2019年9月23日月曜日

皮膚筋炎 dermatomyositis

診断にあたって参考となるサイト・本:
臨床所見:
  • 上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹),体幹の紅斑,手指関節背面の局面状皮疹 (Gottron 徴候) などの皮疹
  • 10-30% において内蔵悪性腫瘍を合併
  • 多形皮膚萎縮症を残すことがある
  • 厚労省の診断基準あり,この基準に従えば皮膚及び筋生検はいずれも組織所見は診断に必須ではない
組織学的所見:
【皮膚生検】
  • 表度は多少萎縮性,ときに表皮突起が消失 or 平坦化
  • 角層はほぼ正角化性 → Gottron 徴候部では角質増生と表皮肥厚
  • 表皮・真皮境界部ではしばしば顕著な液状変性,リンパ球が表皮・真皮境界部に沿って散見され,メラノファージを伴う.時間経過とともに基底膜は肥厚
  • 真皮浅層では比較的軽度の血管周囲炎,血管拡張.ただし深部の炎症は目立たない
  • 真皮網状層は浮腫状,膠原線維間にムチン沈着
  • 終末期では表皮萎縮,平坦化,液状変性,メラノファージ,真皮浅層の毛細血管拡張 → 多形皮膚萎縮症の所見
【筋生検】
  • 基本的には筋萎縮で,perifascicular atrophy が特徴とされる(筋束がある程度まとまって見られないとそもそも評価できないか)
  • リンパ球浸潤が見られることが多く,CD4 > CD8 である(Cf. 多発筋炎は CD8 > CD4)
鑑別診断:
  • SLE とは臨床的に鑑別するしかない
診断をする上での雑感:Clear cut に診断できる症例は少ない印象.結局もやもやしながら診断している.筋生検でリンパ球浸潤が見られれば,CD4/CD8 くらいはしてもよいかも.

2019年9月13日金曜日

三流病理医マニュアル etc の方向性について

# Google slide で

ちょっとまだ迷っているところがあるのだが,なるべく google slide に統一しようかと考えているところ.とはいえ,スライド式じゃなくてベタなテキスト式の方も必要だとは思うがその両立が難しい印象.

# といわけでとりあえず作ってみる

原則的には総論的な内容は google document で各論は google slide で.最近は PathPresenter もあるので,症例をそこから引用すれば,大抵は手出しをしなくてもなんとなる自体になってきたような気がする.

実際 lecture なんかを聞いても,手持ちの症例でまかなえる人なんて誰もいなくてたいていは論文から何かしらの引用をしている.出版するときにはまた話は違うんだろうけど,とりあえずそんな予定もないしいいでしょう.

2019年9月11日水曜日

スターバックスにて

# カナダのスタバは意外と救いか

海外へ行くと大体そうなるのだけれども、一人でご飯を食べに行くところがなくて難しい。レストランは意外と高くついてしかもそもそも何を食べたら良いかわからないという根本的な問題がある。たまに偉い先生とご飯を食べに行くと、大体一人当たり1 万円は見ておかないといけなくて、これを毎日すると結構きついな、という感じになる。まぁそれだけ稼げばいいんだろうけどね。

というわけで、気楽に食べれるように、大体いつもマクドナルドとかのファーストフードを探すのだが、たまになかったりするとしょうがないからコンビニでご飯を買ったりとなかなかそれはそれでひもじい思いになる。

今回はたまたまうろついていたらスタバを見つけて早速入る。オーダーの仕方が若干違ったり(商品を受け取るために名前を名乗るみたいで、最初名前を聞かれた時になんで聞くのか??と一瞬固まってしまった)するけれども、おおむね同じ感じ。

商品の値段は日本と同じで若干高めだが、まぁ食べ物はそこそこだし、そこそこの空間ということでまぁいいかなと思って滞在中は愛用することにしている。学会場からも徒歩数分で近いし。

#カナダに来ている日本人

話の主はこちらで、よくあるスタバのアンケートで声をかけられて、店内が綺麗かとか店員は優しいかとかそういった、まぁありきたりな質問。意外と?清掃も行き届いていて、外国らしからぬ、というか日本とほぼ変わらない快適な空間だったのでそう答えたのだけれども。

話している途中で、自分が日本から来ていることを告げると、ここのスタバでも何人か日本人スタッフがいるという話。どういう人たちが来るのかと聞くと、多くはworking holiday できていて、移住してくる人もままいる、とのこと。お客としてはこれらに加えて、おそらく留学生?と思われる人もいると言っていた。

まぁ比較的有名な街なのでいても全くおかしくないのだが、そこそこ日本人はいるのだと実感。ただそれにしても日本語が少しくらい通じても良いのでは?と思うが、こんにちわ以上の返事が返ってきたことはまだない。

# 中国語の看板が多い

もう一つ気になったことは、空港をはじめとして中国語の看板が比較的多い事。空港の掲示物も英語・フランス語・中国語で、公用語でもなんでもないのに中国語が多い。街中も(ゼロではないという意味で)意外と中国語が多くて、街中でも中国語を比較的よく聞く。

まぁ世界中どこにでも中国人がはびこっていることの証なのだろう。というかまぁそのことに対してどうこういうわけではないのだが、もしかして国際語としては英語やフランス語よりも中国語を覚えた方が survive するという意味では良いのでは?と思い始めた。中国人はほぼどこの国でもコミュニティを形成していて、中国語だけで生活できる生活圏が存在している。

下手に英語で話をして孤立するよりも、中国語を話してそのコミュニティに浸った方が生き延びやすいような気がしてきた。そういう意味では中国語は真の?国際語なのか。

女医問題について

# 女医の敵は女医?

今学会中で他の病院の先生と話す機会があった。その時にふと東京医大の女子医学生の差別問題に波及した。

その時に話をした人が二人とも女医ではあったが、その二人は結論的には女医の問題は仕方ないという、まぁ東京医大の対応を肯定するような発言だった。

能力があるとかないとかの問題はさておき、その女医は二人とも診療科長の立場であったため、その立場でものを語ろうとした時には、男女の立場関係なく仕事をうまく回せるか、ということに意識を注ぐことになるのだろう。

結局途中で出産なり子育てなりで離脱することになり、フルで働ける人は少なくて、結局微妙な立ち位置で、悪く言えば楽なポジションで安住してしまう。それは他の出産、子育てをしない女医や男性医師からはあまり快く思われない。

# 子育てを隠れ蓑にしすぎている印象も

結婚していても、出産、子育てがない場合は基本的な条件は男性医師とは変わらない、はず。という考えが正しいとすれば、結婚しているからということでよくわからない配慮をされている女医がいるのもあまり解せないところはたまにある。

少なくとも賃金においては男女差別はないのと、時間外は出ないことが多いことを考えれば、いわゆる逆差別とも言える。

さらに子育てに必要だからと言っても、ちょっと配慮しすぎなのではないか?という印象も拭えない。そして一番の問題は配慮を文章化していることが少なくて、なにをどこまで、というのが本人の主張や上司の理解の程度に強く依存していること。ルールがなければ議論や比較も交渉もしにくい。

# 結局は見た目の人員よりも戦力がダウンするということ

それをどのように理解し実践するかということに他ならない。




2019年2月3日日曜日

病理診断における誤診のパターン

# 病理診断における誤診問題

病理診断における誤診というのはいくつかのパターンに分けられている.しかし実際問題まだ焦点の当たっていない問題であり,あまり系統だった分類や検討がなされているわけではない.今回はこの病理診断における誤診の問題について取り上げてみる.

なお,このブログはどちらかというと病理診断に興味のある医療従事者を対象としており,専門的な用語がしばしば登場する.非医療従事者については積極的には対象としていない.

# 誤診のパターン

誤診の場合に問題となるのは腫瘍性疾患が圧倒的に多い.よってしばらくは腫瘍性疾患を念頭に話を進めていく.腫瘍性疾患の誤診は大きく
  • がんをがんではないと診断したもの(悪性を良性と診断)
  • がんではないものをがんと診断したもの(良性を悪性と診断)
  • がんではあるが組織型を間違えたもの(悪性の中での診断の違い)
  • がんではないが組織型を間違えたもの(良性の中での診断の違い) 
に分類される.どれが一番患者さんにとって不幸かというと.悪性→良性という意見と良性→悪性という意見があり,なかなか意見の統一を見ないが,どっちもそれはそれで大変ではある.間違えることも不幸だし,そもそも病気になる事自体が不幸であると言ってしまえばどうしようもない.

# なぜ悪性を良性と診断してしまうのか

一つ大きな要因は見逃しがある.もっというと,量的に少なく検索に引っかからなかった場合.例えば胃生検でわずかに signet ring cell が含まれていた場合など.これは検査の限界ともいえるもので,数多くしていると必然的にそのような症例が出てしまうのは仕方ない(どどたん先生はこういうのは病理診断の感度・特異度の問題と捉えており,誤診とは別の枠で議論すべきだと思っているが,現実的には誤診の枠で語られている).

もう一つは臨床的に悪性を疑っておらず,その臨床診断に引っ張られて,診断してしまった場合.悩ましい時に,臨床的に良性と言っているから良性でいいかという判断をする病理医がたまにいる.まぁ態度としてはあまり褒められたものではないが,このような診断はあまり問題となることは少ない.悩ましい症例というのはどこまで行っても悩ましくて一瞬の判断がすべての流れを変えるということは経験上そんなに多くはない

最後は純粋にその疾患を知らない場合.これが一番タチが悪い.例えば良性に見える悪性腫瘍の筆頭格としては,高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)がある.これ,多分この疾患を知らない人にとってはただの脂肪腫にしか見えないけど,病気を知っている人はどんなに脂肪腫っぽく見えても高分化型脂肪肉腫と診断している.この手の間違いはどこの病院にも必ずあって,高分化型脂肪肉腫については,「脂肪腫なのに結構再発して切除しているよね」ということが多い.救いようのない状況としては,臨床医自身もあまり理解していないことが多く,その病院の中ではよく再発してしょっちゅう切除する脂肪腫という扱いになっているかもしれない.変な言い方だが,誰も知らなければそもそも誤診なんて生じようがないのだ.

# なぜ良性を悪性と診断してしまうのか
いくつかあるがその代表格の乳腺を例に考えてみる.硬化性腺症という病変があるが,画像上は引き連れを伴うことが多く悪性のように見える.しかし,筋上皮を含む二相性が保たれる明らかな良性疾患であり,原則的に手術は不要である.それを鑑別するために針生検が行われ,病理学的に検討されることが多い.

画像上難しく見えるものは,やはり組織学的にも難しくて,結構な確率で癌と間違える.もう少し詳しく説明すると,多くの人は硬化性腺症が癌と間違えやすいということを知っているため,間違えそうになる前に免疫染色を行うなりして,診断を補助している.

とある検査センターではこの硬化性腺症と癌を過去数年で 2-3 例誤診したとして,ある時期以降悪性を疑う病変に対しては全例免疫染色を行っている.何千件もの乳腺針生検を診断しているうちの数例は誤差の範囲内ではないかと正直思っているが,それくらいインパクトがあるらしい.

ちなみにこんなに有名なら間違えるのはおかしいのではないかと思う人もいるかもしれないが,それでも間違えている.あとから見直せばあーたしかにおかしいとも言えるが,実際に間違えて問題となっているケースを(自験例を振り返ってまたは他人の例を)観察すると,典型的ではない組織像や免疫染色の結果であったとしてもえいや!という思い切りと,あと忙しさによる余裕のなさに帰せられるような気がしている.この2つは同義といっても良いかもしれない.

この間違える要因というのは実は臨床医のそれと本質的な同じような気がしている.

# 悪性間あるいは良性間での誤診について

総論的な言い方をすれば,悪性と良性のカテゴリーが大きく変わらないのであれば,大きな問題となることはそんなにない(かなり大雑把な言い方).しかしながら,近年は分子標的治療薬がかなり一般的に使用されるような状況が出てきたため,腫瘍の組織型によって適応となる薬が決まるため,今後は組織型の違いについてもシビアに問われる時代になる可能性がある.

という,考え方の他に,組織型なんてどうでもよくて,要するにその腫瘍が抱えている遺伝子の異常(転座,欠損,増幅など)が分かれば,治療につながるんでしょ?という今どきの考え方を持っている人もいたりして,それはある意味その通りと言える.この考え方が発展すれば,atypical lipomatous tumor 由来の dedifferentiated liposarcoma と low grade central osteosarcoma 由来の high grade osteosarcoma の化学療法が MDM2 遺伝子をターゲットにした分子標的治療薬になる,という面白い時代になるのだろう.

# 非腫瘍性疾患の診断について

非腫瘍性疾患の誤診というのは実は難しい問題をはらんでいて,その本質は非腫瘍性疾患の多くは病理組織学的な所見ではなく,臨床診断や血液検査などの違う診断 modality によって確立された疾患概念だということである.

つまりは,病理診断自体が十分に提供された臨床診断のもとに成立しうるものなので,(臨床診断抜きの)病理診断が誤診だという批判自体が nonsense に当たる可能性が高いということになる.

例えば,SLE の皮膚所見などは,特徴的なものはあるが,どちらかというと非特異的であり,臨床診断が実は皮膚筋炎でしたと言われると,あーたしかにそうかもねということになる.それくらい非特異的.だから非腫瘍性疾患の病理診断を専門とする先生の多くは,臨床情報(臨床経過や画像所見)をとても重視している

しかし逆もまた真なりであり,きちんとした臨床診断がなされていれば,それに対して compatible with という形で病理学的な確定診断をすることができる.たとえそれが少ない検体であったとしても,そのピースを臨床像という大きなパズルに組み込むことができれば,そのパズルは完成して診断が成立しうるというもの.

もう一つ,どうでもいいことを言うと,非腫瘍性疾患の病理診断は実のところ,言ったもん勝ちのところがある.組織学的所見が overlap するために特異的な所見を提示するのが難しいことが多く,その分 expert (extreme) opinion がまかり通りやすい.

# まとめ

以上病理診断における誤診のパターンの概説をした.これは実際の症例をベースに話をするととても面白いのだが,さすがにこれを一般にオープンにするのは難しい.どどたん先生のところをローテートした先生や学生さんにはこの内容の各論に相当する内容を lecture している.

2018年12月2日日曜日

病理診断管理加算(ダブルチェック)の闇について

1. 病理診断管理加算と実態

診療報酬というシステムの中で,特別なことをした場合に加算をつけることが認められていて,病理診断においても同様.現時点では病理診断管理加算 1, 2 までで,つらつらと書かれているが,結論としては「一人で診断する場合は 1, 二人で診断する場合は 2 で算定する」というふうに理解されている.近年の厚労省との問答の内容からすると,管理加算というのは診断体制に対する加算であって全例する必要はないという旨の話も出ており,「病院に病理医一人なら 1, 二人以上いるなら 2 で算定する」というふうにして届け出をしている施設も少なからず見られる.

2. 管理加算 2 のやり方

いちおう,病理診断管理加算 2 ではダブルチェック体制を求められている.原則的に全例ダブルチェックではないものの,過去には全例ダブルチェックをしていなかったり,非常勤を挟んでダブルチェックをしていたりしていた病院が診療報酬の返還という憂き目にあった病院がある.その経験からあつものに懲りてなますを吹く,みたいに全例ダブルチェックをしている病院はそこそこある(病院によってはトリプルチェックなるものをしているところも...).

一般的にはこのダブルチェックというシステムは診断ミスや大外しと言ったエラーを防ぐ方法として優れているという文脈で話されることが多い.業務量の負担や TAT (turn around time:診断の結果が出るまでの時間) の遅延につながるなど,否定的なコメントもなくはないが,やったほうがいいかどうかに関してはおそらくみんな「そりゃやったほうがいいんでしょうね..」という意見だとは思う.

3. ダブルチェックがパワハラの温床

このダブルチェックのシステムって,極めて慎重に運用しないと,診断精度の向上どころか,イデオロギーの押し付けになりがちになる.対等な立場でのイデオロギーの押しつけは喧嘩に発展し,上下関係のある立場でのイデオロギーの押しつけはパワハラとなって顕在化してくる.これは専門医取得後でも取得前でも状況は変わらない.

病理診断というものは,そもそも診断学自体がまだまだ発展の余地を残しており不確実な上に,提出される検体や臨床情報も perfect な状態とはいいがたいものも少なからずあり,一般の人が想像するよりはるかに不確定要素が多い(その不確定さというものを理解できない一部の臨床医や患者,そして病理医!!がギャーギャーわめている).

その不確実さに対してどう対処するかで,問題の進展が決まってくる.

4. 誤診を指摘すること

最近あった症例として,どどたん先生が癌と診断したものがあったのだけれども,セカンドのチェッカーがこれは良性腫瘍じゃないのかと物申してきた.あたかもこれは誤診したのではないかという強い口調で.

ここにはこういう所見があって,ほら,これ modern pathology に載っていたこれこれとそっくりだよ.だからこれは良性腫瘍じゃないのか,と

こういう形態診断を根拠にした controversial なケースでは時として声の大きなものが勝ちがち,というか勝つ.特に異型の有無についてははっきりいって完全に主観の塊であって,異型があるという人を否定するのは極めて困難である.逆に異型がないということを覆すのは結構簡単.「ここの核腫大しているように見える」といってしまえばいいだけ.仮に結果的に違ったとしてもあくまでどう見えるかは主観の問題なわけで誰も否定はできない.

そういうわけで,対等な診断者による複数例の鏡顕では経験的に悪性よりに引っ張られがち(症例検討会などではどうしても結論が悪性寄りに向かってしまう).

この症例は,あーだこーだといろいろ説得されたが,チェッカーは途中でリンパ節転移していることに気づいたらしく結果,結果的に悪性で診断確定された.

5. 少し余談:研修医の潰し方

実は前も似たようなことを書いたかもしれないけれど,臨床医が研修医をダメにする方法論があるように(この元ネタはここ),病理でも研修医を潰すことくらい朝飯前.レジデントの先生の診断にケチをつければいい,常に.たまに溜息を付きながら.そして結果に影響のない範囲で,診断基準をコロコロ変えればい.管状腺腫を軽度とするか,中等度とするかあたりを微妙にチェックする時期ごとに変える.

優秀なレジデントからすると,先生基準がぶれてますとは面と向かって言いにくいし,万が一言われたとしても,すごく細かく細胞の異型を見つけてこういうときはこうするといいことが多いんだよ,と経験論でねじ伏せる.同じ症例なんて二度と出てこないんだから,こういうときはこうだというふうに,相手が圧倒的に不足している経験論で叩きのめせばいい.

ここで重要なのは免疫染色や FISH, PCR の結果は叩く際に用いないこと.これらのデータは客観性が高くて(もちろん使う抗体やプローベの種類によって結果が異なることもしばしばあるが),ここでネジ曲がったことを言うと全体に対する結果に与える影響が大きい.

そしてほぼ完璧に書けているレポートに対して,難癖をつけるダメ押しの一言が「〜の可能性について言及したほうがよい」というフレーズ.これってどんな完璧な報告書でも指摘可能な万能フレーズで,可能性が仮に 1% 未満であったとしても,言っていること自体は正しくて,これを否定するのは難しい.標本の上に一枚紙を置いて大きく「?」と書いて渡す(置いておく)のも効果的だ.具体的になにが悪いということを記載しないことで,相手をそこの見えない沼に追いやることができる.

しかもその鑑別診断が当たった日には,だから言ったでしょ,ということになって,チェッカーの暴走にもう手がつけられない.

6. それでも間違えた責任は first の診断者にある

いろいろな手を使ってそこまでしてチェッカーがスルーとしたとしても,責任は当然 first の診断者にある.実際最近どどたん先生の周りに起こったトラブルでも,やり玉に挙がっているのは second ではなく first である.Second の診断者も普段はあーだこーだ言いたいことを言っているくせに,トラブルが起きたときは「大変だねぇ」とどこ吹く風といった具合.

仮に間違えたことを言って直させ,結果的にそのことにより誤診になったとしても,あくまで first が納得して書き直したことになるわけで,責任はあくまで first の診断者にある.臨床医からはその過程は見えないし,また立場上強く言えないとかそういうことは裁判ではほぼ考慮されないだろう.ここで登場するフレーズが「医師免許を持っている以上,(後期)研修医だろうが責任はある」ということ.強制と責任が混在している.

7. 安全な丘の上からの攻撃 or 海の life saver 

このようにチェックする側というのは常にマウントを取りやすい立ち位置にあって,安全なところから銃を打ちまくっている状況になる.もちろんその地位にただ立っていることと,そこでなにをするのかというのは完全な別問題.だからチェッカーはそのことを十二分にわきまえた上で相当謙虚に,控えめにしないと,悲惨な状況は起こるのは目に見えていて,そして実際に回りで起こっている.

安全な丘の上から銃をバンバン撃ちまくるようなところで仕事をしていると,日々怯えながら仕事をすることになるし,海のライフセイバーのように溺れそうになっていたところを助けてくれるような存在であれば,心強いと思うだろう.その経験の違いが,ダブルチェックそのものに対する見解になる.

8. 診断の目合わせについて

ついでに,診断の目合わせのためにも,という意見が結構あるのは知っている.しかし,診断の同意を取るあるいは interobserver difference を減らす目的なのであれば,相互にチェックすることにより目的を果たすのではなく,病院内での基準を作るべき.確かに取扱い規約や WHO 分類のみで運用しようとすると細かいところで差異が発生するのはわかるけれども,それがチェックをすることで解消されるとは考えにくい.

2018年11月15日木曜日

どどたん's salon 〜 病理診断における誤診とは

〈誰もいなくなった病理診断室にて,どどたん先生と Esumi 先生が何やら話をしている〉
Dodotan Sensei (以下 DS):やあえすみ先生,今日も相変わらず美人だね.
Esumi (以下 ES):辞めてください,先生.そういうのはセクハラになるらしいですよ.
DS:芸術作品を見て,美しいといって起こられることはないだろう.素直な感想を言ってなにが悪いんだい?
ES:じゃあ先生はブスな人を見たら,本人の目の前でブスっていうのですか?
DS:確かに.なかなか鋭いな..
ES:それはさておき,先生聞いてくださいよー.
DS:どした?また太ったの?
ES:だからーーーーー,それがまたセクハラなんですよ!!
DS:まぁ確かに.で?
ES:この前盛大に誤診をしてしまって...上級医の先生が見つけてくれたから大事には至らなかったんですが,これ一人で診断していたらと思うとゾッとしてしまって.
DS:まぁよくあるよ.どどたん先生も肉芽腫とHodgkin リンパ腫,卵巣の顆粒膜細胞腫とカルチノイド,卵巣の明細胞癌と Yolk sac tumor を誤診したことがある.ホジキンは再生検までしてきて,それで,始めて気がついたな.
ES:よく覚えていますね.ってか,怖くならないんですか?
DS:怖くならないと言ったら語弊があるけど,まぁ人間誰しも間違いはあるからね.間違いからは逃れられないんだよ.
ES:でも患者さんの治療方針が違うじゃないですか,とくに肉芽腫とリンパ腫では大違いですよ.
DS:まぁ確かにHodgkin リンパ腫を見落としたときには流石に凹んだけどね.まぁ最近だと盛大にやらかしかけたのは Yolk sac tumor を明細胞癌としたときだね.このときはダブルチェックがあってよかったと思った.
ES:でも間違えたら怖くてなんか診断するのが億劫になってしまいます.
DS:まぁちょっと慎重になるくらいがちょうどいいんだよ.こういうのはイケイケドンドンよりも,なにか間違えているのかもと若干疑心暗鬼になる方がよい.

1. 誤診の筆頭格はやはり見落とし

ES:そういえば誤診ってどういうタイプがあるんですか?
DS:タイプっていうのは難しいなぁ.間違え方もいろいろあって,しかもその間違いのインパクトも様々だから一概には言えないよ.でもね,自分を含めて他の先生たちの誤診症例を見ていると大きく2つのパターンに分かれると思っている.
ES:2つのパターン?
DS:そうそう.一つは単純な見落とし.例えば胃癌の por, sig の見落としだったり,胆石症で切除された胆のうに癌を見落とした,などね.こういうのはどうせ良性だろうという先入観だったり,純粋に標本を見るのに費やす時間が少なかったりするのが原因となることが多い.
ES:じゃあゆっくり時間をかけたり,あとはセカンドチェックを導入すれば減りますね.
DS:まぁダブルチェック体制というのはこういうポカミスを防ぐためにあると個人的には思っているよ.まぁそれだけではないけどね.

2. 見落とし以外の誤診の多くはえいや!ってするとき

ES:単純な見落としは時間をかけるとか複数人で見るとかで解消できそうですが,もう一つの誤診のパターンはなんですか?
DS:もう一つは,思い切りの良さだよ.これは癌に違いない!とかこれは良性だ!と言い切ってしまうことによる誤診.
ES:あー,私もたまにあるかもしれません.悩んだ末にこれにしよっ,えいやって決めてしまうことが.
DS:そういうのって不思議なんだけど,診断を書くまではすご~く悩むんだけど,レポートを書ききった瞬間に終わったー!みたいに晴れやかな気分になってしまう.例えて言うなら,出来の悪い学生が試験終わりに気分爽快になるのと似ている.受かったか落ちたかまだわからないのに,なに気分爽快になっているんだよー!って感じ.
ES:試験終わりの感覚はなんか身に覚えが...なんか試験が終わると全てから開放されますよね.
DS:本当は診断を出したあとも悩むべきなんだろうけど,結局忘れてしまう.もちろん悪いことではないし,仕方ないんだけどね.でも2つに1つになってしまうとえいやって瞬間が必ず存在する.あれ,,,サイトケラチン陰性だけど,上皮性っぽいから癌でいいか!とかね.
ES:うーん,でもサイトケラチン陰性なら普通癌としないような気も..
DS:いろいろせっつかれて焦っていたら,普段しないようなことですらやってしまうのが人間なんだよね.基本みんなしうると考えて良いと思う.
ES:その2つないし3つくらいの鑑別診断のなかで間違えるということですね.
DS:まぁそういうこと.もちろん正解は明後日の方向にあったということもあるけどね.

3. 誤診をなくすためには

ES:結局誤診ってなくならないんでしょうか?
DS:そりゃ減らす努力はできるよ.賢くなればよい.
ES:そんな元も子もないことを言わないでくださいよ..
DS:まぁ月次な言い方だけど,誤診のパターンを理解しておくことは重要だよね.どういうタイプの誤診があるか,ということ.間違いやすいパターンでは最初から予防線を張ることができる.
ES:なるほど.
DS:あともう一つは,なるべく言い切らないことかな.ここは難しいんだけどね.玉虫色の答えを言っても誰もハッピーになれないからな.
ES:そうですよね.結局なにがいいたいかわからないこともありますし.
DS:そうそう.これも月次なんだけど,間違える時に安全に間違えるというのが重要だよね.全くわからないときは敢えて,傷が浅い方に間違える.どう診断したって同じ治療法や余後であればとりあえずいいや,と考える方法.さっきも言ったけど,みんな誤診は絶対にするんだよ.にんげんだもん.その時にいかに意識して無難な方に転ぶかということが重要なんだ.
ES:わかりました.これから気をつけて転びます.
DS:いや,えすみせんせいはまだいいんだよ,レジデントなんだから.レジデントの間は上が責任をとってくれるから盛大に転ぶべし.間違いは若いうちにやっておかないと後々すると恥ずかしいからね.まぁ年取ってから間違うこともあるからいいといえばいいんだけど.

15 年目の悲劇

# 卒後は 17 年目,病理は 15 年目 自分は 2009 年に大学を卒業しているので,2026 年 4/1 現在だと,卒後 17 年目になる.卒後 15 年目のとか,20 年目の,みたいなタイトルの本を見るが,その節目を超えてさらなる大台に突入してしまった感じはある. 初期研...