋などにみられる.
- 必要な機能を終えた臓器は代謝を抑え,構造を簡素化する.
- 細胞の生存は保たれるが,機能は縮小する.
## 廃用萎縮
- 長期間の不使用による代謝低下に起因する.
- 固定肢の骨格筋や義歯欠損部の歯槽骨などが典型例である.
- 刺激の欠如が,構造維持に必要な信号を断つ.
## 血流・栄養障害による萎縮
- 動脈硬化や圧迫による血流低下により,細胞は慢性的な飢餓状態に陥る.
- エネルギー需要に供給が追いつかず,リソソーム活性化や自己融解が進行する.
- 結果として臓器は均質に小型化し,被膜下線維化を伴うことが多い.
## 内分泌性・神経性萎縮
- 内分泌刺激の低下(例:副腎皮質の ACTH 欠乏)や神経支配の消失(例:神経損傷後の骨格筋萎縮)により生じる.
- 依存関係が絶たれると,細胞は維持よりも安定化を優先する.
## 形態学的特徴
- 細胞体積の減少,核の濃縮,細胞質の好酸性化,脂肪沈着,間質の相対的増加,消耗色素としてリポフスチン沈着などがみられる.
- 電子顕微鏡的には,リソソームの増加やオートファジー小体の形成が特徴的である.
- オートファジーは生存戦略のための自己貪食である.
- これらの変化を観察した際には,なぜ萎縮が生じたのかという背景に目を向けることが重要である.
# Practical Approach
- 萎縮は,特定の疾患というよりも多くの病態に付随してみられる背景変化である.
- 萎縮の認識そのものも重要だが,なぜ萎縮しているのかを考察することで,病変の持続期間,原因,予後を推定する手がかりとなる.
- つまり萎縮は,「結果」として観察される形態であると同時に,「過程」を示唆する時間的な指標である.
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