1. 細胞診専門医はとりあえず取っておいたほうが無難
細胞診専門医制度はかなり迷走している.結構古くからある専門医制度で実務的にも比較的大きな役割を果たしている割に新しい専門医制度の二階にすら入れなかった.学会員の中で臨床検査技師の割合が多く,学会もアカデミックな学会というよりも,実質的にはただの症例報告会に成り下がっている.
しかも,学会のメインを婦人科医が握っていて,実際の業務は臨床検査技師がやっている.歴史的な経緯(もともと細胞診は病理診断ではないという意見があり,病理医は細胞診に対して積極的ではなかった)もあるにせよ,色んな意味で中途半端な学会になってしまった.
しかし,今は病理医で細胞診専門医を持っていない人はかなり少なくて,それなりの立場になったときに,細胞診のスクリーナーのパートナーになれなくなってしまう.大学などの大きな病院や研究で一生を過ごすのならまだしも,市中病院に行く可能性があるのなら比較的早い段階で取るに越したことはない.
2. 自分の診断する標本の切り出しはしっかりやる
いつも不思議でならないのだが,顕微鏡観察での所見の見落としは結構シビアに言われるのに,肉眼所見,特に切り出しでの所見の見落としや整合性のなさはあまり細かく言われないことが多い.
その証拠に,組織診断で顕微鏡観察は病理医がやっているところが大半だけど(名目上はすべてそうなっているはず),切り出しは臨床検査技師にさせているところも少なからずある.別に臨床検査技師の切り出しがイマイチと言っているわけではなくて,潜在的にそういう認識があるという具体例.
切り出しがどの程度重要かというのは検体の種類は癌かどうかによるが,非腫瘍性疾患は切り出しそのものが診断に直結することがしばしばあって,切り出しが不十分であればそもそも診断ができないこともある.腫瘍性疾患でもどこが原発かわかりにくい場合は,この部分を集中的に切り出すなど,ある程度組織診断における鑑別診断を念頭においた切り出しが必要.そうでなくてもきちんと切り出しをされた標本は orientation がつけやすく,診断するときに楽.
とはいえ,一から十まで気を使ってられやしないのも事実.だから自分の診断する症例は丁寧期に切り出しをし,そうでない症例は適度に力を抜くのがベスト.組織診断の所見に手を抜くと怒られやすいけど,肉眼所見は意外とそこまで怒られないので.
3. 臨床医と喧嘩しない
臨床医との良好な関係を築くことはとても重要でなるべく喧嘩をしないこと.あと簡単に人のことを馬鹿にしないこと.これはとても重要なこと.
我々病理側の人間はどうしてもコンサルトされる側に位置するので,臨床医の落ち度が目に付きやすい.あれも書いてない,これも書いてないとバカにしがちだが,多分逆の立場になると恐らく同じことをするはず.だからなるべくおおらかな広い心で接する必要がある.別に愛想を振りまかなくても良いけど,本当の意味で病理に対して理解してくれる真摯な姿勢の臨床医は必ずや味方になってくれるので丁重に対応すること.
ただ,約束を守らないのは別で,時間を守らないとか(遅れそうなら一本電話すれば済むはず),入れるべきところに入れていないなどは簡単に許さずに,淡々とルールに従って処理する.場合によってはペナルティを課す.
病理と言うのはコンサルテーションサービスの中でも若干特殊で,顧客からの信頼が多少落ちても検体はちゃんと出してもらえるし,よっぽどじゃないと首にならない.多少誤診したくらいですべてが終わるわけでもない.
2018年8月24日金曜日
逃げの病理診断
1. 皮膚生検,腎生検,あと骨腫瘍はなるべく所見診断を心がける
皮膚生検で特に非腫瘍性疾患,腎生検は病理組織ではなくて臨床所見(身体所見だったり,血液検査結果だったり)が根拠になっていることが多い.その診断過程の中で組織診断というのはあくまで付随所見であって,これを根拠に特異的な疾患名をつけると結構やけどする.
皮膚生検,腎生検で確定診断のレポートを書いている人は,臨床情報(経過や血液検査所見,画像所見など)を読み込んでいるか,臨床医ときちんとディスカッションしている場合に限る.逆に言うとそこまでするつもりがなければ,おとなしく所見診断にしておいたほうが無難.どうせ臨床医も標本見てるし.もちろん非腫瘍性疾患だから間違えても方向性はそんなに変わらないのでまぁまずくはないけど.
骨腫瘍は事情が少し難しくて,benign から intermediate malignancy までの病変を診断しようとすると画像所見も含めた臨床情報が必要不可欠.申込書に書いてある年齢,性別,病変の部位が診断しようとしている組織型の典型像と少しでも違うようなら,確定診断を書かずに臨床医あるいは専門家に丸投げしてしまうのがおすすめ.専門家でもたまに間違えてあちゃーみたいなことをしている状況を考えると,組織所見だけで戦うのはとても危険.
タイトルには書いていないけど,リンパ腫の場合は,微妙に微妙.リンパ腫の診断で良悪性が大きく変わることはないけど,悪性のなかで亜分類が難しいときもある.Flowcytometry と合わせての評価になる.たまに分類によって治療方法が変わったりすることもあるから,B or T だけ示してあとは所見的な診断もありか.それにしても WHO 分類は細かすぎてちょっと実務からかけ離れ始めている印象.
2. 学会発表の写真撮影依頼はほどほどで対応しておく
臨床医の行う学会発表は我々病理医からすると,かなりひどい,言い方を変えれば無茶苦茶な発表が多い.これは別に臨床医が悪いわけではなくて,病理診断の報告と比較すると,臨床診断や治療というのは不確定要素があまりに強くて,いわゆるきれいな病歴というのはそうそうない.その中でなにか neues を見つけて発表しようとするのだから,必然的にやるべき検査が抜けていたり,適応外の変な治療をしていたりする.
まぁそういう前置きはおいて,臨床医の発表に病理診断が必要と言われることがあり,写真の撮影を依頼されることがある.こういう場合,一番良いのは写真だけを渡す方法.たまに CT や MRI を貰いに来る感覚で,とりあえず画像ください!という先生がいるが,これは一番楽である.渡すだけで終了になるので.
ちゃんと説明しないとわからないでしょ?と文句を言う人がいるかもしれないが,たかだか 10-15 分話しをして彼らが理解できるか.いままでの経験では 20 分くらい熱心に教えても肉芽腫と肉芽組織の違いをきちんと理解できる人はいなかった.教え方が悪いと言われればそれまでだが.
要するに効率が悪いし,結局彼らは理解できていないしで臨床医に組織学的所見を丁寧に教えることにあまり意味はない.なので,教えるにしても,細かい用語は抜きにしてここが癌です,ここが炎症です程度にしておいたほうが無難.
別に適当にあしらえではない.クオリティを上げても無駄だ,ということ.愛想よくはいはい!いいですよといって写真を渡しておけば臨床医からの評価も上がるだろう.詳細な組織学的所見の需要というのはそんなにない.
3. 組織学的所見についてディスカッションする際に異型の有無については時間の無駄
腫瘍の病理診断の場合に異型の有無について議論の的になることはしばしばある.どどたん先生の長年の経験によると,異型の有無のディスカッションは大抵意味がない.ただの意見の押しつけでしかない.今風にいうと観察者間の一致率であるκ係数が低いということになる.
はっきりいうと,異型の定義自体があいまいで,核の大小不同とか明瞭な核小体とか極めて主観的.そんな主観的な評価の積み重ねで腫瘍の診断をしているわけで,意見の相違が生じることは十分有り得る.しかも,異型のあるなしについてはある種の先入観もあり(手の cartilaginous tumor では異型は積極的に評価しない,など)clear cut に割り切れない.
異型の評価をするなと言っているのではない.Controversial な場合に細かく議論をしても無駄だということ.10 人中 10 人が異型ありと判定しているものについて,自分が異型なしと判断したのなら確かにずれているという点で問題があるけど,そうでなければ,つまり異型なしと判断してくれる人が他に誰かいたらそこまで気にする必要はないということ.はいはい,ととりあえず従っておいて責任をとってもらえば良い.
皮膚生検で特に非腫瘍性疾患,腎生検は病理組織ではなくて臨床所見(身体所見だったり,血液検査結果だったり)が根拠になっていることが多い.その診断過程の中で組織診断というのはあくまで付随所見であって,これを根拠に特異的な疾患名をつけると結構やけどする.
皮膚生検,腎生検で確定診断のレポートを書いている人は,臨床情報(経過や血液検査所見,画像所見など)を読み込んでいるか,臨床医ときちんとディスカッションしている場合に限る.逆に言うとそこまでするつもりがなければ,おとなしく所見診断にしておいたほうが無難.どうせ臨床医も標本見てるし.もちろん非腫瘍性疾患だから間違えても方向性はそんなに変わらないのでまぁまずくはないけど.
骨腫瘍は事情が少し難しくて,benign から intermediate malignancy までの病変を診断しようとすると画像所見も含めた臨床情報が必要不可欠.申込書に書いてある年齢,性別,病変の部位が診断しようとしている組織型の典型像と少しでも違うようなら,確定診断を書かずに臨床医あるいは専門家に丸投げしてしまうのがおすすめ.専門家でもたまに間違えてあちゃーみたいなことをしている状況を考えると,組織所見だけで戦うのはとても危険.
タイトルには書いていないけど,リンパ腫の場合は,微妙に微妙.リンパ腫の診断で良悪性が大きく変わることはないけど,悪性のなかで亜分類が難しいときもある.Flowcytometry と合わせての評価になる.たまに分類によって治療方法が変わったりすることもあるから,B or T だけ示してあとは所見的な診断もありか.それにしても WHO 分類は細かすぎてちょっと実務からかけ離れ始めている印象.
2. 学会発表の写真撮影依頼はほどほどで対応しておく
臨床医の行う学会発表は我々病理医からすると,かなりひどい,言い方を変えれば無茶苦茶な発表が多い.これは別に臨床医が悪いわけではなくて,病理診断の報告と比較すると,臨床診断や治療というのは不確定要素があまりに強くて,いわゆるきれいな病歴というのはそうそうない.その中でなにか neues を見つけて発表しようとするのだから,必然的にやるべき検査が抜けていたり,適応外の変な治療をしていたりする.
まぁそういう前置きはおいて,臨床医の発表に病理診断が必要と言われることがあり,写真の撮影を依頼されることがある.こういう場合,一番良いのは写真だけを渡す方法.たまに CT や MRI を貰いに来る感覚で,とりあえず画像ください!という先生がいるが,これは一番楽である.渡すだけで終了になるので.
ちゃんと説明しないとわからないでしょ?と文句を言う人がいるかもしれないが,たかだか 10-15 分話しをして彼らが理解できるか.いままでの経験では 20 分くらい熱心に教えても肉芽腫と肉芽組織の違いをきちんと理解できる人はいなかった.教え方が悪いと言われればそれまでだが.
要するに効率が悪いし,結局彼らは理解できていないしで臨床医に組織学的所見を丁寧に教えることにあまり意味はない.なので,教えるにしても,細かい用語は抜きにしてここが癌です,ここが炎症です程度にしておいたほうが無難.
別に適当にあしらえではない.クオリティを上げても無駄だ,ということ.愛想よくはいはい!いいですよといって写真を渡しておけば臨床医からの評価も上がるだろう.詳細な組織学的所見の需要というのはそんなにない.
3. 組織学的所見についてディスカッションする際に異型の有無については時間の無駄
腫瘍の病理診断の場合に異型の有無について議論の的になることはしばしばある.どどたん先生の長年の経験によると,異型の有無のディスカッションは大抵意味がない.ただの意見の押しつけでしかない.今風にいうと観察者間の一致率であるκ係数が低いということになる.
はっきりいうと,異型の定義自体があいまいで,核の大小不同とか明瞭な核小体とか極めて主観的.そんな主観的な評価の積み重ねで腫瘍の診断をしているわけで,意見の相違が生じることは十分有り得る.しかも,異型のあるなしについてはある種の先入観もあり(手の cartilaginous tumor では異型は積極的に評価しない,など)clear cut に割り切れない.
異型の評価をするなと言っているのではない.Controversial な場合に細かく議論をしても無駄だということ.10 人中 10 人が異型ありと判定しているものについて,自分が異型なしと判断したのなら確かにずれているという点で問題があるけど,そうでなければ,つまり異型なしと判断してくれる人が他に誰かいたらそこまで気にする必要はないということ.はいはい,ととりあえず従っておいて責任をとってもらえば良い.
2018年6月11日月曜日
病理診断を学ぶ 〜 細胞診
2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
特に変更はない.細胞診は洋書もあるにはあるのだが,洋書は動きが悪い.個々の領域で本が出版されたりはしているのだが,まとまった教科書的な本は近年はほとんど出ていない.その一方でミラノシステムやパリシステムなど,各領域のガイドライン的な本が精力的に出版されている.細胞診は頭を使って診断を推定していくというよりももしかしたら,検査に移行しているのかもしれない.
2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
ちなみに細胞診とは言っても基本は病理学なので,病理学の本も参照のこと.特に細胞診専門医を取ろうとする臨床医は自分の科以外の知識はかなり少ないはずなので,これらの本を読んで難しいと感じたら,シンプル病理学などを通読して通り一遍の知識を軽く頭に入れておくと良い.
・読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 ベーシック篇 (2014)
・読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 アドバンス篇 (2014)
おすすめ度:★★★★★
この本ははっきり言ってアンチョコ本の部類に入る.この本を読んだからと言って,細胞診ができますなどと言える代物でもない.しかし,それでもこの本をおすすめするのは,おそらく細胞診の勉強をしている人は(養成所の学生を除けば)病理部でルーチンワークをこなしながら仕事をしている人か,あるいは普段細胞診に接することのない臨床医のはず.
そのような人に「細胞診を学ぶ人のために」を渡してこれを読めというのははっきり言って酷な話.細胞検査士や細胞診専門医を受験しようとしている人はなるべく細切れの時間を活用して勉強しないないといけなくて,そういうニーズに沿っている.
・ポケット細胞診アトラス (2013)
おすすめ度:★★★★★
この本の良いところは,写真が豊富,写真がきれいなところ.写真がきれいというのは当たり前のようでとても重要で,汚い写真をいくら睨んでもポイントはつかめない.解説もそこまで長くなくてサラッと読める.
もちろん解説の深さは若干足りないし,これ一冊,そもそもこの本だけで勉強する人はいないだろうから,何度も何度も繰り返しめくって output と復習をすると画像のイメージが定着する.
・細胞診アトラス (2021)
この本の良いところは,写真が豊富,写真がきれいなところ.写真がきれいというのは当たり前のようでとても重要で,汚い写真をいくら睨んでもポイントはつかめない.解説もそこまで長くなくてサラッと読める.
もちろん解説の深さは若干足りないし,これ一冊,そもそもこの本だけで勉強する人はいないだろうから,何度も何度も繰り返しめくって output と復習をすると画像のイメージが定着する.
・細胞診アトラス (2021)
おすすめ度:★★★★☆
比較的新しい細胞診のアトラスで,組織と対比して参照できる.確かに悪くはないのだが,写真が少し小さめであることと,1:1 の対比で少し広がりに欠ける.総じて悪くはない.
・改訂新版 臨床検査技師を目指す学生のための細胞診 (2013)
おすすめ度:★★★★☆
この本は臨床検査技師の学生向けの本だが,どちらかというと病理医あるいは臨床医向け.病理のトレーニングを始めたレジデントが細胞診の標本の作り方や極めて基本的なことを学習する機会は実はそんなになくて,かといって当たり前過ぎて意外とスクリーナーに聞けない.この本で大まかな知識を入れてスクリーナーに質問するとよい.臨床医もなおさらで,おそらく標本作製の過程など見たことない先生も多いだろうから,この本はわかりやすく書かれている.薄いのですぐ読める.
サイトスクリーナーを目指す臨床検査技師はこの程度の内容は学習済みなはずなので,基本不要のはず.
・細胞診ワンポイント講座―知っていれば役立つ細胞所見 (2017)
おすすめ度:★★★★☆
細胞診はキーワード(あるいはクルー)が結構多く,その意味を理解していないと何を言っているのか,どういうニュアンスなのかがわからないことがままある.そんなときに役立つ本.通読するというより調べ物的な立ち位置.
・アトラス細胞診と病理診断 (2010)
おすすめ度:★★★☆☆
この本は内容が若干古くなってはいるが,一冊で大まかに網羅できるためとても便利.細胞診と組織診を対して提示しているので,比較して勉強できる.ただ,言うまでもないが写真が少ないため,知識を入れ込むための本と割り切って使うと良い.
・細胞診を学ぶ人のために (2019)
・スタンダード細胞診テキスト (2019)
おすすめ度:★★★☆☆
どちらも細胞診の伝統的な本で,一般的には一応買うことが勧められる.と言っておく.確かに細胞診の網羅的な resource としてはとても有用.サイトスクリーナーを目指す臨床検査技師はこの本を通読することが求められるが,細胞診専門医を目指す病理医や臨床医はそこまでの知識は求められない.
学会が出版しているガイドライン
おすすめ度:★★★☆☆
どちらも細胞診の伝統的な本で,一般的には一応買うことが勧められる.と言っておく.確かに細胞診の網羅的な resource としてはとても有用.サイトスクリーナーを目指す臨床検査技師はこの本を通読することが求められるが,細胞診専門医を目指す病理医や臨床医はそこまでの知識は求められない.
学会が出版しているガイドライン
意外とよくまとまっている.できれば定期的に改訂してほしいが,著者が多いと難しいのかもしれない.
細胞診のスキルを磨くためには問題演習が必要で,問題集は比較的数多く出版されている.
他の明らかに難問すぎる問題集は意図的に省いている.
2018年6月2日土曜日
病理診断を学ぶ 〜 乳腺
2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
特に大きな変更はない.結局のところ,WHO 分類が基本にあってあとはそれを補うような位置付けになりがちである.乳腺疾患は非腫瘍性疾患も含まれているが,結局臨床的には癌か癌じゃないかの二択で十分であることが多いのと,免疫染色を行えばある程度蹴りがつくのでバリエーションとしてはそこまで多くはない.
2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
* 特に大きな変更はありません.
乳腺の本を参照することって実際問題あんまりなくて,なんといっても取扱い規約と WHO,あとは AFIP といったところ.こういうことを言うと乳腺を専門とする先生には失礼かもしれないけれども,乳腺病理における疾患のバラエティは少なくて,鑑別診断でポイントとなることは限られている.難しい病変でも免疫染色を行うことである程度は決着がつくこともある.
現実的には WHO 分類及び規約,及び鑑別診断アトラスを見ながら診断をすることが多い.規約と WHO 分類に乖離が生じており悩ましい.
・Breast Tumours (World Health Organization Classification of Tumours) (2019)
WHO bluebook はもはや,乳腺腫瘍(のみならず)全領域の基本的な本と言える.今回の改定ではそこまで大きくは変わっていないが,髄様癌が消えてしまい,invasive breast carcinoma の一亜型になっている.Rosen や AFIP もあるにはあるが,少なくとも腫瘍については WHO に従っておけば問題ない.5th series に入ってから,定義や診断に必要な要件などの記載がより鮮明になっている.
・Rosen's Breast Pathology (2020)
これも言わずと知れた Rosen の教科書.大したこだわりはないのだが,まぁ細かいことも含めてよく載っている.腫瘍性病変については定義などの問題もあり WHO に軍配があがるが,特に非腫瘍性の病変で悩んだときに使う本ではある.
・Biopsy Interpretation of the Breast (2017)
洋書で比較的新しく,かつそこそこ安い本としておすすめ.特にこれと言ってすごいというわけではないのだが,一通り揃っている.洋書でなにか一冊といったとき,ハンディなので専門にするのでなければはじめの一冊としてよいかも.
臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版 (2018)
だいたい,大して内容が変わっていないのに,18 版も重ねて何しているの?という批判はさておき,まぁ実際問題取扱い規約に書かれている内容で十分日常業務は事足りる,という意味では個人的に気に入っている.
浸潤性乳管癌の亜型の変更も結局何が言いたいのかよくわからないし.まぁともかく,個人持ちする必要はないけれども,日本で病理をやっていく上ではやはりこれが基本.しかし,稀な組織型については,WHO 分類を参照してくれというのは投げやりすぎないか?
・乳癌 (腫瘍病理鑑別診断アトラス) (2016)
日本語の本としては,結局のところ,規約とこのアトラスで 9 割程度は網羅されている印象.これで書いていないあるいは不十分な記載があれば,腫瘍であれば WHO, 腫瘍あるいは非腫瘍であれば Rosen を参照するというのが大体のルーチン.しかし,規約の前に規約に改訂してしまってどうするんだろうか.また改訂するの?という感じ.
2018年5月29日火曜日
4. 膀胱 TUR 検体・細胞診での戦い方
2017/07/03 1st edition.
2018/5/28 Last updated.
・TUR 検体はしばしば,よく,通常,だいたい断片的になっていてかつ焼灼変性が強い
・焼灼変性が強いところは評価できない,これは仕方ない.評価できるところで評価するのがポイント
・見慣れてくると,核線を引いていても腫瘍細胞の集まり方(上皮下の脂肪織内にこの集まり方はおかしい!)でわかってくる
・浸潤性尿路上皮癌はなぜか小型の腫瘍胞巣が散在するように浸潤することが多い(乳頭状・平坦限らず)
・筋層浸潤の評価について,筋層とみなすには平滑筋細胞が束状に集まっていないと言いにくい
○ 尿細胞診のみかた ABC
・尿細胞診は変性との戦いになる
・基本的には papillary urothelial carcinoma, high grade あるいは urothelial carcinoma in situ といった high grade の病変は比較的拾いやすくて,それ以外の low grade の病変は拾いにくい(細胞の増生が定義みたいなもの)
・取り敢えず Class III. 困ったら Class III を合言葉に.
○ 最後に
・WHO で定義されている low malingant potential などには触れていない(個人的には定義もやや曖昧で再現性が低い印象)
1. はじめに
2017/07/03 1st edition.
2017/9/14 Last updated.
○ 膀胱生検と前立腺生検は診断のある程度方向性が決まっている
・基本的にはいずれも癌の診断が主体で,病理総論的な読み方・考え方で概ねいける
・悩みどころ,注意すべきところがいくつかあるが,いくつかのコツを掴めば診断はスムーズ
○ 若い先生の悩みどころ
・前立腺生検って弱拡大で見ろって言うけど,小さすぎてよく見えない! (見なくて良い)
・Gleason score は 1-5 まであるけど,1,2 ってみたことない! (つけなくて良い)
・尿路上皮癌って扁平上皮癌とどう違うの?同じにしか見えない! (先生もよくわかんない)
・尿路上皮癌の G1, G2, G3 ってどこにも載っていない! (旧規約だから)
・尿細胞診はいつまで経っても Class III ばっかり.新しい報告様式はどうなっているの? (これは後日に)
・こんな疑問に答える診断マニュアル ?
○ この診断マニュアルの方向性は少しずつ変わってきている
・当初は胃生検,結腸生検等これが見れないと飯が食えないというマニュアルを目指していた
・教科書を参照することを前提に,網羅性よりも,扱う疾患に濃淡を付けて,強調すべきところを強調するようにしていたつもり(いわゆるボン・キュッ・ボン like な note)
・実際見てくれる人が病理医とは限らず臨床の先生もいることがわかってきたので,臨床病理相関も少し意識することにしてみた
・それでも,まずは病理組織標本から start する病理診断学というスタンスは一貫している
2018年3月4日日曜日
本をどこで買うか
2025/3/4 見直しと簡単な改訂を行いました.結局ほぼ変わりません.特に洋書については極端な円高にならない限りは結局 amazon が総合的に安いことが多いです.
- Amazon:一般的,定価.ポイントがつきにくい.でも中古商品があったりするので,意外とお得に買える.マーケットプレイスの商品は比較的安価なものが多い印象.
- 楽天:楽天カードを持っている人(楽天経済圏で生きている人)は有利.定価.ポイントが付きやすい.本以外の商品は割高な印象.
- Yahoo ショッピング:Yahoo カードあるいはソフトバンクユーザー(Yahoo/Paypay 経済圏で生きている人)は有利か.定価.ポイントが付きやすい.還元率は楽天より上な印象.
- ヨドバシ・ドット・コム:楽天,Yahoo ショッピングと同じ理屈.楽天,Yahoo と変わっていないのならばこちらを選ぶのも一つ.
- 大学生協など:大学とかで生協があるのであれば積極的に使ったほうがよい.数% でも割引してくれることが多い
- m3 や民間医局では独自に本を取り扱っていて,ポイントが付いたり還元してくれるところもある.
# 洋書は現在はでは amazon.co.jp or amazon.com ほぼ一択か
まず前提として円安で (2025/3/4 時点で 1 ドル 149-150 円程度),洋書を購入するのは結構大変.多少の価格差であれば梱包の丁寧さと時間的な有利さから amazon.co.jp がお勧め.
- Abebooks:単一の書店ではなく,楽天のようなモールの集合体.一番安いお店を検索できる.結果的には amazon.com, amazon.co.jp よりもかなり安い(正確に言うと昔は安かった).ドル決済と円決済どちらかを選べる.有利な方を選べば良い.
- Amazon.co.jp:一番簡単に買える.丸善や南江堂で買うよりもだいぶ安いけど,他のサイトに比べると若干高め.だが,ものによっては一番安いこともある.日本語,日本で決済できるので初めて買う場合は,アマゾンがお勧め.
- Amazon マーケットプレイスでは Amazon 本体よりも少し安めになっている.ただし,海外から郵送するため日数がかなり掛かることに注意を.
- Amazon.com:amazon.co.jp で検索をしてそれと同じものを amazon.com で検索してみると良い.ドル決済と円決済どちらかを選べる.ただし,送料が結構掛かるので,co.jp よりも高くなることがある.ただものによっては結構安い.
- Book depository:イギリスの出版社で,送料は無料.ドル決済と円決済どちらかを選べる.値段はまずまず.amacon.co.jp でも出店しているので買うならそっちのほうがよいかも
- Betterworldbooks:医学書の取扱いは少ない(しかも版が古いものが多い).もしあればかなり安いことが多いのでお勧め.
AFIP, WHO については南江堂(あるいは日本の輸入取り扱いもと)が最速.もし一秒でも早く手に入れたい,かつお金は気にならないのであれば,南江堂で注文するのも一つ.
# WHO オンラインはおすすめ
近年 WHO がオンラインでの購読を始めた.一年間約 16000 円くらいで,正直非常に便利で,これを使うともとに戻れなくなる.腫瘍の診断は結局 WHO 分類が根拠になることがほとんどで,かつ単なる定義の説明のみならず,遺伝子異常や背景なども説明してくれており,症例報告などをまとめる際にも足がかりとして非常に有用.
また WHO は最近 subscription サービスも始めておりそちらも比較的評判のよう.自分の専門分野は書籍で購入しつつ(過去の版を参照する必要があるため),それ以外についてはオンラインでというのが賢い気がする.今後サービスがどう展開されるか不透明であるが,少なくとも現状非常に有利なので是非ともおすすめしたい.
AFIP は定期購読という選択肢もあるが,そんなに安くないのと,AFIP は製本が立派なので,買って本棚に飾って悦に入るのが良い.
クレジットで支払うとき,ドル決済にすると購入日と決済日のレートが異なることがあるので,そのリスクを考慮すると円決済でもいいんだけど,若干レートが不利になる.例えば debit などを使うと,比較的近い日のレートを使うことができる.まぁ上がるか下がるかは神のみぞ知るわけで,あまり気にしなさすぎるのも一つ.
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15 年目の悲劇
# 卒後は 17 年目,病理は 15 年目 自分は 2009 年に大学を卒業しているので,2026 年 4/1 現在だと,卒後 17 年目になる.卒後 15 年目のとか,20 年目の,みたいなタイトルの本を見るが,その節目を超えてさらなる大台に突入してしまった感じはある. 初期研...
-
【コメント】 2025/03/04 本のリンクや版を含めて少し更新しました.ほとんど変わっていません.ロビンスなど定期的に更新されている本とルービンなどあまりアクティブではない本が大きく別れています.入手の容易さや情報のアップデートなどからは原則的に出版から 5 年程度以内の本を...
-
2025/03/04 掲載されている本について情報をアップデートしました(WHO, AFIP は一部のみ). ここ 10 年くらいは知識のサイクルがどんどん早くなっていて,その傾向のもと,一冊ですべてを網羅するタイプの外科病理学テキストは出版自体が難しくなっている印象があります....