# 当時のカンボジアの病理診断体制
話題が豊富でどこから話をしたら良いか難しいが,2018 年頃の話だと病理医は 10 人くらいだったと記憶している(詳細は臨床細胞学会の専門医部会の記事を参照のこと).その中でいわゆる first generation と呼ばれる病理専門医の研修医が 5 人いた(多分資料を参照すれば分かるがまぁいい).
基本的なトレーニングはレクチャーが中心とのことで,日本以外だとヨーロッパ,特にドイツからの支援が多いみたい.旧宗主国はフランスのはずで支援はあるにはあるようなのだ(免疫染色の試薬や機械など)が,ドイツは iPath Telepathology network というシステムを構築しており,カンボジア(+それ以外の途上国?)に対して,組織像をアップロードをするとドイツの専門医がコメントをする体制を提供している.
日本の学会に掲載される記事は主に日本がどういうことをしたかということに焦点を当てて記事を書くが,実際には他の国も支援をしており,全て日本がやっているわけではない.
一般的にカンボジアで医師になるには確か 6 年間の医学部のトレーニングを受け,病理専門医の場合はさらに 5 年間のトレーニングが必要で,その 11 年間は学生という扱いで,授業料を支払うようだ.そりゃ金持ちじゃない限り無理ではある.ちなみにカンボジアの医学部で 1 回だけオンラインで病理学の授業を行ったことがある.まぁそれはいいけど.
病理専門医のコースも毎年開講というわけではなく,2018 年に first generation が卒業をして 2019 年から second generation が入学して来るという,感じで現在第 2 世代がトレーニング中である.時間はかかるだろうが,おそらく数年後には一気に増えていることだろう.
カンボジアの病理医はほぼ全員(全員?)が首都のプノンペンにいるようだ.プノンペン以外には病理医はいないので,そこで病理検体が発生した場合はどうするのか?一つは病理検査を行わない,もう一つは首都のプノンペンにある検査センターに検体を送る.
そう,カンボジアにも検査センターがある.ちょうど日本の病理医が病院で病理診断をしながら,検査センターでアルバイトをするような構図がある.
# カンボジアの医師の働き方
カンボジアの医師の給料は安い.大体月 150 - 200 ドル程度.カンボジアに行ってみると分かるが,カフェに入るとコーヒーが(サイズにもよるが) 3-4 ドルくらいするので,当然それだけでは生活できない.よって多くの医師は自分でクリニックを持つ.午前中は病院で働いて,午後は自分のクリニックで診療をするというダブルワークをするようだ.
病理の場合はそれが検査センターになる.正確な統計はないが,カンボジアには古くからいる教授が自前で検査センターを持っており,月 1000 件程度の結構大量の検体を診断しているそうだ.プノンペンにはそのような検査センターが複数ある.
ちなみに組織診 1 件あたり 30-50 USD 程度で,免疫染色は 1 枚あたり 50 USD 程度.相場を知らない人が多いとは思うが,日本のほうが安いと思う(日本の検査センターの場合は利益率の高い血液検査と抱き合わせて受託するケースも多く,病理検査単価は結構変わるので単純な比較が難しい).2022 年 7 月現在はさらに円安なので圧倒的に日本の方が安い.日本にブロックを送って日本で免疫染色を受託すると儲けられるのでは?という気もする.
# 自分が関わっていること
基本的には first generation の先生のうちの一人がやっている検査センターの顧問として診断のアドバイスをしている.最初は怪しい診断でのコンサルテーションが多かったが,現在ではほぼ外すことはなくなってきた.本質をついたかなり鋭い診断をしてくることもあり,数年間自分が費やした時間は無駄ではなかったのかな?と感慨深く思っているところではある.
文章が長くなってきたのでそろそろここで次の項にする.
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