2017年7月3日月曜日

前立腺生検のやっつけ方【4. 背景病変,TUR-P について,所見記載方法】

2017/07/03 1st edition.
2017/9/14 Last updated.

○ 背景の前立腺にも一応注意を払う 
・腺癌について述べてきたが,癌を見つけるためには正常(あるいは前立腺肥大)の組織に見慣れていることが重要で,日頃からどこまでが非腫瘍性なのかを認識しておくと有用(良性の所見は多彩)
・萎縮腺管にも注意:小型の腺管ばかりに注意が注がれていると,萎縮腺管も注意が必要.萎縮腺管の多くは腺管の丈が短く,小型ながらも拡張しているように見える
・前立腺肥大を意識:増えているのは腺だけじゃない.腺が結節状に増生するのに加えて,間質も平滑筋細胞とともに増生することが多い (fibromucular hyperplasia).ちなみに言葉にうるさい人は前立腺過形成だよ,と指導してくるので一応注意(肥大=細胞体積が増大,過形成=細胞数が増大)

○ TUR-P の標本の作り方・みかた〜全部は面倒なので見ない  
・前立腺肥大に対して行われた TUR-P に対してどれくらい作るのかというのは結論は出ていないが,10-12 g くらい作れば良いとされている
・施設によっては全部標本を作製しているところもある
・TUR の標本は断片的になっていて,はっきり言って見にくい,見逃しても仕方ない.そういう気持ちで見る(心の声:小さい腺癌なんて見逃しても誤差だよ,誤差)
・心の声も重要だが,基本的に癌はどこをどう切っても癌に見えるため(深達度を無視すれば)あまり診断上問題となることは少ない
・ここからは施設ごとの対応だが,全ての標本に対して免疫染色を行っておくと見逃しの可能性が減る

○ どどんぱ先生的前立腺針生検の診断の仕方 
・4 倍で風景を見るように,あたかも気球から地上を眺めるように見る(背景の前立腺はゆったりしていて,おだやか,とかゆったりしている,と表現される)
・すると小型の腺管が密集するところがある(そうぞうしい,とよく表現される)
・拡大を上げて(10 - 20 倍程度)腺管の二相性が消失しているのを確認,Gleason score をつける(一本ごとに記載)
・難しい場合は免疫染色,それでも難しい場合は atypical glands と記載
・心の声:1か所でも前立腺癌を見つければ後は無罪放免だ!(大きな声では言えないが,検査センターで診断された前立腺針生検で複数箇所に癌がある場合,抜けていることがままある)

○ 最後に 
・Ductal carcinoma 等についてはとりあえず言及はしていない.
・非腫瘍性病変についてもあまり言及していない(こちらは後々の改訂で追加予定)

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