2024年6月28日金曜日

ちょっとした話題

 # Stay away from SNS

最近は少し SNS から遠ざかっていて,要するに研究をしろということでもある.別に SNS をやりながら研究をすることも全く問題なくできるのだけれども,気合を入れましょうということと,もう一つはブログを充実させたいという意向も若干はある.

病気のことを綴ると身バレするかもとか色々考えていたが,まぁどうせ同業者にはバレているところもあるので,表面的な匿名性があればよいということにしようかと若干舵取りを変えつつはある.

# Effect of SNS / Recruiting

2017 年あたりから峰先生とほぼ同時期に(正確には誘われて?)Twitter/X を始めたときには,まだそんなに Twitter をやっている病理の先生はいなかったように思う.いや,いたけど,今ほど多くはなさそう.今は Twitter/X をやって情報を得るという雰囲気がある.

SNS には Facebook, Instagram, Twitter/X, Threads などがあるが,Facebook は中高年,Instagram は若年向けで,いわゆる若手と称される年代の病理医には Twitter/X が相性が良さそう.ただ,流行り廃りは当然あるので次の platform を探していかないといけないのかもしれない.

Twitter/X は recruiting の platform としても秀逸で,転職をしたい病理医の動向を探るのに非常に良い.これまでもそこそこの人数の転職について相談に乗ってきた.ただ,何人かは病理医としての転職ではなく転科という決断をしてしまったのが非常に残念なところ.色々提案をしても諸事情でその地域から動けない,でもその地域で病理医を続けていくことが実質的に難しいということで転科してしまう.これは自分一人で解決できる問題でもないし,仕方ない側面もあるけどあまり気分の良いものではない.

# Diagnostic Criteria

ここで病理らしい話題を一つ.このブログを始めた当初からそういう傾向があったが,やはり近年は遺伝子異常が病理診断の重要な要素を占めるようになってきている.あーそれで難しい症例も細かく分類しなくても良くなったから良いね,といいたいところだが,そうはうまくはいかないようだ.

例えば,現在は MDM2 遺伝子の増幅のない脂肪肉腫を高分化・脱分化型脂肪肉腫と診断する人は多分ほとんどいない.これは少なくとも典型例のほぼ全てと非典型例でも大部分が MDM2, CDK4 染色陽性かつ当該遺伝子の増幅が見られているからであって,現在では実質的な定義になっている.これだけ一般的になってしまうと,逆に陰性だったあるいは増幅が見られなかった場合はどのように解釈すればよいか迷ってしまう.教科書には書いていないので,エキスパートに尋ねるか,エイヤと診断するか.

もっというと,MDM2 遺伝子の増幅は脂肪肉腫だけではなく癌腫などでも見られる.だから MDM2 遺伝子の増幅を高分化・脱分化型脂肪肉腫の定義にしてしまうと,またそれはそれで齟齬が生じてしまう.最近では MDM2 Amplified Sarcoma という概念もあるが,それはあくまで sarcoma に限定している.

現時点では形態像及び臨床像(部位や年齢など)を元にして,それに見合うような典型的な molecular findings が得られた場合に definite と診断をする.これは異論はないだろう.これらの所見にずれが生じた場合は unusual な臨床像・形態像を示す腫瘍とするか,unusual な molecular findings を示す腫瘍とするかは見解の差になる.どちらも unusual だとそもそも当該腫瘍を考えないか.

ただ,将来的には腫瘍の診断が molecular findings で再編成されて,脂肪肉腫も例えば MDM2 amplified liposarcoma, DDIT3-rearranged liposarcoma, Rb1-dedificient liposarcoma, liposarcoma NOS みたいな感じになるのかもしれないな.まぁそれはそれでスッキリしていて良さそうだけどね笑 Rb1-deficient は lipoma もあるから注意が必要か.


2024年6月6日木曜日

病理診断のスタンスの変化

 # 仕事終わりの 22:30

バドミントンが終わって,仕事の(病院業務ではない)メールを返し終えて,ガストで一息つきながら,臨床細胞学会に行こうか行くまいか悩み中のところ.もう前日まで差し掛かっているのにね.

病理診断の専攻医の先生たちにそこそこ読んでもらっているようだが,最近は病理診断自体に対して興味が尽きたのか?笑あまりネタとして投稿することは少ない.専攻医の先生たちとの interaction を通してブログや記事のネタを書いていたというのもあって,今は専攻医の先生の指導から離れており,それも記事を更新するというモチベーションが少なくなった理由かもしれない.

# 病理診断のトレンドの変化

病理診断にもトレンドの変化はある.自分は卒後 15 年以上経ってしまった.未だにわからないことや誤診をすることもちょこちょこあり,良く言えば進歩なのかもしれないが,15 年もやってそれかよ,と言われそうで怖い.さすがに他の診療科に転科する気力はないので今の状況で定年まで惰性で続けるしかないのだが.

さて,前置きが長くなったが,病理診断のトレンドの変化について概説してみようかしらね.

  • 「病理解剖→手術材料診断→生検診断」
  • 「免疫染色,FISH, PCR → CDx → CGP, methylation profile etc」
  • 「3 段階分類 → 2 段階分類」
  • 「良悪性 → 境界悪性・リスク分類」
  • 「形態ベースの疾患単位 → 遺伝子変異ベースの疾患単位」
書こうと思ったけど,手も疲れて眠くなってきたので,とりあえずトピックだけ書いておこう.他にあるかしらね.病理診断が進化するのはしょうがないというかそういうもんなんだけど,自分がいつまで追いついけるのかだんだん自信がなくなってくるよね.






対立する所見が見られたときの病理診断の進め方

# Introduction 一般的には,病理診断においては A, B, C, D, ... という所見があって X と診断するというように所見を集めて,通常は一つの診断を目指していく.多くの症例では X に至る A, B, C といった所見は同じ方向を向いており,大抵はストレー...