2021/02/02 1st edition. 2021/02/02 Last updated.
子宮内膜生検のみかた.はじめのはじめ
- 自分も含めて子宮内膜生検を見るのは結構苦手な人が多いと思う
- 明らかな癌と明らかな良性病変はさておいて,増殖症あたりでどのように判断をするのか一定した基準があるようでなく分かりにくい
- ここでは癌と増殖症及び鑑別疾患に絞って子宮内膜生検で提出されにくい肉腫や間質性の病変は割愛する
子宮内膜生検で採取される検体
- 我々は何を見ているのかというのは意外と重要で,標本上に何が含まれうるのかを明確に意識しておかないと変な方向に進んでしまう
- ごくごく当たり前の話だが,いかなる方法であれ,内膜を採取するためには膣から挿入し子宮頚部を経由しないと到達できない
- 子宮頚部の組織が混入する可能性は常にある.特に体頚部の境界領域の病変を採取するときにはそう
- 多分後でも触れるけれども,意外と頚管腺上皮と内膜腺上皮は油断していると混同しやすい
- 子宮内膜は内膜腺と間質からなるが,その見え方で様々な像を呈する
子宮内膜の性周期診断はなされなくなってきた
- 昔は日付診なるものがよくなされていて,組織学的所見と臨床的な日付とどれくらい乖離があるのかないのかを調べられていた.細胞診においても同様の試みがなされていた
- でも自分が病理医として働き始めてからは日付診をしたことはないし,だんだん話を聞かなくなってきた
- しかし,性周期によって子宮内膜がどのような変化を遂げるのかについて,大まかな理解は必要
- 実際自分も大まかな理解しかしていないが
おおまかな性周期診断のポイント
- 増殖期:この期間は原則的に日付診は出来ない.間質はコンパクトから浮腫状で,内膜腺はおおむね小型で偽重層化が見られる
- 分泌期初期:内膜腺は偽重層化がなくなり核下空胞(→次第に核上も見られるようになる)を形成するのが特徴.間質は浮腫状である
- 分泌期中期から後期:内膜腺は空胞がなくなり乳頭状,絨毛状になってくる.間質は次第に浮腫状から細胞質が好酸性でやや広い脱落膜様変化を呈してくる.また螺旋動脈が発達してくる
- 月経期の内膜が採取されることは経験上ほぼない.一応増殖症や内膜ポリープは性周期から外れているということで,増殖期様の変化を呈することになっている(例外は当然あるけれども)
断片化しすぎている検体に注意
- (個人的な見解として)断片化しすぎている検体では診断自体を躊躇した方が良いかもしれない
- 細胞異型が強ければ atypical endometrial hyperplasia 以上の診断が可能かもしれないが,腺間質比も重要で,断片化しすぎている検体ではこの情報が本質的に抜けている
- 臨床的に内膜の肥厚があるなしも含めて,場合によっては再生検してもらっても良いかもしれない.胃生検で por, sig を見逃したときに診断の delay により治療が手遅れになったという話はたまに聞くけれども,子宮内膜生検では同様の話はあまり聞かない
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