2018年10月31日水曜日

病理医は余っているのではないか問題~続き

はじめてのひとは
http://dodompa3.blogspot.com/2018/09/blog-post_20.html

あたりから読み始めてもらえるとストーリーが掴めそうです.

1. 病理と臨床の 11 月号の「今月の話題」

病理と臨床の今月の話題として,「表で見る 病理専門医最新情報」が掲載されている.前回の投稿で入手できなかったデータも含めてある程度網羅的に掲載されており,これを含めて書き直すと
専門医人数 前年度からの増加分 その年の病理専門医の合格者数
2007 1929 N/A 92
2008 2052 123 90
2010 2029 -23 81
2011 2078 49 83
2014 2292 214 74
2015 2317 25 61
2016 2365 48 74
2017 2405 40 71
2018 2479 74 100

のようになる.昔に遡るほど,年の間隔が大きくなっていることに注意.確かに記事の指摘しているように,この調子でいけば 6-7 年程度で,病理専門医 3000 人を超えることは可能と考えられる.

この記事では地域の偏在について主な焦点を当てているが,地域間の偏在なんて要素は結構どうにでもなる要素であったりするので,どどたん先生はあまり興味ない.

2. 男女比について

m f
18 1591 310
28 1849 513
30 1903 580
H18 年では女性比率が 16.4% だったのに対して,H30 年では 23.4% に増えている.H18 - H28 の 10 年間で 5.3% up(0.53%/year)だったのに対して, H28-H30 の 2 年間で 1.7% up (0.85%/year) と女性医師の比率が増えている.要は女医の増えるスピードが上がってきている (f''(x)>0) .

医師全体に占める女性の割合である 21.1% をすでに超えているのと,女性医師の比率が毎年のように上がっていることを考慮すると,病理診断科は皮膚科や麻酔科などと並んで,女医に好まれやすい診療科になりつつあると言えよう.

今年の専門医受験者数 100 名のうち,55 名が男性,45 名が女性であることを踏まえると究極的には 40-50% 程度,今後 10 年間で少なくとも 30% を超えるだろうことは容易に想像ができる.

特に productive age / childbearing age である女性の場合,就業に対する配慮を今から考えておかないと,病理医をうまく確保することはできないかもしれない.そしてこのことは必ずしも女医自体にとって有利に働くとは限らなくて,女性の敵は女性と言われるように,女医の就業に対する配慮に一番反対しているのが他の女医であることは少なからず見受けられる.病理を目指そうとしている女子医学生はこの点を意識しておいた方がよい.この科なら楽勝だ,なんてことはどこにもないというわけで.

3. 65 歳率について

H30 年の病理専門医の 65 歳率は 21.9% であり,これも着実に増加している.65 歳率がなんたるかは書いていないが,おそらく 65 歳以上の医師についてだろうということで議論を進める.高齢化率については経時的なデータが必要で,与えられたデータだけでは議論ができない.もちろんその時を切ったデータは重要なのだが,未来を予測するためには過去から現在までのもう少し細かい推移データがほしいところ.

さて H28 でいうと,日本の医師全体のなかで 65 歳率が 25.1% であり,それに対応するデータとして病理専門医の 65 歳率は 19.9% である.マイナス 6% である.

多くの診療科では定年を迎えると,特に外科系では診療科を転科することも多く,産業医や老健,リハビリ病院など違った展開をしていることが多い.定年後にもう働かないという人も稀にいてもちろんその人の自由でありなんてことはない.

日本全体の 65 歳率が 25.1% の中で病理専門医で約 20% で平均データに比較的近いということは 65 歳を過ぎても病理医を続けている人が多いことになる.もちろんこれは日常の感覚と一致している.そして 65 歳以上の人がなかなかやめないことで,病理専門医の数を維持しているとも言える(要するに in を増やして out を減らした状態で 3000 人を目指そうということ).そのために平均年齢自体も経時的には緩やかに上昇している.

理想的な in/out balance ができていれば,平均年齢が大きく動くことはほぼないはず.ちなみに H28-30 についてはある程度理想的な in/out ができたとも言えなくもないが,それでも 65 歳率が上がっており,これには具体的なデータの分析が望まれる.

4. 意外といらないデータ

男女参加なのか?と同県別の男女のデータが熱心に載せているが,あまり必要性を感じない.

結局何がいいたいかというと,増やすのはいいけれども,受け皿はちゃんと考えているの?ということ.どこぞの博士号大量生産したはいいけど,ポスドクすらつけずにましては常勤職も無理でなんてコンビニバイトしている人が問題になっているけど,病理もそうならない?ということで,偉い人はちゃんと受け皿を考えておいてねー.

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