2018年9月25日火曜日

Interface dermatitis - Lichenoid dermatitis

1. Interface dermatitis は幅広い

日本語で言うと接合部皮膚炎.伝統的に?interface dermatitis は vacuolar dermatitis と lichenoid dermatitis に分類されるが,いずれも表皮真皮接合部をターゲットにした変化で,結構似通っていて,どちらかにはっきりと振りにくいことも多い.

しかも interface dermatitis ではない,psoriasiform dermatitis でも interface の変化が見られることもあるので,それを言い出すとどこからスタートして良いかわからなくなる(このことについては多くの本がさらっとこの病変は interface dermatitis だよねと書いてあるが,今見ている病変が interface dermatitis なのか psoriasiform dermatitis なのかわからないことは実は少なくない).

そこでここでは interface の変化が強くて,他の変化があってもよいがそんなに目立たないもの(具体的に言うと psoriasiform な変化や,bullous な変化,deep perivascular dermatitis, pure な vasculitis が目立たないもの)を中心に説明していく.なお perivascular dermatitis はどのパターンでもあってよい.困ったら overlap させて鑑別診断を考える.

2. まずは lichenoid dermatitis から

はじめに注意しておかないといけないことは,組織学的に lichenoid dermatitis が見られることと,臨床像が「苔癬型」であることは必ずしもイコールではないことに注意が必要で,この点は結構多くの教科書でも指摘されている.そこが理解できずにドツボにはまることが多い.混乱させるもととも言えるので,本によっては lichenoid dermatitis という表現自体を嫌っているもの (interface dermatitis with lichenoid infiltrate などと表現) もある.

Lichenoid dermatitis のプロトタイプは扁平苔癬と言われており,扁平苔癬をまずは思い浮かべて細かい違いを考えていく.組織学的に! lichenoid な病変というものは典型的には次の要素を満たしている.

a. 基底細胞の液状変性(あるいは空胞状変性,用語の問題),程度が強ければわずかに水疱様 (Max-Joseph space)
b. 接合にリンパ球が帯状に(広く連続的に)浸潤していること
c. 表皮の有棘細胞に Civatte body個細胞レベルでのアポトーシス)が見られること
d. 顆粒層の肥厚,過角化(≒ ターンオーバーの遅延
e. 真皮浅層の melanin incontinence(≒ 基底細胞の傷害によりメラニンが真皮内に落ちて組織球に貪食された状態)

これらのうち,必ずしも全てを満たす必要はないが,少なくとも a, b を満たしていないものに対して,lichenoid dermatitis と表現する人はほとんどいない

プロトタイプである lichen planus では,外傷やウイルス感染などにより表皮基底層の基底細胞に抗原性に変化が起こり,そこに CD8 陽性 T リンパ球が攻撃をすることで起こると考えられている.Civatte body (apoptosis) は浸潤してきた CD8 陽性 T リンパ球により誘導される.Lichen planus では psoriasis vulgaris とは異なり,遅いターンオーバーで対応すると考えられているので,ケラトヒアリン顆粒をたくさん作る余裕が出てきて,さらに過角化を来す(psoriasis vulgaris と逆のパターン).

とまぁ,とりあえずこの lichenoid dermatitis を頭にたたき込んだ状態で,それぞれの疾患の特徴を理解していく.細かいことは教科書を確認すべし.ここでは悩みそうなところを中心に説明を加えていく.

3. Lichenoid pattern を呈する疾患の特徴

・扁平苔癬 lichen planus:いうまでもなく,プロトタイプの組織像.好酸球浸潤は典型的には見られない.
・固定薬疹 fixed drug eruption: 臨床経過がしっかりしていないとつけにくい.vacular change のパターンのこともある.好酸球浸潤が見られることが多い.急性に発症するのか?角層は正常なことが多い
・光沢苔癬 lichen nitidus:通称カニの爪.有名だがなかなか見ることはない.
・GVHD:Vacuolar dermatitis に分類する本もある.大体において,造血幹細胞移植など文脈が確立しているが,薬疹ですか?GVHD ですか?といわれてもたぶん答えられないことが多い(GVHD では好酸球は通常ほとんど見られないことから,もし好酸球浸潤が強ければ薬疹の可能性が高いね、という程度).もう一つ,14 日以内に GVHD が見られるのは稀.急性だと薬疹と鑑別が難しい(というか厳密には無理).慢性だと強皮症と鑑別が難しい.経過を見て再生検で診断がつくこともある.
・Mucha-Habermann 病(あるいは急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 PLEVA):好中球浸潤を伴う部分的な錯角化が見られる.
・苔癬型薬疹 lichenoid drug eruption:錯角化が見られやすく,これがあれば扁平苔癬よりも苔癬型薬疹と言いやすい.好酸球浸潤が少しでも見られたら苔癬型薬疹と言いやすい.
線状苔癬 lichen nitidus:汗腺周囲の炎症細胞浸潤が見られる.
悪性腫瘍:悪性黒色腫や菌状息肉症,基底細胞癌,日光角化症辺りは lichenoid pattern を示してくるので,要注意.

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