2017年11月5日日曜日

肝生検のやっつけかた【2. ウイルス肝炎と新犬山分類】

○ 最近少ないウイルス肝炎の肝生検
・最近はウイルス性肝炎の肝生検が少なくなってきた
・臨床的に急性肝炎の像を呈する HAV, HEV は肝生検の適応にならないことが多い(AST, ALT がみるみる上昇してきてそれどころではないし,肝生検が出来るようになる落ち着いた状態になる頃には多分正常化していることが多いので)
・HBV, HCV についてもウイルス量は血液検査で評価できるのと,線維化についてはエコーでもフォローが出来るので,絶対的な適応というのは起こりにくい印象
・加えて薬で治るようになってしまったので,new case はますます減ることだろう(と思いたいところだけれども,新しい治療法が出来ると新しい副作用,合併症が報告され,それに相当する病理組織学的所見が新たに報告される,というループがあるので我々の仕事はそう簡単には減らないのだ)
・よってウイルス性肝炎で生検されるとすれば,ただのウイルス性肝炎ではなく+αでなにか別の疾患を疑っているなどしていることが多い

○ 新犬山分類のあらまし
・もともとは慢性のウイルス性肝炎に対して作られた分類で,どどたん先生の前にいた施設ではウイルス性肝炎以外にも「新犬山分類では○○相当である」といった書き方で書いてきた.必ずしも的を射ている表現ではないかもしれないが,雰囲気が伝わりやすいのでおすすめ(** 上司によっては嫌がります)
・炎症の評価 (A):軽度 (A1),中等度 (A2),高度 (A3) で表される.色々解釈はあれど,とりあえずどどたん先生は
 門脈域の中に留まる場合は A1
 門脈域を越えて肝実質へ炎症が広がる場合 (interface hepatitis とか古い言い方だと piecemeal necrosis といったりする) を A2
 肝細胞まで広く及んでいる場合を A3
としている.この分類で理解すべきは,原則的に炎症は門脈域から肝細胞へと広がっていくということ
・線維化の評価 (F):F1-F4 までで評価される.こちらも色々解釈はあれど,とりあえず
 F1 は Azan (Masson Trichrome) 染色において,門脈域周囲の肝細胞を取り囲むように膠原線維が染まっているもの (pericellular fibrosis といったりする) と考えている.ちょっとここは tricky だけど,A2 以上の interface の炎症があれば,F1 以上として良い.
 門脈域からの線維性の伸びだしが十分に確認できれば F2
 門脈域と門脈域 (P-P) あるいは門脈域と中心静脈域 (P-C) の線維性のつながりが確認でき,再生結節様であれば F3
 明瞭な再生結節を形成し肝硬変の像を呈していれば F4 としている
・実際には場所によって多少は異なるため A1-2F2-3 と言った表現をすることが多い
・有名な事実ではあるけれども次の 2 点に注意すること.1 つは炎症や線維化の程度は可逆的であること(治療によって改善する),2 つ目は場所による値の変動が大きいこと(サンプリングによる違いが結構大きい)

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