# 全体的には平均的な出題で実力を存分に発揮できる試験のセット
言うまでもなく,病理専門医試験では同じ問題が繰り返し出される.そのため過去問を丁寧にレビューすることが点数を上乗せするために必要になる.2023 年度の出題疾患をみても,ほとんどが過去問で扱われた疾患であり,奇をてらうような疾患はほぼ含まれておらず,比較的解答しやすい印象ではなかっただろうか.
## 正常構造,非腫瘍性疾患
# 今後の対策
もちろん試験としては簡単すぎることもなく,受験者の実力を適切に評価する試験だったと考えられる.
# 正答率が低めであった問題
一般的に新規に出題される疾患は正答率が低い傾向にある.加えて,良性疾患,非腫瘍性疾患,細胞診や迅速診断では腫瘍がない陰性例は正答率が低くなりがちである.そもそも論として陰性や正常と言い切るには他の様々な可能性を否定する必要があり,かなり勇気がいる.本年も同様に,これらの疾患で正答率が低めであった.
一般的に新規に出題される疾患は正答率が低い傾向にある.加えて,良性疾患,非腫瘍性疾患,細胞診や迅速診断では腫瘍がない陰性例は正答率が低くなりがちである.そもそも論として陰性や正常と言い切るには他の様々な可能性を否定する必要があり,かなり勇気がいる.本年も同様に,これらの疾患で正答率が低めであった.
正答率が低めの問題は翌年以降にリベンジとしてアレンジして再出題されることがあるのでぜひとも復習しておきたい.
# 今回新規に出題された問題
分類の仕方によってだいぶ異なるが,2001-2022 までの過去の出題例から見て新規出題と思われる疾患を抽出してみた(亜型等での新規出題は除く).2つの群に分ける.
# 今回新規に出題された問題
分類の仕方によってだいぶ異なるが,2001-2022 までの過去の出題例から見て新規出題と思われる疾患を抽出してみた(亜型等での新規出題は除く).2つの群に分ける.
## 正常構造,非腫瘍性疾患
近年の出題でメッセージ性を強く感じることの一つとして,正常構造や遺残物が解答となるような問題が散見され,特に新規出題例の中で多くを占めている.これらは正常構造として当然知っておかねばならない,はずである.
現在は純粋な形態のみの理解だけではなく,遺伝子異常等,学習することが多くなっている傾向にあり,正常構造の学習がおざなりになりがちである.もちろん限られた時間で学習をする必要があるので,ある意味仕方ないのだが.その中で正常構造もきちんとして理解してほしいというメッセージと考えられる.
- Intrapulmonary lymph node
- Endometrium, secretory phase
- Rathke cyst
- Seminal vesicle
## 他の新規出題疾患
Atypical carcinoid が新規出題例であったことに少し驚いている.肺・縦隔の atypical carcinoid は施設にもよるが一般的にはかなり稀であり,診断基準をきちんと把握している人は少ないのではないだろうか.試験では neuroendocrine tumor とし部分点を狙うしかないような気もしている.
Cylindroma や microcystic adnexal carcinoma は有名とはいえ,こちらもかなり稀で見たことがない人も少なくないと思われる.かくいう自分も cylindroma は経験がない.
エキノコックスも地域性はあるにせよ結構有名な疾患だが,過去 20 年間の病理専門医試験としては初登場ということになる.
- Atypical carcinoid
- Severe dysplasia of the oral mucosa
- Cylindroma
- Microcystic adnexal carcinoma
- Echinococcus infection
# ○×クイズ
配点が低いのであまり力が入りにくいが,内容的には例年を踏襲した無難な問題セットであた.ただ意外だったのは ISO20387(バイオバンク)を病理検査室の国際規格として間違えた人が相当数いたことだ.おそらく分子病理の講習会でいくつか数字を聞き,それが誤って定着したものと考えられる.
ただ,ISO15189 は認証を取得している施設では耳にタコができるくらい聞いているはずで,この正答率の低さが気になる.
プリオンの失活の温度を知っている人はプリオンに暴露されたことのある人くらいではないだろうか.知っておいて損はないだろうが,細かいことにこだわりだすとコストパフォーマンスが悪くなるのでほどほどに留めておいたほう良い.
# 今後の対策
例年通りの,過去問を中心とした学習で全く問題ない.新規出題例はごく少数で,過去問を中心とした学習で十分余裕を持って合格点を狙える.近年出題された疾患は比較的再度出題されやすい一方で,稀に過去に出題された「相当古い?(稀な?)」疾患が再度登場することもある.出題頻度を頼りに可能であれば,出題頻度の低い疾患もカバーすると充実した対策になるだろう.
高得点を望む人や余裕のある人は「病理と臨床 2017年臨時増刊号 病理診断に直結した組織学」などの正常組織の復習すると,近年の出題傾向と併せ,さらに点数が上乗せされるであろう.ただ,出題されている正常構造は基本的なものばかりであり,試験勉強というよりも普段の診断のために勉強してほしいというのが正直なところである.
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