2017年12月27日水曜日

病理診断レポートの行く末

http://www.jikei.ac.jp/news/20170720.html
https://www.asahi.com/articles/ASK7N76MDK7NULBJ01K.html

# Who reads pathology report?
医療従事者が関与する事故の中で病理診断レポートを読んでいなかったということはたまに聞く話.これは病理だけではなくて放射線画像診断や,もっというと検査全般について言えることだろう.

どどたん先生も幾つかの病院で仕事をしていて,臨床医が病理診断レポートを読んでいない,ということはよく聞くけど,なかなか問題の根は深い.

例えば,普段総合病院の整形外科にかかっている患者さんが,検診の胃カメラで所見ありで精査をしてほしいと来たとする.その際に整形外科の「かかりつけ」の先生に対して,「胃カメラをうけたい」というと,その先生は消化器内科を紹介するか,あるいはフットワークが軽ければ自分で上部消化管内視鏡検査の依頼を出してくれるかもしれない.

外来にかかった場合でも,検査のみの場合でも,もしかしたらその消化器内科の先生は「病理検査の結果は整形外科の先生から聞いて,もしなにか異常があればまた紹介器内科を受診してください」というかもしれない.そして,当の整形外科の先生としてはあくまで自分は紹介器内科を紹介しただけ(あるいは上部消化管内視鏡検査をオーダーしただけで),見てもせいぜい上部消化管内視鏡の検査レポートくらいで付属する病理診断報告書のことはあまり意識に上らないかもしれない...

# Who takes the risk?

院内だろうが,院外だろうと基本みんな仕事を押し付けようとする.我々病理医だって病理診断報告書が適切に読まれているかどうかなんて知る由もないし,最低でもオーダーした医師(研修医?他科の医師?)に連絡さえすれば無罪放免だと思っている.実際問題として大して記載されていないカルテを見たところで,本当の主治医が誰なのかわからないことはたまにあること.

この「見忘れ」問題を防ぐためには,電話をかけてみたり,紙で渡してみたりするだけでは不十分で,本質的には当院にかかった患者さんは一体誰が(どこの診療科が)主治医として機能しているのか,ということを明確にしないといけない.

でもこれには反論が容易に予想され,普段は近医の中で薬をもらっている患者さんが,肌がカサカサするということで,皮膚科を受診し塗り薬をもらっているだけだったとしよう.それでも何かあったときは皮膚科の先生が対応するのは困ると言われればまさにその通り.

他にもリンパ腫の生検で頚部からの検体採取は好まれやすく,血液内科からしばしば耳鼻科へコンサルトがなされるけど,採取した検体について,耳鼻科の先生に話をしてもしょうがないことがある.

# Generalist is required though...

こういう文脈からも総合診療医というのが求められている気がするのだけれども,それは病院という枠組みを超えてもっと大きなフィールドで活動をしないと,患者さんの受療行動全貌を把握はできないのだろうと思う.

冒頭に挙げた慈恵の例でも分かるように結構難しい問題.仕事を増やすと他の仕事ができなくなるし.どどたん先生は悪性のでた症例を一覧表にしてオーダーした先生に渡して,サインを貰って返してもらうのが良いのではと思っていたが,慈恵の人たちが提示していた解決策の一つに,患者へレポートを渡す,というのは賢いなと思ってみた.

どどたん先生は常日頃から診療というのは患者自身が問題意識を持って主体的に関わることで成立するものと考えている.これは小児であろうが認知症のお年寄りであろうが,それぞれの理解度に応じて積極的に関わっていくべきだと思っている.若干めんどくさいこともあるけれども,これはとても重要で本質的だと考えている.

その視点からも患者が自分でレポートを読んで(読んだつもりになって),そこから次の受療行動につなげるというのはとても建設的.放射線画像診断や病理診断の報告書を患者に渡したがらない医者がいるもの知っているけれども,ぜひこの選択肢が選ばれる社会になって欲しいと思う.



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