# わからないから始めるときは頻度の高いものから順に
これは自分が決めている,いわゆるマイルール的なもので,全くわからない場合は頻度の高いもの(及びそのバリエーション)から順に検討することにしている.一応病理専門医であり「全くわかりませんでした,手の出しようがありません」が許されるのはレジデントや学生までである.結果的にわからなくても常にその場でできる最善を尽くして少しでも前に進み,華々しく散る.散り方もプロでなくてはならない.
胃癌,膵癌は病理組織学的には確定は難しく,すると確定が可能で年齢的にも起こっても良さそうな肺癌,膀胱癌,婦人科癌あたりを攻めることになる.もちろん,Alcian blue や PAS 染色などで粘液を検出する努力は怠らない.すると大体 10 種類くらいの免疫染色はせざるを得ない.
もしこれでだめなら,cytokeratin を出しながら,本当に癌でよいかの再検討と epithelioid な形態を示す軟部腫瘍,組織球系腫瘍について検討を行う.リンパ腫ではないことを最終的に否定した上で poorly differentiated carcinoma や undifferentiated sarcoma などで締めくくるが,その前に多くの症例が引っかかってくる.
ちなみにこの症例についてカルテは見ようとは余り思わなかった.もちろん普段は診断のヒントを求めてカルテや画像をよく見るのだが,原発不明癌の場合は臨床医も結構よく見ているので我々病理医が探して新しい情報が得られることは少ない,という経験による.
# ストーリーを思い描けること,わからない時でも動けること
わからない時でも動くというのは BLS, ACLS のトレーニングに近い.わからない時にやるべきことはパターンごとには同じようなことが多くて,でもパターンがそこそこ多いのであまり言語化して一般的に語られることは少ない.
病気を覚え,理解するので精一杯なレジデントに対して多くを要求するのは酷であるが,ある程度学習の一段落がついたら,ストーリーを意識しながら免疫染色を出してみると良い.もしこの染色が陽性だったら,もし陰性であったら..多くは陽性であることを期待して出すだろうが,陰性のときの次の一手を考えるか,上司に聞いてみると勉強になる.明らかに高分化型脂肪肉腫と思っていた症例でもし MDM2 が陰性であったときには何をするのか?その問答の中に教科書には書かれにくい,あるいは行間に存在する診断のポイントが見えてくるはずである.
その中で陽性でも陰性でも次の行動が変わらないようであればそれが本当に必要か再度考えてみると良い.
# 戦略的なもの
自分が見ている限りでは多くの病理医は今言った戦略的なものに沿って診断を行っている.プロとして業務で行う以上はなんとなく,ではいけない.恐らくだが,診断のできる病理医というのは多少の差はあれ,大体このような視点を持ち合わせていることが多い.
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