# 日本とカンボジアの違い
非常に月次な感想だが,日本とカンボジアで感じた病理診断の違いについて言及してみる.違いをマークアップ出来るくらいなので基本的には同じである.
・ミクロトームが回転式が主流.滑走式が多いのは実は日本だけでむしろ自分たちが特異だということも知った
・特殊染色が少ない.これも実は特殊染色を好んで多くするのは日本で,他の国ではそこまで多くやっていないことも知った.
・細胞診のスクリーニングを病理医が行っている.これは本当になんとかして欲しい.診断の効率がぜんぜん違う.細胞検査士制度の確立が急務ということになるがしばらくは難しいだろうな.
試薬の代理店がないので,安定供給が難しいというのもある.臨床細胞学会の記事にも書いてあったが,自分も武藤化学他の試薬会社に問い合わせてみたのだが,タイや台湾に代理店があるが,そこから輸出するには色々な手続きが必要で実質的には難しいという返答だった.
じゃどこから調達するかというと,簡単なのが隣接しているタイからで,もう一つは中国からだそう.中国は何でも買えるしな...
病理診断の違いについてはそこまで意識をするほどの違いはないかな.もっとも顧問をしている検査センターでは指導している関係上,自分のカラーを強く打ち出しているのでどうしても自分の診断スタイルを押し付けているきらいがある.
# カンボジアの病理検体が国外へ
どこの国でも程度の差はあれあるのだが,カンボジアには外資系の病院がいくつかあって,それらは本国の水準にあった比較的高い医療水準であることが多い.日本からは Sunrise Japan Hospital があり,北原病院グループが出資し,経済産業省のバックアップがあると聞いている(病院を受診すれば分かるが,椅子からちょっとした小物まで日本の病院をまるまる輸出している感じ).他にもシンガポールやタイなどが病院を作っている.
もちろん NGO/NPO も病院を作っており,シェムリアップでは Angkor Hospital for Children が歴史もあって有名で,プノンペン近郊では JapanHeart が病院を作っている.
これらの病院の多くは単体では病理部門を自前で作るほどの規模はなく病理検体は本国あるいは協力体制を敷いている国の病院に送られているようである.Sunrise Japan Hospital は日本の秋田細胞病理へ,JapanHeart は九州大学へ送っている(機密情報のようにも思ったが,それぞれネット上で当該事実は掲載されているのでこの際良しとしよう).ちなみに日本人が founder としている Angkor Hospital for Children はアメリカに検体を送っているそうだ.特に小児病理は特殊性が高いので致し方ないところもある.
又聞きだがカンボジアの役人も本当は検体を国外に持ち出すことを良くは思っていないが,カンボジアの病理診断の水準が低いのでしょうがないと言っているようだ.
# カンボジアの患者も国外へ
カンボジアにも富裕層なるものは当然いて,彼らは医療を求めて国外へ行く.タイやシンガポールがその代表格らしい.カンボジアに行く飛行機でバンコクを経由にした時に,たまたま隣にいた老婦人と息子と話す機会があって,慢性疾患の定期受診のためにタイに行った帰りだという話を聞いた.
カンボジアの医療水準は低いから,とのこと.歴史的経緯があるのは当然のことで,それについて話をしだすと収集がつかなくなるが,病理診断という点に絞って一言話をすると,カンボジアで最初の病理医は Saorin Tep Mam という女性で,内戦で亡くなっている.
ちょうどそういう話を聞いたときは自分も専門医を取ってから数年経ったくらいで,何でも出来るんじゃないかという万能感を持っていたときでもあって,自分の得意領域からすると,それじゃあ一肌脱いてカンボジアの病理診断を劇的に向上してやろうじゃないかという気持ちを新たにした瞬間でもあった.
0 件のコメント:
コメントを投稿