2018年9月21日金曜日

病理医は実は余っているのではないか問題〜補足

昨日一通り書いていくつか気づいた点があったので補足説明.

最初の記事
http://dodompa3.blogspot.com/2018/09/blog-post_20.html

1. 管理加算は誰のためにあるもの?

病理医が必要と主張する根拠として管理加算 2 がある.極論を言えば常勤病理医 2 名いればオッケー,自動的に 1 症例あたり 320 点(= 3200 円)が加算されるというしろもの.

https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_13_2/n006.html

例えば年間 5000 件の組織件数及び 6000 件の細胞診の病院であればなにもしなくても 2500 万円の収入増になるわけで,これだけ美味しい話はない.

ここで,と続くわけで,実際自分の知っている病院でも起こったことなんだけど,管理加算 2 がつくまでは常勤病理医を探そうとする.探してようやく見つかったら +2500 万円.職員が増えて(その人の給与などの経費を差し引いても)黒字になるというかなり美味しい話.

しかし,次に病院幹部が考えることは,「常勤 2 名になったら非常勤減らせるんじゃね?」ということ.病理医側からしたら楽に仕事できるに越したことはないわけで,収支を考えてもむしろ一人くらい増えても大丈夫なんじゃね?といいたいところだが,利益を最大限にするには収入を増やして経費を削減するわけで,削れそうなところはとことん削っていくことになる.

そういうわけで,実際にその病院では常勤が一人増えて管理加算 2 が取れてしばらくして非常勤を一人切られてしまった.

2. Single sign out か double sign out かは実は臨床医はそんなに気にしていない

これはみんな薄々気づいているとは思う.我々からすると single sign out か double で sign out するかは質的に結構な大きな違いが生じるのではないかと思っている.

しかし,臨床医の視点ではあまりそこらへんを気をつけてみている人は少なくて,どちからというと早く結果を知りたいという要因が大きい印象(ただし,病理のことをよくわかっている臨床医は「誰が診断したのか」について注意を払うことは多い).
臨床医の要望:早い,安い,うまい ≫ 遅い,高い,美味
病理医の要望: 早い,安い,うまい ≪ 遅い,高い,美味
という現実がある.その点においては管理加算の下駄で魅力を作るのではない,本質的な魅力を作る必要がある.

3. 需要の増加<供給の増加

現在は明らかに「需要>供給」であるが,医学部も新設され,それ以上に病理診断に対する脚光(歳をとっても仕事がしやすい?子育てと両立しやすい?患者さんのクレームに付き合わなくて良い?)が集まった結果,
d(需要)/dt ≦ d(供給)/dt
になっており,これを積分すると,将来的には
需要 ≦ 供給
になってしまうのではと危惧しているわけである.もっというと病理が増えていく中でさらに AI の診断によりアシストされると
需要 < 供給 + AI のアシスト
になるのかもしれない.(もっともこの式については若干疑義的なところがあって)もしかしたら,
需要 + AI や分子生物学的な進歩による治療の個別化のための細かい診断 > 供給 + AI のアシスト
という構図も出来上がりかねないし,実際これまでの歴史もそう語っている.

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