今日は最近見た(疑った)虫垂憩室について調べたことのまとめ
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1066896909332728
↑主に参照した文献 (review).
【臨床情報(年齢・性別・部位等)】
[頻度] 稀,虫垂切除検体のうち 0.004-2.1% に見られ,剖検例では 0.20-0.66% 程度.
[年齢・性差] >30 歳,平均的には 37-39 歳.男性>女性
[病因・病態] 多くは後天性.先天性憩室非常に頻度が低い(0.014%).厳密な病態は不明だが,男性,>30 歳,ヒルシュスプルング病,嚢胞性線維症はリスクが高い.後天性の憩室に関する病態は炎症に起因するものと起因しないものが考えられている.前者では,先行する炎症により内腔の狭窄をきたし,リンパ装置の萎縮から壁の脆弱性をきたすというもの.後者では,何らかの原因(腫瘍や糞石など)により,狭窄を来たし,内圧上昇及び筋活動の活発化をもたらすという.先天性のものは発生途上の異常と考えられている.
[臨床的特徴] 穿孔を起こす確率が高く,急性虫垂炎よりも致死率が高い.
[症状] 憩室であれば無症候性あるいは軽度の慢性的な腹痛が数ヶ月~数年程度続く.憩室炎であれば腹痛があり,右腸骨窩に限局し,臍周囲痛の先行を伴わない.急性虫垂炎で見られるような嘔気,嘔吐,食思不振などと言った消化器症状は見られない(典型的な腹部症状ではない高齢男性では虫垂憩室炎の可能性を考慮)
[画像所見] 画像上指摘するのは難しい.憩室炎であれば急性虫垂炎に類似している.
【肉眼所見】
- 虫垂の遠位 1/3 側が最も多い.
- 複数の憩室があればビーズ様の像を呈する.
- 憩室は通常複数で,2-5 mm 大と小さいものが多いが,中には 8 cm 程度まで大きいものも存在する.
【組織学的所見】
- 先天性憩室は真性憩室であり,後天性憩室は仮性憩室である(真性憩室の方が穿孔を起こしにうい).
- 虫垂憩室及び虫垂憩室炎は次の 4 つの亜型に分類されている.
- Type 1:古典型.急性憩室炎で虫垂は正常
- Type 2:急性憩室炎で虫垂炎が付属するもの
- Type 3:急性虫垂炎で炎症を伴っていない虫垂憩室が見られるもの
- Type 4:正常の虫垂及び症を伴っていない虫垂憩室が見られるもの
- この中で type 1 が最も多い.Type 1-3 は穿孔の有無で更に分類される.
【鑑別診断】
- 急性虫垂炎:多くは臨床的に鑑別がなされる
- Crohn 病,腸結核,寄生虫感染
- (組織学的な鑑別ポイントはあまりなさそう)
【免疫組織化学染色・分子病理】
特になし.
【治療・予後】
虫垂切除検体が基本.特に虫垂憩室が見られた場合には穿孔を起こしやすいため選択的切除が望まれている.
【実際に症例を経験した感想】
穿孔を起こすと,そもそも憩室かどうかの確認からして難しいが,背景の虫垂に炎症らしい炎症が乏しい(せいぜいカタル性虫垂炎程度)ことから憩室の穿孔を疑った.臨床的には虫垂炎あるいは回盲部周囲炎として切除されてくる可能性がありそう.月次な感想だが,unusual な虫垂炎の切除検体を見たときには憩室炎・憩室穿孔も鑑別に入れておいたほうがよいかも.
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