WHO 2012 では骨軟部腫瘍は benign, intermediate (locally aggressive), intermediate (rarely metastasizing), malignant の 3 (あるいは 4 )種類に分類されている.読んで字のごとくで,局所浸潤があるから中間悪性の場合と,稀に転移するから境界悪性の場合があることに注意.
この分類はそのまま臨床的なフォローにつながるため,臨床医や病理医からはわかりやすいとおおむね歓迎されている(もちろん,えっこれが境界悪性なの??とか,これは悪性じゃないでしょ〜という批判はあるけどそれは仕方ないこと) .もっともこの分類を知らないい臨床医も山程いる.まぁしょうがない.何気なく取ってみたら軟部肉腫だったなんてこともあるわけで.
我々は組織型を同定するという作業をしていく中で,実質的にこれが良性なのか,悪性なのか,中間悪性なのかを分類していることになる .
2. FNCLCC 分類を記載する
http://immuno2.med.kobe-u.ac.jp/20130627-3575/
腫瘍の分化度,核分裂像,腫瘍壊死をスコアリング化し,Histological grade を計算し求められる .腫瘍専門の整形外科医以外は多分知らないと思う.基本的には生検で評価し,その後の治療の参考に資するためのものだが,腫瘍壊死は生検だけだと評価不十分になるため,手術検体でも同様に評価したほうが良い.
FNCLCC 分類を見るとわかるけど,腫瘍の分化度はそのまま組織型とイコールで分類されているので,単に悪そうとか良さそうで分類しない,あくまで組織型の同定が前提となっていることに注意.
3. 良悪性と細胞異型は必ずしも相関しない
病理総論の基本的な考え方からすると細胞異型が強い=悪性ということになるけれども,軟部腫瘍についてはその考え方を捨てたほうがいい.明らかに悪性といえるのは,異常核分裂像が見られた場合のみで,それ以外は常に良性の可能性を完全には否定しきれない .よって常に組織型を頭に組織型を念頭に置きながら鑑別診断を行っていく必要がある
とはいえ必ずしもという程度で,あまりガチガチに考えてもしょうがない.
4. (再掲)年齢,性別,部位はとても重要な指標
例えば異型脂肪腫様腫瘍 atypical lipomatous tumor を例に取ると,,, 異型脂肪腫様腫瘍が中学生くらいに発生するのはとても不自然.多くは中高年に発症する.若年者に見られた場合はよっぽどの根拠が無い限りはつけない .性別も重要で,男性あるいは女性のどちらかに起こりやすいことはあるけど,これは他の項目については優先度は下がる
部位はとても大切.異型脂肪腫様腫瘍が皮下の浅いところに出来ることは極めて稀で,もしそういうところにできた病変に対して異型脂肪腫様腫瘍という病名をつけようとしたときは間違えていることが多い(よくあるのは spindle cell / pleomorpic lipoma という良性病変と間違えていることが多い).原則異型脂肪腫様腫瘍は深部(後腹膜や筋内,縦隔など)に発生するものなので,表層に病変が出現したときには否定から入るべき
5. 部位は浅いところと深いところに分ける
例外はたくさんあるけれど(DFSP, 滑膜肉腫,MPNST, myxofibrosarcoma etc),原則良性腫瘍は表層よりに,悪性腫瘍は深部よりにある.
表層と深部を分けるのは色々言われているが,1つは筋膜で筋膜より表層側(表皮,真皮,皮下脂肪織)を表層と考え,筋膜以深を深層とみなすことが多い.これは診療科の境界ともいえ,表層側であれば皮膚科が扱い,深層側であれば整形外科が扱うという暗黙の了解がある.
よって申込用紙を見た時に,病変がどの位置にあるかを大まかに知ることによって良悪性の目安がつく .もし書いていなければ臨床医に問い合わせるべきだし,どどたん先生は CT や MRI を見ながら鑑別している.当然臨床医も部位を記載すべき.
6. おすすめの本
いろいろ本はある.もちろん Weiss の textbook でもいいし,WHO でもいいし,Diagnostic pathology でも biopsy interpretation でもいい.
どれか一冊と言われたら,今だと次の本を勧める(これは現時点では,という話でもちろん新しいいい本が出れば話は変わってくる).
Practical Soft Tissue Pathology: A Diagnostic Approach E-Book: A Volume in the Pattern Recognition Series
有名な pattern recognition series の一冊だが,この本の良いところは,pattern recognition はさておき,疾患の臨床像と組織学的,分子生物学的所見と鑑別診断が丁寧に書いてあるところ.何だそれだけかと思うかもしれないが,変に突出しているよりも普通に普通がきちんとできることのほうが実はとても大切.
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