2018年10月4日木曜日

特殊染色のオーダーについて〜結合組織染色の流派について



特殊染色のオーダーについて
http://dodompa3.blogspot.com/2018/10/blog-post_26.html
の続きの小話.Elastica Masson 染色についてもう少し突っ込んだ話が聞きたいというリクエストが会ったが,

ちなみに,基礎的な知識はここあたりに詳しい.
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~pathology/templates/staining/ECMstaining.html

1. 結合組織染色には流派がある

結合組織染色のオーダーの仕方にも流派がある.流派という言葉に違和感があれば,施設間によって相違があるといえばよいだろうか.良く言えば,我々のスタンスとしてどのような染色であったとしてもきちんと評価ができる必要があるとも言えるし,悪くいうと,施設によってバラバラで,統一性が乏しくて結構面倒だとも言える.

2. 静脈侵襲評価目的の悲劇

いきなり話がずれるが,結合組織の中で細網線維はほぼ鍍銀染色一択でほかをルーチンで染めることはほぼない(あってもその variation がほとんど).

ところが,膠原線維や弾性線維はいくつか染色法が存在していて,それぞれ好みがある.少しいい方を変えよう.ルーチンでよく出すので,複数の染色を混ぜてオーダーすると,オーダーする我々にとっても,オーダーを受ける技師側にとっても手順や評価方法が煩雑になってしまうため,大体施設によって結合組織染色は大体これ!と決まっていることが多い.

そしていくつかある中で,何を基準に決めるかということになるのだが,実際に我々が結合組織染色をオーダーするのは(腫瘍を多く扱っている施設であれば)静脈侵襲の評価目的であることが多い.すると,しばしば「結合組織染色 ≒ 静脈侵襲を評価するための染色」という認識になってしまう.その観点からは

・EVG 染色
・Elastica Masson 染色
・Elastica HE 染色
・Victoria blue 染色
・・・

などがあるが,これらの染色を同等に列挙している根拠は「静脈(あるいは動脈)壁内の弾性線維さえ見れればそれで okay だ」といっていることにほかならない(そのノリで線維化の評価のために Elastica HE 染色を出したりするという謎オーダーも出てしまうことがある).

施設による好み ≒ 流派で,どうやら東大系列は EVG 染色が好きで,慶應系列は Elastica Masson 染色が好きなようである(気になったら上司がどこでトレーニングを受けたか聞いてみると面白い).そして,三つ子の魂百まで,というように最初に教わった染色にこだわる傾向にある.同じ流派で占められる病院は全く問題ないのだが,外人部隊のような病院ではしばしば種々の結合組織染色が飛び交いカオスな状態になる

3. 結局どれも対して変わらない

Elastica HE 染色は HE 染色に弾性染色をかぶせているので,通常の HE 染色の延長線上で評価ができ,わかりやすいが,逆を言うと弾性線維しか見ていないので,情報量は比較的少ない.Victoria 染色も同様.

個人的には EVG 染色が Elastica Masson 染色よりも好きで,膠原線維,弾性線維の他にEVG 染色の方が筋組織も評価できるため,情報量が多いと思っている.

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