2017/07/03 1st edition.
2018/5/28 Last updated.
〇 Urothelial papilloma の診断は慎重に
・乳頭状増生で,尿路上皮の異型がないように見える場合(umbrella cell が被覆している)は urothelial papilloma とつけたくなる
・Urothelial papilloma は比較的まれな病変でしかも若年者に多いとされる
・膀胱鏡をする年齢層が高齢者に多いことを考えると,安易につけずに non-invasive papillary urothelial carcinoma, low grade を見ている可能性を考慮したほうがよい
・癌のように見える良性病変に注意も参照のこと
○ 平坦な病変は慎重に
・平坦な病変の癌は urothelial carcinoma in situ となるが,これをつけると治療の選択が限られる(基本的には膀胱全摘が視野に入ってくる)
・生検, TUR で全て平坦でかつ,細胞異型が高度であれば urothelial carcinoma in situ となる.少しでも papillary な増殖があれば papillary urothelial carcinoma の土台で戦わせた方が無難
・上皮のびらん状変化が強い場合,ある程度の異型細胞の量があれば urothelial carcinoma in situ とつけるか,atypical epithelium としてフォローアップを促すのが無難(これはurothelial carcinoma in situ を否定できない異型上皮であって urothelial dysplasia とは書かないほうが良い)
・異型の弱い平坦な尿路上皮病変:urothelial dysplasia とする(定義上では urothelial carcinoma in situ, low grade とはしない)が,結構人により範囲が曖昧な気がする.これは取扱い規約が悪くて,規約の写真はあんまり異型のない上皮も載っている
○ 尿路上皮の異型は low grade / high grade で分ける.G1-3 は一応古いことになっている
・非浸潤性の乳頭状尿路上皮癌は low / high grade で分ける
Low grade:異型が弱く,核分裂像が少ないもので傘細胞が見られて良い
High grade:異型が強く,核分裂像もぱらぱら,大小不同が強いもの
両者の中間的なものはどうしても発生するのでそのときはどどたん先生は G2 相当としている
(この解き方だと,G2 が何であるかを知る必要はないことになる(笑))
・平坦な尿路上皮内癌は基本的に high grade でよい,というか low grade と考えられる病変は実際には urothelial dysplasia に入れていることが多い.むしろ high grade ではないものを urothelial carcinoma in situ としない方がよい
・日本を代表する泌尿器病理医である某先生は「浸潤しそうなら high grade, しそうにないなら low grade」と言っていたが,どどたん先生には理解は難しい
・旧分類は一応併記:旧分類の G1-3 は再現性が低いことと,みんなが G2 に分類してしまい予後との相関が不明瞭であるため,一応現行規約では併記程度の扱い
○ 癌のように見える良性病変に注意
・von Brunn's nest:
上皮下の間質内に胞巣を作る.拡張した嚢胞状構造であれば cystitis cystica, 腺様構造であれば cystitis glandularis となる(両方見られれば cystitis cystica et glandularis)
たまに浸潤癌と間違われる
・Inverted papilloma:
内反性といって異型の乏しい尿路上皮が比較的大きな胞巣を形成し,上皮下に嵌入するように増殖
浸潤性尿路上皮癌とたまに間違えられる(間違えた困るが...)
通常尿路上皮癌は小胞巣を形成しパラパラ浸潤するので,大きな胞巣を作らないことが多いのが鑑別ポイント
・Urothelial papilloma:
乳頭状構造を示す腫瘍の鑑別診断として重要だが!これは頻度がとても低くかつ若年に多い傾向.少なくとも高齢者の腫瘍であればとりあえず,papillary urothelial carcinoma としておくのが無難
○ 尿路上皮癌は腺,扁平上皮に分化することもある
・尿路上皮癌はときに腺癌あるいは扁平上皮癌に分化することがある
・ほとんど腺癌あるいは扁平上皮癌であったとしても一部に明らかな尿路上皮癌があれば,urothelial carcinoma with glandular/squamous differentiation として診断
・腺癌あるいは扁平上皮癌のみからなっているときには,他の腫瘍の浸潤を rule out する必要がある(よくあるのが子宮頸部癌あるいは結腸直腸癌からの直接浸潤)
○ 小細胞癌はちょっとでもあったら小細胞癌(今のところは)
・現行の取扱い規約では小細胞癌成分があれば何があろうと small cell carcinoma として報告することになっている(small cell carcinoma 成分が予後を規定するため)
・しかし,WHO 2016 の基準では small cell neuroendocrine carcinoma という名前になっていて,腫瘍の大半を占めないとつけられないことになっている
・何れにせよ,成分の多寡を記載する方が良い
○ 普通の尿路上皮癌じゃない場合
・前立腺癌の膀胱浸潤に注意:前立腺尿道部の生検の場合は前立腺癌の膀胱浸潤の可能性もある
・大腸癌,子宮体癌・s頸癌の直接浸潤に注意:まぁ大体臨床的にわかっていることが多いが,申込書に記載されていないときもあるので,変だなーと思ったらカルテを見るか,免疫染色へ go
0 件のコメント:
コメントを投稿