1. 細胞診について真正面から語る病理医は実は少ない
細胞診学会あるいは研究会以外で細胞診については理路整然と語ることのできる病理医というのは意外といない.あまり大きな声では言えないが,細胞学会で講演している先生たちでも普段から細胞診のサインアウトをほとんどしない,ということは稀ながらある.
歴史的な経緯があって(もともと細胞診は婦人科から始まっている),ある程度歳をとった先生たちは「細胞診は邪道だ」という考えが色濃く残っている.
そういう背景もあって,病理医が細胞像について discussion をしているという場面はほとんど見ることはない.そしてもう一つの理由として,,,,
2. そして細胞診をきちんと診断できる病理医は少ない
これは実は大きな理由の一つ.サイトスクリーナーの人は薄々感じているあるいは大いに実感しているかもしれないが,細胞診をきちんとみることのできる病理医はほとんどいない.
というのも我々は基本的に,有所見(class III or more あるいは class II でも良性腫瘍など)の標本しか見ていないのと,細胞検査士から,推定組織型の下書きが提示されているわけで,それに対して,pros and cons を述べるだけであり,業務の 95% 以上は pros で,残りの 5% も cons というより言いがかりに近い批判をしていることが多い.
診断できないのはある意味しょうがなくて,彼らは我々病理医が見ている標本の数倍以上,negative も含めて見ているわけで,業務に費やしている時間が桁違いに異なるため,そもそもかないっこない,というのが本質.
それを補強するように病理診断のトレーニングの中で細胞診断というのはとても軽んじられていて,実質的には細胞診に対する系統だった教育というのはないに等しい.みんなほぼ自学自習でやっているのが実情.
どどたん先生がサイトスクリーナーの診断にケチを付けて,診断名を変更させた(結果的に正しかった)というのはこの 2 年間診断していてわずか 1 例のみ.サイトスクリーナーが優秀というべきか,どどたん先生の細胞診断能力が低いと見るか.
3. 病理医がサイトスクリーナーに勝てる要素
そうすると,相当数の症例をほぼ毎日(そこらへんは病院によって違うが)見ているサイトスクリーナーと我々病理医を比較すること自体がおこがましいということになる.
そうすると我々病理医がサイトスクリーナーに勝てる要素は次の二点しかなくて,臨床的な知識が彼らよりも多いということ.あとは組織診断をしていて答えを知っているということになる.というかそこらへんでしか(今風に言えば)マウントを取れない,ということ.
2018年9月24日月曜日
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